定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成24年2月16日(木)

午前10時00分 午前11時45分


第2 出席者 松原委員長、長谷川、田尾、髙木、山本、前田各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、

警備局長、情報通信局長

首席監察官、国家公安委員会会務官


第3  議事の概要

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「2月28日付けを始めとする地方警務官等69名
の人事案件について発令していただきたい」旨の説明があり、原案
どおり決定した。

(2)国家公安委員会委員長に対する異議申立てに関する情報公開・個
人情報保護審査会への諮問について

国家公安委員会会務官から、国家公安委員会委員長が行った行政
文書の開示決定に対して平成23年11月7日及び12月16日付
けでなされた異議申立てに関し、行政機関情報公開法第18条の規
定に基づき、情報公開・個人情報保護審査会に諮問を行うことにつ
いて説明があり、原案どおり決定した。

(3)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「千葉県警察の巡査が、住居侵入等をしたとし
て1月25日に通常逮捕された事案に関し、同県警察は、国家公安
委員会の了承が得られれば、2月16日、監督責任として、地方警
務官の警察署長を本部長訓戒の措置とする予定である」旨の説明が
あった。

前田委員より、「本部長訓戒の処分にするということだが、部下
職員の休暇中の行動まで監督責任を問うのは酷ではないか」旨の発
言があり、首席監察官から、「私行上の事案ではあるが、本件を含
め、相次いで署員の逮捕事案を発生させたことから、このような処
分としたい」旨の説明があった。

長谷川委員より、「監督責任を問うに当たり、どのようなことを
すれば非違事案を止められたのか、あるいはそれが分かったかとい
うような指針のようなものはあるのか」旨の発言があり、首席監察
官から、「監督責任については、警察改革以降、所属長に対し、非
違事案を発生させたという結果だけで責任を問うということはして
おらず、非違事案発生の予見可能性、すなわちどの程度そのような
事案が起こり得るという危険を認知できたか、また、業務上の非違
事案については、仕事のさせ方等について、いろいろな工夫をして
間違いを起こさせないような業務指導を日頃していたか、私行上の
非違事案については、様々な形で倫理教養等に努めていたかどうか
ということで判断している。この事案においては、署長以下、事故
防止の教養というものをある程度行っていたことから、その意味で
は今回の処分は結果責任に近いものであるが、警察改革以降も、逮
捕事案、懲戒免職事案の場合等については、起きた事案の重大性に
応じて、監督上の措置をとるということにしている。今回の処分は、
この事案のみであれば、本部長注意相当であると思われるが、本件
事案の直後にも同署員が逮捕されており、2人の逮捕事案を発生せ
しめたということで、地元ではかなり報道もされ社会的反響も大き
いため、本部長訓戒の処分にすることとしたものである」旨の説明
があった。

田尾委員より、「処分の対象は署長のみとなっているが、直属の
上司など署長以外の者はどうなのか」旨の発言があり、首席監察官
から、「直属の上司等については、非違事案を予防するために、日
頃どのような倫理教養をしていたのか、身上監督ということで個々
面接を行い、職員の悩みや生活上の問題等の相談を受けることにな
っているが、そのようなことを親身になって行っていたかというこ
とについて検証し、仮に不十分であったと認められる場合には、相
応の措置をとるということにしている。この事案については、署長
も含めて、各級幹部において比較的よく取組がなされていることか
ら、結果責任に近いが、署長だけに監督上の措置をとることとした
ものである」旨の説明があった。

田尾委員より、「私行上の非違事案であるから、署長のみの処分
ということになるのか。業務上であれば違うのか」旨の発言があり、
首席監察官から、「業務上であれば、仕事のさせ方について、直属
の上司等がどのような業務管理をしていたのかということを見るこ
とから、そのような者が処分を受けるケースは多くなる」旨の説明
があった。

山本委員より、「このような者を警察官として採用したことに責
任があるのではないか」旨の発言があり、首席監察官から、「確か
に、最近報告している事案については、かなり若い警察官、採用間
もない警察官によるものがあり、中には、逮捕して調べてみると、
採用前からわいせつ行為をしていた事例もあることから、採用でど
う見極めるか、もう一つは、採用後、警察学校でかなり長い期間、
集団生活をさせて教養を行うことから、そこでいかに適格性を見極
めていくかということを更にしっかりやりたいと考えている。また、
来年度実施の総合監察においては、いろいろな角度から非違事案防
止に取り組んでいくが、採用と学校入校中における不適格者の厳格
な見極めということについても、念を入れて監察を行い、良い取組
については全国に紹介し、不十分なところには、しっかり取り組む
ように指導してまいりたい」旨の説明があった。

前田委員より、「大きい警察署であれば、非違事案が二つ続けて
起こるということはあり得る。この署長も責任はもちろん感じてい
ると思うが、防ぐことはできないのではないかと思う」旨の発言が
あり、官房長から、「二件ともかなり悪質な犯罪であり、警察官が
相次いで逮捕されるという事態をみると、やはり組織としても反省
すべきところはあり、代表して署長が責めを負うのはやむを得ない
と思う。一件目が起こった後、どれだけ深刻に受け止めて、どのよ
うに努力したのか、警察署が大変なことになっている最中、このよ
うな事案を発生させたこと自体、問われるところであると思う」旨
の説明があった。

長官から、「重いという判断であれば、見直しを検討するが、原
案のとおり本部長訓戒でよろしいか」旨の説明があり、原案が了承
された。

(4)不正アクセス行為の禁止等に関する法律の一部を改正する法律案
について

生活安全局長から、不正アクセス行為の禁止等に関する法律の一
部を改正する法律案について説明があり、原案どおり決定した。

(5)犯罪による収益の移転防止に関する法律第17条第1項の規定に
基づく意見陳述(行政書士)の実施について

刑事局長から、犯罪による収益の移転防止に関する法律第17条
第1項の規定に基づく意見陳述の実施について説明があり、原案ど
おり決定した。

(6)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答
を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、そ
の内容を了承した。

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、1(3)で説明のあった千葉県警察の巡査によ
る住居侵入等事案に関し、「千葉県警察は、2月16日、同巡査を
懲戒免職処分とする予定である」旨の報告があった。

(3)平成23年中の少年非行等の概要について

生活安全局長から、「平成23年中の刑法犯少年の人口当たり検
挙人員は、成人の約5倍で推移しており、特に再犯者率が引き続き
増加して過去最高となったほか、少年非行の低年齢化が進行してい
る状況にある。また、児童虐待事件及び児童ポルノ事件の検挙が過
去最多となった」旨の報告があった。

前田委員より、「少年非行に対して、警察としてできることを精
一杯やっているということは分かるが、少年の場合、基本的に保護
者がいることから、保護者に関するデータを少し分析に入れる必要
があると思う。非行を起こした少年だけを追いかけても、例えば、
家庭が崩壊しているのか、一人っ子なのかなど、そういうことを度
外視していると、根本的な再犯防止のための対策は打てないのでは
ないか。再犯で、また元のところへ戻って悪いことをしたというの
は現象面であるが、家庭が崩壊していると帰るところがなく、どう
しても元の仲間のところに戻ってしまうということになるのではな
いか。だから違うところに戻さなければならないと思う。そこは分
析が必要である」旨の発言があり、生活安全局長から、「確かにい
ろいろな保護者がいる。立ち直り支援を全国で展開しているが、そ
の中でも、警察が直接関わる支援となると、『自分のところでやる
からいいです』、『警察は結構です』などと同意しない保護者もい
る。警察としては、個別の事件において、少年の家庭環境を知るこ
とができるので、これを参考に非行対策はやっているが、委員御指
摘の点についてどのような形で分析をするのか、今後検討してまい
りたい」旨の説明があった。

山本委員より、「児童ポルノ事件の被害児童について、昨年新た
に特定された児童だけでも638人いるということは、もっと重く
受け止めるべきではないか。被害に遭った子どもは一生傷を負って
いくことになることを考えると、取締りの手段が十分なのかどうか、
東京都が青少年健全育成条例を改正する際、表現の自由の観点から
慎重論があったことは承知しているが、年々児童が被害に遭ってい
るという現状のままでいいのかと言えば、極めて大きい問題だろう
と思う。新しい摘発の手段を獲得するといったことも含めて、少し
検討しなければならないのではないか」旨の発言があり、生活安全
局長から、「もちろん取締りは懸命に行っているところであるが、
児童ポルノに関する情報を如何に収集するかということも大事であ
り、現在、ファイル共有ソフト事犯捜査専用のパソコンを全国警察
に配備して情報収集、分析をするといったハード面の手当も順次進
めているところである」旨の説明があった。

山本委員より、「表現の自由があるということは分かるが、児童
ポルノの愛好者に対する配慮と、これだけの被害者を生んでいると
いうことを比較したときに、どちらがどれだけ重要なのかというこ
とを考えれば、このような被害者を生まないために、表現の自由を
規制するようなこともしていかなければいけないのではないかと感
じている。そのような発想で社会に訴えていくということも必要で
あると思う」旨の説明があった。

田尾委員より、「ネット上に出る児童ポルノについては、ファイ
ル共有ソフトによるものがかなり多く、その対策は非常に難しいと
いう報告を受けているが、対策はあまり変わっていないのか」旨の
発言があり、生活安全局長から、「サーバーを通じて行われている
ものであれば、インターネットホットラインセンターを通じていろ
いろな情報が集まり、それを端緒に全国で捜査を展開するというこ
とは、かなり進んでいる。しかし、インターネットホットラインセ
ンターに集まる児童ポルノに関する情報数は減ってきており、一時
期に比べて約半減している状況にある。これは、ファイル共有ソフ
トを利用する者が増えているということだと思うが、その対策につ
いては、ハード面では、先ほど申し上げた情報収集を進めるという
ことであり、また、収集した情報を端緒に、関係府県で一斉に取締
りを行うなど、工夫して進めていく必要があると思う」旨の説明が
あった。

田尾委員より、「インターネットホットラインセンターでは、フ
ァイル共有ソフトを利用したものの情報は取り扱わないということ
であるが、インターネットホットラインセンターに、ファイル共有
ソフトによる画像の把握という役割を担ってもらうことは考えられ
ないのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「いろいろな方か
ら情報が寄せられ、それらを確認して警察へ送付してもらうという
作業になっているが、ファイル共有ソフトを一緒に扱うわけにはい
かないということもあり、また、予算・体制等の問題もあることか
ら、今のところ、ファイル共有ソフトによるものも含めて委託する
ということは考えていない」旨の説明があった。

髙木委員より、「昨年、四国管区内の公安委員会連絡協議会へ出
席した際、聞いたところでは、共稼ぎの家庭にどうしても少年犯罪
が起こる傾向が強いということであった。そこで、例えば、地域に
おける少年犯罪の問題について、警察署協議会で議論してもらうと
いうような投げかけをしてみてはどうか。各県では、警察や補導員
など少年非行等の対策チームが一生懸命活動しているが、この問題
には親や地域社会の問題がかなり関わっており、そこのところを警
察署協議会で議論してもらったらどうかと思う」旨の発言があり、
生活安全局長から、「警察署協議会では、警察署の方から状況や施
策等について説明しており、その中に少年非行の問題も含まれてい
るのではないかと思う。その状況を確認しつつ、警察署協議会は、
基本的には、地元の方々の関心や情勢に基づいた行政を警察署が行
うというのが趣旨であると思われるが、警察からもさらに情報提供
をして、関心を深めていただきたいと考える」旨の説明があった。

長谷川委員より、「人口が減ってきて、若い人たちの数が減って
きているが、若い人たちというのは、将来の日本の社会を担っても
らうための非常に重要な人的資源なのであり、若い人たちの中から、
社会に害悪を及ぼし、ドロップアウトするような人たちの数を減ら
し、また、児童ポルノの被害に遭う子どもも減らして、健全に保つ
という努力を今まで以上にしていかなければ、きちんと働いてくれ
る良き市民の数が減ってしまう。その辺りの総合的なことを考える
ところが必要だと思う。家族の問題や、地域で子どもをどのように
守るのか、犯罪を犯したときに警察はどのように対応し、再犯はど
のようにして防ぐのかといったこと全体について、縦割りではなく、
子どもを取り巻く全体を見るところが必要であると思う。児童相談
所に警察職員を出向等させるということは、一つの連携だと思うが、
もう少し何かできないのかと思う」旨の発言があり、長官から、
「関係する機関が非常に多いという現状がある。警察がまず少年の
事件を取り扱って、裁判所に行ったり、児童自立支援施設に行った
り、少年院に行ったりと、いろいろなケースがあるが、それが終わ
ったらもうケアをしない形になってしまっている。これをもっとシ
ームレスにそれぞれの機関の活動がオーバーラップしながら、子ど
もを取り扱った人たちが、ずっと後々まで面倒をみるようなことが
必要だと思う。例えば、少年院を出た後も、警察としてもなるべく
ケアをしようという努力はしており、もっと関係機関が互いに連携
し合って行ければいいと思っている。ただ、なかなか中心になると
ころがない状況であり、警察は最も現場を知っているので、そのよ
うな投げかけをしなければならないという問題意識は持っているが、
関係機関が多すぎ、また、あまり警察が前面に出ることに抵抗を感
じる方々もおられるので、難しい問題があると感じている」旨、生
活安全局長から、「県によっては、警察が中心となり、関係機関と
連携して、立ち直り支援や居場所づくりといった活動を積極的に進
めているところがある。昨年の全国公安委員会連絡協議会において
も発表があった佐賀県などは、その一つの大変良い例であり、その
ような例も全国にこれから紹介して進めてまいりたい」旨、長官か
ら、「警察が補導した少年が入所する児童自立支援施設で運動会が
あった際などに、担当した警察官が見に行ってあげると、少年はす
ごく喜ぶということである。やはり、少年に『ずっとみんなが見守
っているよ』というメッセージを出し続けていくことが大切である
と思う」旨の説明があった。

前田委員より、「非行のあった場所について、都市部とか地方と
かいうデータはあるのか。都市部に多いのではないかと思われるが、
地域的な立ち直り支援のためにも、都市部で非行を行った少年を都
市部に戻したら、また非行が行われる。受け皿をどこにするかも含
めて全体として検討しないと、再犯防止対策もうまくいかないので
はないか」旨の発言があり、生活安全局長から、「不良交友関係、
非行少年グループは、地方でも、繁華街や中学校区内の人が集まる
ところであれば非行があるのではないか」旨、また、長官から、
「現場には場所についてのデータもあると思うので、分析させたい」
旨の説明があった。

(4)千葉県東金市における拳銃使用殺人事件の発生について(千葉県
警察)

刑事局長から、千葉県東金市における拳銃使用殺人事件の発生に
ついて報告があった。

(5)平成23年中の犯罪収益移転防止法の施行状況等について

刑事局長から、平成23年中の犯罪収益移転防止法の施行状況等
について報告があった。

(6)平成23年中の暴走族の動向及び検挙状況等について

交通局長から、「平成23年中の暴走族のグループ数、構成員数、
い集・走行回数、110番通報件数等はいずれも前年と比べて減少
し、総検挙人員についても減少したが、近接排気騒音に係る整備不
良、消音器不備、騒音運転等の騒音関係違反の検挙人員は増加した」
旨の報告があった。

(7)全教「第29回定期大会」をめぐる動向と警察措置について

警備局長から、2月18日及び19日、東京都内で開催される全
教(全日本教職員組合)「第29回定期大会」をめぐる右翼等の動
向と警察措置について報告があった。

3 その他

(1)刑事局長から、薬物密輸事件に係る最高裁判決(無罪)について
報告があった。

(2)長谷川委員より、「先日、ニューヨークの犯罪率が激減した理由
について述べた論文を読んだ。10年、20年前に比べて、犯罪が
五分の一以下に減少し、それまで最も危険な都市であったのが、大
分治安が良くなっている。何をしたことが一番の要因であったか、
連動しているあらゆる要素を全て補正したところ、二人一組の警察
官が警らをして回ったことが最も効果があったということである。
それは、犯罪を行えば見つかるし、見つかれば割に合わないという
ことが分かるということである。警らして回ることで、オートバイ
盗、自動車盗、ひったくり、空き巣は全て減少し、かつ、警らをや
っていないエリアに犯罪者が移動したということもなく、犯罪者が
犯罪を行うのを止めたということである。やはり警らというのは重
要であると思う。また、覚せい剤事犯が増えると犯罪も増え、減る
と犯罪も減るという連動があるといった議論もあったが、覚せい剤
事犯にそれほど変化がないにもかかわらず、犯罪が五分の一に減少
した理由は、警察官がよく見て回っているからであるということで
あったので、参考にしてもらいたい」旨、田尾委員より、「昨年、
東京都内では、足立区が最も犯罪の発生件数が多く、また新宿区と
逆転したということだが、大幅に減少したようなところは、青色防
犯パトロールを含めて、パトロールがしっかり行われているからで
あるという報道があったが、それと同様のことが言えるかもしれな
い」旨の発言があり、生活安全局長から、「足立区の区長は非常に
積極的に取り組んでおり、一昨年はワーストワンを脱却した。区の
方でかなりの予算を措置してもらい、自転車のダブルロックや防犯
カメラの設置など、努力していただいている」旨の説明があった。

前田委員より、「以前、千葉県船橋市は、ひったくりの発生がワ
ーストワンと言われたときがあったが、最近は非常に改善された」
旨の発言があり、生活安全局長から、「千葉県は、昨年は前年と比
べて、ひったくりの発生が約半減したが、区長や市長と直接話をし
て、『他と比較してこのような状況にありますよ』と説明すると、
やはり安全の問題についてはかなり意識が高く、不足しているとこ
ろにはかなり手当をしていただいている方が多いと思う」旨の説明
があった。