定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成25年7月25日(木)

午前10時00分 午後0時00分


第2 出席者 古屋委員長、長谷川、髙木、山本、前田、奥野各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、
警備局長、情報通信局長
首席監察官


第3 議事の概要

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「8月5日付け暴力団対策法審査専門委員1名の任
命について発令していただきたい」旨及び8月31日付け人事案件
2名についての説明があり、原案どおり決定した。

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「大阪府堺警察署の巡査長らによる不適正な犯
罪統計業務等事案の監督責任として、同府警察は、国家公安委員会
の了承が得られれば、7月25日、地方警務官の前警察署長を本部
長訓戒の措置とする予定である」旨の説明があり、原案どおり了承
した。

(3)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に基づく
適格都道府県センターの認定等について

刑事局長から、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
の規定に基づく適格都道府県センターの認定等に関し、認定を受け
る都道府県暴力追放運動推進センター、認定要件の適合性等につい
て説明があり、原案どおり決定した。

(4)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答
を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、そ
の内容を了承した。

2 報告事項

(1)警察庁長官に対する開示請求の決定について(行政機関情報公開
法関係)

官房長から、警察庁長官に対してなされた行政機関情報公開法関
係の開示請求に係る決定について報告があった。

(2)平成25年上半期の懲戒処分者数について

首席監察官から、平成25年上半期の懲戒処分者数について報告
があった。

(3)平成25年度第1四半期監察の実施状況について

首席監察官から、平成25年度第1四半期監察の実施状況につい
て報告があった。

(4)監察の取扱い事案について

首席監察官から、1(2)で説明のあった大阪府堺警察署の巡査
長らによる不適切な犯罪統計業務等事案に関し、「同府警察は、7
月25日、同巡査長らを減給処分等とするとともに、監督責任とし
て、上司らを本部長注意等の措置とする予定である」旨、「北海道
警察の警部補が、女性に強制わいせつ行為をしたとして、6月26
日に通常逮捕された事案に関し、北海道警察は、7月25日、同警
部補を懲戒免職処分とする予定である」旨及び「栃木県警察の警部
らが、被留置者に適切な処遇をせず死に至らしめた業務上過失致死
事案に関し、同県警察は、7月26日、同警部らを減給処分等とす
るとともに、監督責任として、上司を本部長訓戒の措置とする予定
である」旨の報告があった。
 奥野委員より、「大阪府警察の事案に関して、同じ警察署で非違
事案が相次いでいるほか、不適切な犯罪統計業務については以前か
ら続いていたということを考えると、他署と異なる特異な状況・問
題があったとも考えられるが、どうか」旨の発言があり、首席監察
官から、「特にこの警察署に特別な問題があったと現在認識してい
るわけではないが、今後の監察の機会等にまた御指摘の点について
確認してまいりたいと思う」旨の説明があり、奥野委員より、「こ
の署特有の体質や土壌のようなものがないのか少し遡り掘り下げて
確認した方がよいのではないかと思う」旨の発言があり、首席監察
官から、「例えば、不適切な犯罪統計業務の事案に関しては、認知
件数が前年比で大きく変化しているとか、同規模の警察署と比較し
て違和感があるなどについてどこかで気付くべきであったと思われ
るが、御指摘のような点も確認してまいりたい」旨の説明があった。
 髙木委員より、「栃木県警察の事案に関して、被害者には警察医
による診察を受けさせたものの、掛かりつけ医への照会を怠ったと
いうことであるが、警察医の対応はどうだったのか」旨の発言があ
り、首席監察官から、「警察医からは、必要な検査を行った上で、
インスリン投薬に関する指示があったが、結果的に所要量よりも少
量の投薬であったため、被害者としては、以前から通院していた掛
かりつけ医の診察・投薬を要望していたものの、結局、これに応え
ることができなかったというものである」旨の説明があった。

(5)第23回参議院議員通常選挙の違反取締りについて

刑事局長から、第23回参議院議員通常選挙における違反取締り
に関し、これまでの検挙・警告状況について報告があった。

(6)警察における取調べの録音・録画の試行の検証について

刑事局長から、警察における取調べの録音・録画に関し、裁判員
裁判対象事件及び知的障害を有する被疑者に係る試行の検証等につ
いて報告があった。
 長谷川委員より、「取調べの録音・録画の実施率は随分増加する
とともに、ライブ方式、プレビュー方式の割合も増えるなど、その
実施の態様も変わってきているが、これは現場の捜査員が効果的で
あるという手応えを感じてきたことによって、こうした変化が生じ
ているのか」旨の発言があり、刑事局長から、「御指摘のとおりで
あり、試行を始めたときは、供述調書の読み聞かせの場面等に録音
・録画を行うというものがほとんどであり、場面的にも時間的にも
限定されていたが、現在はかなり拡充している。現場で必要性を認
識していないにもかかわらず実施されているというものではないと
思う」旨の説明があり、長谷川委員より、「これまで実施されてい
なかった取調べの録音・録画について、試行しているうちに意味が
見出されてきたということは良いことだと思う。ヨーロッパ諸国へ
視察に行った際、イギリスでは、当初取調べの録音・録画にほとん
どが反対であったが、実際試行してみると、徐々にそのメリット・
デメリットが認識され、試行錯誤の末に現在のようなやり方となっ
ているということであった。やらないとしていたことをやってみる
と、思っていたほど悪いものではなく、意味を見出せる部分が幾つ
もあったということではないかと思う。例えば、イギリスとオラン
ダでは制度が異なっており、日本においても、引き続き現場の意見
を吸い上げるなどして、なるべく早く最適な形を見つけていく必要
があると思う」旨の発言があった。
 前田委員より、「警察としては、取調べの全過程の録音・録画は
捜査に支障があると主張しているわけであるが、単に支障があると
いうだけでは理解が得られるものではなく、事実に基づいて、やは
りその支障を具体的に説明していく必要がある」旨の発言があり、
刑事局長から、「御指摘の点については、これまでも法制審議会の
場において分かりやすく具体的な説明に努めてきたところであり、
これからもしっかり対応することとしている」旨の説明があった。
 山本委員より、「平成22年に「捜査手法、取調べの高度化を図
るための研究会」が立ち上がってから3年が経過しており、そろそ
ろ結論に至る時期ではないかという気がする。取調べの全過程を録
音・録画することとする場合の支障について、警察からはいろいろ
意見が出されていることは承知しているが、冤罪の防止が出発点と
して取調べの可視化が議論されているということを考えれば、警察
がその支障を判断するということはなかなか通りにくいような気が
するところであり、どのような事件のどのような場面でいかなる支
障が生じるのか具体的なことを早く示していく必要があると思う。
あまり時間がないという意識をもちながら、支障が生じないような
形での制度の発足を目指す努力を速やかにしていただきたい」旨の
発言があり、刑事局長から、「法制審議会の場においても、取調べ
の録音・録画は取調べに対する規制であり、警察が判断することで
はないという意見が出されている。しかし、捜査は、その時々の状
況によって変化するものであり、例外規定があったとしても、取調
べの録音・録画が義務付けられた場合、例外事由に当たると判断し
て取調べの録音・録画を実施せずに取り調べたものの、例えば、被
害者の名誉を害する供述をしなかった場合、その警察の判断が義務
違反に当たるのではないかと争われる可能性があり、その結果、証
拠能力や取調官の責任が問われるようなことになれば、結局は取調
べの全過程を録音・録画しなければならないことと同じことになっ
てしまうのではないかという制度論の難しさがあると主張している
ところである。なお、現在、取調べの録音・録画を含めて、法制審
議会「新時代の刑事司法制度特別部会」において検討が進められて
おり、今春には「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」が
取りまとめられ、分科会からの報告の聴取を経て部会全体の検討を
深めている段階である。取調べあるいは捜査全体の機能を大きく損
ない治安水準の低下を来すようなことにならないような制度の在り
方を追求していくべきというのが警察の基本的なスタンスであり、
例えば、取調べの全過程の録音・録画を義務付けるべきであるとい
った主張については、そのようなことになった場合の捜査への支障
について、具体的で分かりやすい説明に努めてきたところであるが、
そうした点になお一層留意しながら、これからの議論・制度設計に
積極的に参画してまいりたい」旨の説明があった。
 髙木委員より、「取調べの録音・録画によって新たに必要となる
体制の在り方も考えながら制度を検討する必要があるのではないか」
旨の発言があり、刑事局長から、「御指摘のような事務量の大きな
増加による人的負担やコスト論のような話についても法制審議会の
場において申し上げてきているところである」旨の説明があった。
 奥野委員より、「これまで試行を続けてきた結果、捜査に支障を
及ぼすのはどのような場合なのか。特定の類型に限られているのか」
旨の発言があり、刑事局長から、「一つは、暴力団犯罪のような場
合において、録音・録画を実施すると、組織からの報復、制裁を恐
れ、組織の関与について供述しなくなってしまうということ、もう
一つは、性犯罪等において、被害者等の名誉やプライバシーを害す
るような供述をしたり、被害者と合意があったなど虚偽の供述をす
るおそれがあるときには問題があるということについては、コンセ
ンサスができ上がってきているところであり、法制審議会の場にお
いても具体的に申し上げているところである」旨の説明があった。
 奥野委員より、「取調べの録音・録画は、当初、捜査に相当影響
が出るのではないかと懸念されていたと思うが、実際に試行してみ
ると、捜査員のアンケートでも、立証上有効であるとの回答が多か
ったというのが今回の報告であると思う。ただ、冤罪の防止という
原点は忘れてはいけないし、二度と冤罪を生じさせないという気持
ちで録音・録画に取り組んでもらいたい」旨の発言があった。

(7)DNA型鑑定及びDNA型データベースの活用状況等について

刑事局長から、DNA型鑑定及びDNA型データベースの活用状
況、課題及び現時点における取組について報告があった。

(8)自動車安全運転センター評議員の任命の認可について

交通局長から、自動車安全運転センター法の規定に基づき、同セ
ンターから国家公安委員会に対し、評議員任命についての申請がな
され、適正であると認められたことから、長官決裁の上、評議員の
任命について認可を行ったことについて報告があった。

(9)平成25年上半期における不正プログラム解析の状況について

情報通信局長から、平成25年上半期における不正プログラムの
解析の実施状況及び当面の推進事項について報告があった。

3 その他

(1)交通局長から、海外における速度取締り機器の運用状況について
報告があった。
 前田委員より、「海外における速度取締り機器の調査については、
いかに事故抑止に資する取締りを行うかという観点からの検討・分
析をお願いしたい。近年は、速度に起因する交通事故が減少してい
ることなどもよく考えて取り組んでもらいたい」旨の発言があり、
交通局長から、「御指摘の調査については、危険な場所で取締りを
したいが、車両を引き込む場所がないという課題をクリアしようと
いう趣旨のものである」旨の説明があった。
 委員長より、「海外に行くと、例えば、カーブなどの状況を考慮
に入れているからか、70、50、40、30キロと、制限速度が
こまめに変わったり、高速道路のスピードチェックの看板が数多く
設置されていたりすることに気がつく。また、ゾーン監視装置の話
があったが、海外で使用されている取締り機器については、小型化
したり、工夫したりして、さらによいものにする技術が我が国には
あると思う。これまで取締りの在り方について見直しがなされてこ
なかったが、取締りに納得がいかないという声を耳にしたりするな
か、良い機会であるので、この度、問題提起させていただいたとこ
ろである。これから、交通事故抑止に資する取締り・速度規制等の
在り方に関する懇談会を開催し、取締りのワーキングチームと速度
規制のワーキングチームの双方をそれぞれ立ち上げて、取締りのた
めの取締りではない、事故抑止に資する取締り、取締りの時間・場
所等の検討、合理的な速度規制の在り方等について、検討していき
たいと考えている」旨の発言があった。