定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成24年12月6日(木)

午前10時00分 午後0時10分


第2 出席者 長谷川、田尾、髙木、山本、前田各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、
警備局長、情報通信局長
首席監察官


第3  議事の概要

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「1月1日付け国家公安委員会犯罪被害給付専門委員
2名の任命について発令していただきたい」旨及び11月22日付け
人事案件1名についての説明があり、原案どおり決定した。

(2)構造改革特別区域法の一部を改正する法律の施行に伴う内閣府・国
土交通省令等の改正案について

交通局長から、構造改革特別区域法の一部を改正する法律の施行に
伴う内閣府・国土交通省関係構造改革特別区域法第二条第三項に規定
する主務省令の特例に関する措置及びその適用を受ける特定事業を定
める命令の一部を改正する命令及び内閣府関係構造改革特別区域法第
二条第三項に規定する告示の特例に関する措置及びその適用を受ける
特定事業について定める件の一部を改正する内閣府告示について説明
があり、原案どおり決定した。

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を
要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内
容を了承した。

2 報告事項

(1)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「新潟県警察の警部が、署の検挙実績を上げるた
めに、部下職員に指示して、虚偽の検挙情報を入力させるなどした事
案に関し、同県警察は、12月6日、同警部を停職処分とするととも
に、監督責任として上司ら2名を本部長訓戒の措置とする予定である」
旨の報告があった。
 長官から、「本事案は報告対象である懲戒免職事案ではないが、犯
罪統計の信用性を著しく害する行為であり、特異なものであることか
ら報告させていただいた」旨の説明があり、山本委員より、「このよ
うな者に対する今回の処分をみると、この者が退職後に警察へ反感を
もつということがあり得るのではないかと思われる。この者を利用し
て暴力団等からの働きかけといったことも懸念されるが、そのような
ことへの対策について何か行っているのか。一般的には、対策のとり
ようがないとも思われるが」旨の発言があり、首席監察官から、「警
部は今回の事案についてかなり反省しており、『自分は刑事課長とし
て失格であり、職を去らせてもらいたい』旨申し述べているようであ
る」旨の説明があった。

(2)警察における取調べの録音・録画の試行の検証について

刑事局長から、警察における取調べの録音・録画の試行の検証につ
いて報告があった。
 田尾委員より、「被疑者が録音・録画を拒否する事案がかなり増え
ているということであるが、最初に録音・録画することの承諾を得て
から録音・録画を始めるのか、それとも最初から録音・録画を開始し
ておいて承諾が得られなければ止めるのか、いずれの方法で試行して
いるのか」旨の発言があり、刑事局長から、「警察が現在試行してい
るものは、最初に録音・録画することの承諾を得てから録音・録画を
始めるというものであり、被疑者が拒否した場合は録音・録画は実施
していない」旨の説明があった。
 田尾委員より、「検察も警察と同様の方法で行っているのか」旨の
発言があり、刑事局長から、「検察の場合は、ケースによって、取調
室に入ってくるところから録音・録画を実施するということを始めて
いると聞いている」旨の説明があり、田尾委員より、「取調室に入っ
てくるところから録音・録画を実施するという扱いは何か問題がある
のか。被疑者が承諾するまでの部分を勝手に撮っていることになるの
で問題だということなのか。検察の試行のようにやるということで決
めた方が、第一線も対応しやすいのではないかと思うが、どうなのか」
旨の発言があり、刑事局長から、「現段階では、警察としては次のス
テップにおいて検討したいと思っている。弁護士からは、『一部の録
音・録画は、警察に都合のよいところだけを撮っているのではないか。
それでは他の部分は見えないので、拒否をする』旨の主張もなされて
おり、最初から録音・録画を実施するということになれば、『相手の
承諾も得られていないのに撮ったのか』といった批判がなされること
が予想される」旨の説明があった。
 田尾委員より、「しかし、被疑者が承諾しなければその後は録音・
録画を実施しないので、そのような批判は生じないのではないかと思
うが」旨の発言があり、官房長から、「現在の試行では、いずれかの
時点で被疑者に告知しなければならないので、それまでの間を黙って
ずっと録音・録画するというわけにはいかないのではないかと思う」
旨の説明があり、田尾委員より、「最初から録音・録画を実施し、被
疑者に告知して承諾が得られなければ、その時点で録音・録画を止め
るという方法が手続的に最も明快である。それによって、本来なら承
諾する人が承諾しなくなるというようなことにはならないと思う」旨
の発言があり、官房長から、「御指摘のように、最初から録音・録画
を実施するとしても、取調べを始める際あるいは途中において、被疑
者に告知して拒否されれば、その時点で録音・録画を中止することに
なるので、現在の警察の試行とあまり変わらないのではないかと思う」
旨、長官から、「ただ、そのような試行を行ってみるということは考
えられる」旨の説明があり、田尾委員より、「まだ試行の段階である
ので、そのような試みも行ってみてはどうか。今後、拒否事案が更に
増えてくると思われるので、そうなればその原因を分析する必要も出
てくるだろうし、立証上の問題にもなってくるかもしれない」旨の発
言があり、刑事局長から、「今後検討してみたいと思う」旨の説明が
あった。
 山本委員より、「第一線の警察官、捜査員に意識してもらいたいこ
とは、元々は冤罪を防ぐという意味からこのような取調べの可視化の
動きが出てきて進んでいるということではあるが、その背景には、権
力の行使について、国民から見えないところで行われるということを
基本的には許さないという方向に社会が変わってきているということ
があり、捜査についても、これまでは部外者にほとんど内容が知らさ
れないまま行われてきたが、そのようなことが許されなくなってきて
おり、そのような観点からの取調べの録音・録画であるということで
ある。これまでは、録音・録画機器も不足していたから十分に実施で
きなかったということも分かるが、機器が充実してきた際は、取調べ
は、ある意味では第三者、国民から見られて当然なのだという意識を
もって、どのように取調べを工夫していくのかということを考えなけ
ればならないと思う。他方、そのような状況の下で、罪を犯した者を
きちんと処罰するためには、このような対応が必要であるといった問
題点もできる限り掴んで、制度創設の過程で盛り込んでいく工夫をし
なければならないと思う。その意味では、両方を見据えて、積極的に
取り組んで、工夫をしてもらい、それを第一線に周知していただきた
い」旨の発言があった。

(3)告訴・告発の受理体制及び指導・管理の強化について

刑事局長から、告訴・告発の受理体制及び指導・管理の強化につい
て報告があった。
 田尾委員より、「告訴・告発センターを設置するという新しい取組
を行うということであるが、ここで取り扱う告訴事件というのは、親
告罪における告訴だけではなく、被害届に加えて処罰を求めるという
被害者の意思のあるものも含まれるのか」旨の発言があり、刑事局長
から、「ここで主に考えているのは、親告罪であるか否かにかかわら
ず、告訴・告発についてしっかりと受理・処理していくという趣旨で
ある」旨の説明があった。
 田尾委員より、「警察署の告訴・告発センターで取り扱うものにつ
いては、本部の告訴・告発センターにおいて受理するかどうかの最終
判断があって、そこから指示されるものなのか」旨の発言があり、刑
事局長から、「警察署に告訴・告発の相談があったものについては本
部の告訴・告発センターに報告を上げさせ、明らかに事件ではないと
思われるものについては不受理としても差し支えないということにな
るとは思うが、警察署へ持ち込まれたものについてしっかりと把握さ
せるという趣旨である」旨の説明があった。
 田尾委員より、「警察署の告訴・告発センターの判断だけですぐに
受理するということもあり得るのか。難しい事件等の場合は本部の判
断を仰ぐということなのか」旨の発言があり、刑事局長から、「御指
摘のとおりであり、警察署の判断で受理したものについては、速やか
に本部へその旨連絡すればよく、判断が難しいものについては本部へ
事前報告するということになる」旨の説明があった。
 田尾委員より、「告訴・告発センターが告訴事件を特別に扱うとい
うことになれば、通常、事件担当課が被害届を受理していることとの
兼ね合いで少し複雑になるのではないのか」旨の発言があり、刑事局
長から、「独立の組織としてセンターを設置するということではなく、
例えば強行犯の告訴の担当者というように指定をしておき、傷害事件
に関する告訴相談があれば、その指定された者に対応させるというこ
とになり、被害届と告訴を同時に扱うことになるので、御指摘のよう
な支障が生じるようなことはないと思う」旨の説明があった。
 田尾委員より、「告訴状は内容的に被害届を兼ねる場合もあるだろ
うし、逆の場合もあるのではないかと思われるが、その辺りの選別は
一次的には事件担当課が行うことになるのか」旨の発言があり、刑事
局長から、「傷害事件のように、始めから告訴ではなく被害届という
形で持ち込まれる場合は、事件担当課において受理することになると
思う」旨の説明があり、田尾委員より、「ただ、傷害の場合であれば、
告訴を含むような趣旨の被害届が多いのではないか」旨の発言があり、
刑事局長から、「御指摘のとおり、被害届といっても、結局は犯人を
処罰してほしいということで出されるもので、実質的には告訴と同じ
であり、その辺りをもう少し第一線に認識させたいということがある。
第一線では、『告訴を受理するのは大変なことだ』という意識で、即
受理としないというような傾向が少しみられたことから、今回の取組
はそのような意識を改善していく施策の一環として考えている」旨の
説明があり、田尾委員より、「そうすると、警察署の告訴・告発セン
ターとしては、単に被害届だけの場合は関与しないということになる
が、問題は、告訴・告発と被害届の狭間にあるような、いずれに属す
るか分かりにくいような場合にどこがチェックするのかということに
あるのだと思う」旨の発言があり、刑事局長から、「明確に告訴相談
という形で持ち込まれたものについては、やはり狭間に落ちることの
ないようにしっかりと対応するということである。したがって、例え
ば傷害事件の告訴相談に来られた方に対して、『傷害事件だったら被
害届でいいのではないか』というような処理はさせないようにしよう
とするものである」旨の説明があり、田尾委員より、「告訴と被害届
では、やはり立件上の問題があるのか。告訴・告発センターが関与す
る事件と、そうではない事件担当課が被害届を受理する事件では、そ
の後の捜査の方法や処理等に差が生じるのか」旨の発言があり、刑事
局長から、「やはり告訴・告発の場合には、刑事訴訟法において、受
理したときは速やかに検察官へ送付しなければならない旨明記されて
いることから違いはあると思われるが、ただ、それぞれの事案の実質
的な内容により、正に早急に処理すべきものなのかどうかということ
を判断することになる」旨の説明があった。
 山本委員より、「第一線としては、告訴・告発があったものをどの
ように処理するのかということについて、非常に重い負担を迫られて
いるのではないかと思われるので、どういうものについてはどう処理
すればいいということを第一線に周知して、第一線の負担、悩みをな
るべく減らすような工夫をし、全て受理して早く処理されるようにな
ったという結果が出るように努めてもらいたい。それは、第一線だけ
に任せるということではなく、処理の方法についてどのようなことに
悩んでいるのかということを吸い上げ、このように対応すればよいと
指導できるものについては、積極的に指導していくということを考え
ていかないといけないと思う」旨の発言があった。

(4)捜査特別報奨金取扱要綱の一部改正について

刑事局長から、捜査特別報奨金取扱要綱の一部改正について報告が
あった。

(5)中央自動車道笹子トンネルにおける崩落事故について(山梨県警察)

刑事局長から、12月2日、中央自動車道笹子トンネル内において
発生した崩落事故の概要及び警察の対応について、交通局長から、こ
れまでの交通対策の状況等について報告があった。

(6)板橋区赤塚三丁目住宅内女性強盗殺人事件について(警視庁)

刑事局長から、11月21日に発生した板橋区赤塚三丁目住宅内女
性強盗殺人事件の概要等について報告があった。

(7)第46回衆議院議員総選挙の違反取締りについて

刑事局長から、第46回衆議院議員総選挙における違反取締りに関
し、これまでの検挙・警告状況について報告があった。

(8)北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射への対応について

警備局長から、北朝鮮による「人工衛星」と称するミサイル発射へ
の対応について報告があった。

(9)東日本大震災に伴う警察措置について

警備局長から、東日本大震災に伴う警察措置に関し、行方不明者の
捜索活動、福島第一原子力発電所周辺における警察活動等について報
告があり、関連発言として、刑事局長から、身元確認状況について報
告があった。

(10)第13回アジア大洋州地域サイバー犯罪捜査技術会議の開催につい

情報通信局長から、12月12日から14日までの間、アジア大洋
州地域における各治安機関の間で、解析技術やサイバー犯罪捜査に係
る知識・経験等を共有することにより、サイバー犯罪捜査技術力の向
上を図ることを目的として開催される第13回アジア大洋州地域サイ
バー犯罪捜査技術会議の概要について報告があった。

3 その他

(1)刑事局長及び生活安全局長から、4都府県警察におけるインターネ
ットを利用した犯行予告事件に係る誤認逮捕事案の検証状況について
報告があった。
 田尾委員より、「警察としては、この種事件捜査に関する能力はあ
るが、関係部門間の連携強化が必要ということか」旨の発言があり、
長官から、「この種事件についての認識不足、指示不足は反省事項で
あるが、警察にも、知見や能力のある部門、職員がおり、これらが連
携して組織として当たっていくことが重要であると考えている」旨の
説明があった。
 田尾委員より、「神奈川県警察の検証では、少年を自白させたこと
について、「一般論として少年事件の流れを説明したが、少年院に入
ってしまう不安を助長したおそれがある」という婉曲な結論となって
いるようだが」旨の発言があり、生活安全局長から、「取調べに当た
った捜査員をかなり厳しく調べたが、それ以上の話は出てこなかった
ということである。今後は、県警の調査結果を少年の側に説明し、再
度、少年の側の主張を確認することとなる」旨の説明があり、長谷川
委員より、「少年院に入ってしまうと言ったかどうかということより
も、むしろ、警察が、このようななりすましといったケースを知らな
かったということが問題であると思う」旨の発言があった。
 前田委員より、「誤認逮捕自体はあり得ることだが、警視庁の事案
で、他人の罪を被ろうとした虚偽自白の方が問題ではないか」旨の発
言があり、長官から、「自白があったために、その真偽についての検
討がなされなかったというものである」旨の説明があった。
 山本委員より、「再発防止といっても、サイバー空間において、何
ができるのか難しいのではないかと思う。そもそも、サイバー空間に
おいて、匿名でできることが問題であり、行為者が誰か分かるような
仕組みにすべきではないか」旨の発言があり、長官から、「その点に
ついては、サイバー空間は自由であるべきであり、それが経済発展に
もつながっているという意見も強いところである」旨の説明があり、
前田委員より、「この種事件を抑止するためには、厳罰化しかないの
ではないか」旨の発言があった。
 髙木委員より、「サイバー空間の問題に対処していくためには、警
察だけではなく、民間とも連携していかなければならない」旨の発言
があり、長官から、「警察自体の能力を更に高めていくほか、民間と
も連携していくことが重要であると考えている」旨の説明があった。

(2)刑事局長から、兵庫県警察における被害者多数の殺人・死体遺棄等
事件の捜査状況等について報告があった。

(3)刑事局長から、銃器対策推進会議に係る事務の移管について報告が
あった。

(4)長官から、12月5日に実施された工藤會に対する特定危険指定暴
力団の指定に係る意見聴取の状況等について、また、刑事局長から、
本年1月に福岡県中間市において発生した建設会社役員に対する拳銃
使用殺人未遂事件の被疑者として工藤會傘下組織組員2名を検挙した
ことについて報告があった。