定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成25年2月14日(木)

午前10時00分 午前11時50分


第2 出席者 古屋委員長、長谷川、髙木、山本、前田各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、
情報通信局長
審議官(警備局担当)、首席監察官


第3  議事の概要

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「2月28日付けを始めとする地方警務官等87名の
人事案件について発令していただきたい」旨の説明があり、原案どお
り決定した。

(2)犯罪被害者等給付金の裁定(栃木県)に対する審査請求事案の審理
状況及び裁決について

官房長から、犯罪被害者等給付金の裁定に対する審査請求事案の審
理状況及び裁決について説明があり、原案どおり決定した。

(3)「道路交通法改正試案」に対する意見の募集について

交通局長から、道路交通法の一部を改正する法律案を策定するに当
たり、2月15日から2月28日までの間、「道路交通法改正試案」
を一般に公表し、意見を募集することについて説明があり、原案どお
り決定した。

(4)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を
要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内
容を了承した。

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)警察庁長官に対する開示請求の決定について(行政機関情報公開法
関係)

官房長から、警察庁長官に対してなされた行政機関情報公開法関係
の開示請求に係る決定について報告があった。

(3)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「千葉県警察の警視が、セクシュアル・ハラスメ
ント行為をした事案に関し、同県警察は、2月14日、同警視を停職
処分とする予定である」旨の報告があった。
 長谷川委員より、「停職3月というのは軽いように思う。本件のよ
うな状況の中で、若い女性が拒否するというのはなかなか大変だと思
う。前回の定例会議でも申し上げたが、若い女性がこのような関係に
なったときに、どのようにすればいいのかということをもっときちん
と教えてもらいたい」旨の発言があり、首席監察官から、「処分量定
については、過去の先例や行為の状況等を勘案して検討している。署
長という立場であるというのは非常に特異な点であるが、自らその立
場を殊更に強調するなどの状況は認められず、署長が一方的に好かれ
ていると思いこんでアプローチをしたというような状況であったとこ
ろ、千葉県警察としてはそれでもかなり重い処分として停職3月とす
るというものである。また、長谷川委員から御指導いただいた女性向
けの被害に遭わないようにするための対策については、現在研究を始
めており、できるだけ分かりやすい執務資料にしたいと考えており、
委員会にも報告したいと思う」旨の説明があった。
 前田委員より、「この署長は、他の署長も本部の課長も務めており、
ある意味ではベテランであるが、今回のような事案は普通に考えれば、
このようなことをする者を署長にしたという任命責任の方が重いので
はないか。偶発的に起こったということとは違い、自分の意思で行っ
ているわけであるから、明らかに任命責任がある。この点については
千葉県公安委員会はどのように判断しているのか」旨の発言があり、
首席監察官から、「あくまで署長の私行上の勤務外における行為であ
ったということであり、それ以上の監督責任を問う事案ではないだろ
うという判断であると認識している」旨の説明があった。
 前田委員より、「私も監督責任はないと思うが、このようなことを
する者をそもそも署長にするということ自体、任命責任があるのでは
ないか。民間の会社であれば、任命責任はどうなっているのかという
のが常識的にある。犯罪になっていないだけで、明らかに今回の事案
は故意によるものである。署長というのは、ある意味では警察官の一
つの理想像なのだから、今回の事案のようなことを堂々と行ったとき
に、どうするのかという方が重要であり、そのような人が大勢署長に
なってしまったら警察は終わりである。単に前例があったからとか、
この程度のセクハラであれば、というように、形式的に処理するもの
ではないと思う。例えば、家庭の事情等で考慮すべき点がいくつもあ
ったのであれば別であるが、そのようなことがなくて今回の事案を引
き起こしたのであれば、間違いなく任命のミスである」旨、委員長よ
り、「首席監察官の説明では、過去の事例などを考慮して厳正に対処
したということである。前田委員が指摘されたことは、やはり警察官
全体のモラルの問題であり、特に平成12年から不祥事の減少に向け
た対策を進め、減ってきたものの、この3年間は増加して懲戒処分者
数が約450人になっているということとも決して無関係ではないと
思う。だからこそ、委員長就任時に、長官から末端の警察職員まで同
じモラルをしっかり持つという意識がなければ、このような不祥事の
問題は減っていかないということを指摘したが、長官が、前田委員の
御指摘をしっかりと重く受け止めてもらい、今後どのように対応して
いくべきなのかということを総合的にやはり警察庁全体として考えて
もらうということだと思う」旨の発言があり、長官から、「確かに、
本人の行為責任と、その行為時の監督責任というのは、現在の監察の
処分体系に入っているが、任命責任は、この体系に入っていないとい
う問題はある。また、所属長以上の上級幹部が、どれだけ高いモラル
・規律で部下を引っ張れるかということが、警察組織を変えていく上
で非常に重要ではないかと考えている。警部や警視の懲戒処分の比率
も人数比でみると高いというのが現状であるので、幹部を中心に改革
を進めていきたい」旨の説明があり、委員長より、「しっかり対応し
ていただきたいと思う」旨の発言があった。

(4)平成24年中における生活経済事犯の検挙状況等について

生活安全局長から、平成24年中における生活経済事犯の検挙状況
等について報告があった。
 山本委員より、「全体として被害総額も相談件数も減少してきてお
り、非常に良いことであり、様々な新しい取組を行い、その効果が表
れているのだと思う。以前は、被害額が増加してきて、それから犯人
を検挙するという傾向があったように思うが、そのようなやり方では、
被害者の被害回復がなされず、巨額の被害が生じたまま放置されると
いうことになり、その意味では、被害が小さいうちにきちんと摘発す
ることが大きな被害の防止につながるので、今後もこのような取組を
続けてもらいたいと思う。また、生活経済事犯の検挙に関する様々な
取組が、例えば、犯罪収益移転防止法の活用が、組織犯罪をめぐる諸
活動を敢行しにくくするという効果にもつながっていくと思われるの
で、生活経済事犯の検挙という観点だけではなく、犯罪収益移転防止
法の活用によって得られた各種情報等も総合して対応してもらいたい
と思う。いずれにしても、良い方向に向かっていると思うので、今後
も更に進めてもらいたい」旨の発言があった。

(5)平成24年中の犯罪収益移転防止法の施行状況等について

刑事局長から、平成24年中の犯罪収益移転防止法の施行状況等に
ついて報告があった。

(6)遠隔操作ウイルス「iesys.exe」を使用した威力業務妨害
事件被疑者の逮捕について
(警視庁・神奈川県警察・三重県警察・大阪府警察)

刑事局長から、「警視庁等4都府県警察合同捜査本部は、平成24
年8月に発生した遠隔操作ウイルス「iesys.exe」を使用し
た威力業務妨害事件に関し、2月10日、被疑者を逮捕した」旨の報
告があった。

(7)平成24年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況
について

交通局長から、「平成24年中の交通事故死者数は4,411人で
あり、12年連続で減少し、交通事故発生件数及び負傷者数も8年連
続で減少した」旨の報告があった。
 前田委員より、「最高速度違反による死亡事故は大幅に減少してき
ており、以前、警察庁側の説明で、重大事故に結びつかないものより
は、重大事故の方を重視して取り締まるように方針を変えた旨聞いた
ことがあったが、実際に走行してみると、最重点で行う必要がない場
所や高速道路の出口付近など事故に結びつく例がほとんどないような
場所で速度違反の取締りを行っているのを見かけるところであり、説
明と全然違うのではないかと感じる。もっと悪質な違反者が多くいる
わけだから、そのような者を捕まえてもらいたいと思うが、実態はど
のようになっているのか」旨の発言があり、交通局長から、「御指摘
のように、事故防止に役立つような取締りをするということが重要で
あると考えており、事故実態を分析して、事故防止につながるような
取締りを行うよう指導していかなければならないし、そのように指導
してきたところであるが、不十分な点があるとすれば、徹底していか
なければならないと考えている」旨の説明があった。
 前田委員より、「摘発されるのは県外の人がほとんどであり、地元
の人は何処で取締りをやっているのか分かっているので摘発されない
というようなことは、非常に違和感がある。同じ場所で取締りをして
いて本当に事故の防止になるのかということをもう少し考えさせた方
がよいのではないか。特定の県だけではなく全国的に同じようなこと
をしていると思うが、やはり、交通事故防止に重点を置くべきであり、
摘発することが目的ではないのではないか。決して摘発しないでほし
いと言っているわけではないが、摘発が目的化していて不満の声が多
く、速度という面については危機的な状況ではなくなったと思うので、
実態をよくみて、きちんと取締りの重点を変えるようなことも少し考
えなければならないのではないか。必要なときにやるなとは言わない
が、これまでどおりに漫然と行うというのは如何なものか」旨の発言
があり、交通局長から、「取り締まりやすいところで取り締まるとい
うことがあってはならず、取り締まるべき場所で、取り締まるべき時
間帯に事故防止につながるような取締りを行うことが求められるので、
その点は指導を徹底してまいりたい」旨の説明があった。
 長谷川委員より、「私も運転していて、いつも同じ場所で、事故な
ど起きるわけがないだろうというような場所で取締りをしているとこ
ろを見かけるので、前田委員の発言に同感である。統計を見ても、法
令違反別の死亡事故の実態は大きく変わってきており、多くは漫然運
転や脇見運転等によるもので、状況がかなり変化してきているので、
その辺りの対策は最高速度違反の取締りなどではないところでもっと
やらなければならなくなってきたのではないかと思う」旨の発言があ
り、交通局長から、「最高速度違反の取締りによって、スピードの抑
制を図る必要もあるので、取締りは一切不要というわけにはいかない
と思うが、子供や高齢者が生活の中で安心して道路を利用できるよう
な対策も今後は重要ではないかと考えており、ゾーン30や通学路対
策といったものに重点を置きながら対策は進めてまいりたい」旨の説
明があり、委員長より、「前田委員、長谷川委員から指摘があったよ
うに、最高速度違反の取締りをどこで行っていて、その場所は変えて
行っているのかどうか、また、事故が起きやすい場所と取締り場所に
ミスマッチはないかなど、全地域というわけにはいかないと思うが、
ある程度確認してもらい、それを基に、交通違反取締り、最高速度違
反の取締りの在り方を根本的に変えていく機会としたい。本当に事故
防止のためになる取締りであれば大いにやってもらいたいが、一方で、
取締りのための取締りに少しなっているのではないかという点につい
ては、私も同じ印象をもっている。是非、現場の実態をしっかり調べ
てもらい、改めて委員会に報告してもらいたい」旨の発言があった。
 山本委員より、「死亡事故の捜査に関して、被害者の死亡により、
加害者側の説明に則った捜査が行われ、結果として真相ではない事実
認定となっているケースがかなりあるのではないかと懸念している。
御遺族からみて、警察の捜査がどのように受け取られているのかとい
うことを、すぐにということでなくともよいが、一度調査して、不満
をお持ちの御遺族がどの程度おられるのかということをできれば掴ん
でもらいたい。私も決して多くのケースに関わっているわけではない
ので、実情はどうなのか必ずしもよく分からないが、大きな疑問のあ
る捜査結果が示されたという事案も実際体験しており、ちょっと意識
してもらいたい。恐らく被害者側ではかなり不満を持っておられるケ
ースがあるのではないかという感じもするので、どのようなところが
問題なのかということをもし見つけることができれば、これを改善し
ていくという努力を是非していただきたい」旨の発言があり、交通局
長から、「御指摘のとおり、被害者が亡くなられている場合は、その
方からの供述はいただけないということがあり、だからこそ客観的に
如何に真実を解明するかという捜査は非常に重要であると認識してい
る。中には不幸にして訴訟が係争される場面もあることも事実である。
いずれにしても正しい客観的な捜査をするということがあるべき姿で
あるので、そのような方向にも資するような、どのような工夫ができ
るのかといったことについて検討してまいりたい」旨の説明があった。
 委員長より、「山本委員から指摘があった、御遺族からのヒアリン
グというようなことは、行われているのか」旨の発言があり、交通局
長から、「実際の事故においては、捜査手続や支援の内容の説明、要
望の聴取等被害者支援に力を入れている」旨の説明があり、委員長よ
り、「被害者支援については分かるが、警察の捜査について御遺族が
納得されているかどうかということの調査についてはどうなのか」旨
の発言があり、長官から、「個別の事案の問題であり、そのような調
査の全体数はどうなのかといったことについては申し上げにくいとこ
ろではあるが、ただ、技術進歩で解決できる部分もあるのではないか
と思う。イベント・データ・レコーダのようなものが普及してくれば、
事故時の状況は明確に分かるし、また街頭の防犯カメラの精度も最近
はかなり向上しているので、そのような映像が撮れている場合も考え
られる」旨の説明があった。

(8)北朝鮮による核実験への対応について

審議官(警備局担当)から、北朝鮮が2月12日に実施した核実験
への対応について報告があった。

(9)全教「第30回定期大会」をめぐる動向と警察措置について

審議官(警備局担当)から、2月16日から17日までの間、都内
で開催される全教(全日本教職員組合)「第30回定期大会」をめぐ
る右翼等の動向と警察措置について報告があった。

(10)平成24年における技術支援実施状況について

情報通信局長から、平成24年の都道府県(方面)情報技術解析課
における技術支援実施状況及び解析台数が大幅に増加しているスマー
トフォンの解析上の課題と対応等について報告があった。
 長谷川委員より、「解析総容量が急激に増加しており、加えてスマ
ートフォンについては解析上難しいケースも増えていくので、このま
ま指数的に増えると大変な事態になると思う。一つ一つ対策を講じる
ような対応では間に合わないので、抜本的に何か大きな対策を立て直
さないといけないのではないかと危惧している」旨の発言があり、情
報通信局長から、「確かに容量も増えているが、例えば、ハードディ
スク等の読み込みや書き込みの速度は非常に速くなっているので、今
のところ、ある程度はニーズに追いついている状況にある。しかし、
御指摘のように、今後は更に増加していくと予想され、情報通信部門
だけで全て対応することは困難であるので、簡易なもの、定型的なも
のについては、現場の警察官で対応するように指導しており、情報通
信部門としては、やはり解析に困難が伴うものに特化して重点的に対
処していきたいと考えている」旨の説明があった。

3 その他

(1)審議官(警備局担当)から、在アルジェリア邦人に対するテロ事件
への対応に関する検証について報告があった。
 長谷川委員より、「TRT-2が支援する範囲はどのようなものか」
旨の発言があり、審議官(警備局担当)から、「現地での情報収集や
鑑識活動等の捜査支援である。過去に、バリ島でのテロ事件の際にも、
身元確認のためにDNA型鑑定の支援等を行った。また、人質解放交
渉の支援も行う」旨の説明があった。
 長谷川委員より、「体制の強化とあるが、定員上の問題はないのか」
旨の発言があり、審議官(警備局担当)から、「TRT-2は、警察
庁及び都道府県警察の職員の中から指定しており、指定を拡充するこ
ととなる。その意味で能力のある者の指定が重要となる」旨の説明が
あった。
 委員長より、「TRT-2については、1月21日深夜、7名の方
の死亡確認について内閣官房長官が発表したことにあわせて、私も記
者会見して、その活動について発表した。なお、一つの課題としては、
クイック・ディスパッチが改善点であり、その旨指示したところであ
り、政府のほか与党においても同様の検討委員会を立ち上げて、その
中でも課題として取り上げており、今後、政府与党が一体となって取
り組んでいくこととしている」旨の発言があった。

(2)刑事局長から、2月12日、グアムにおいて発生した邦人殺傷事件
について報告があった。

(3)情報通信局長から、平成24年中における警察庁CSIRTの活動
状況及び対処事案のうち半数を占める標的型メールの分析結果につい
て報告があった。
 前田委員より、「都道府県警察にもCSIRTを設置するように指
導する予定とのことであるが、いつまでに、どのように指導すること
にしているのか。もう少し具体的に「指示」という形で行った方がい
いのではないか。各都道府県に任せていると実際に対策が推進されて
いくのかどうか分からない。CSIRTのような事項については、警
察庁がコントロールした方がよいのではないか。各都道府県の独自性
というようなものではないと思う」旨の発言があり、情報通信局長か
ら、「現状では、正式なCSIRTというのは、警察庁CSIRTだ
けであるが、都道府県警察においてウイルス感染事案があった場合等
特異事案が発生した場合は警察庁に報告するようにしており、実態と
して警察庁CSIRTが対応しているところである。ただ、やはり組
織として、各都道府県警察がCSIRTを編成し、それぞれを連携さ
せる必要はあると考えており、所要の規定整備を進めているところで
ある。警察庁CSIRTを中心に、連携という形ではあるが、全体と
して確実に対処していけるようにしたいと考えている」旨の説明があ
った。