定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成26年1月30日(木)

午前10時00分 午前11時15分


第2 出席者 長谷川、髙木、山本、前田、奥野各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、
警備局長、情報通信局長
首席監察官


第3 議事の概要

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「2月18日付けを始めとする地方警務官等58名の
人事案件について発令していただきたい」旨の説明があり、原案ど
おり決定した。

(2)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答
を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、そ
の内容を了承した。

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

(2)平成25年度第3四半期監察の実施状況について

首席監察官から、「警察安全相談・事件相談への組織対応状況」を
全国統一実施項目として、警察庁が都道府県警察に対して行った平
成25年度第3四半期における監察の実施状況について報告があり、
関連して、官房長から、「今回の監察は、昨年の10月から11月に
かけて行われ、各都道府県警察は総じて良く取り組んでいるという
形での総括にはなっているものの、その時期に東京都三鷹市におい
てストーカー殺人事件が発生しており、これだけの重大事件が発生
したことを考えると、この事件を踏まえて見直した警察相談への対
応に係る新たな体制がきちんと機能しているかを検証することが大
変重要となる。そこで、平成26年度第3四半期における監察項目
として、新たな相談体制の運用状況を盛り込んだところであり、監
察を通じて、機能性の高い相談対応の仕組を確立してまいりたい」
旨の説明があった。
 前田委員より、「官房長の説明のとおり、相談対応の窓口や方法に
ついて大幅に変更したところであり、新しい仕組がきちんと定着す
るかという観点から監察を継続して行っていただきたい。他方、相
談の受理・処理状況の管理のシステム化が遅れ、手作業で管理して
いるという県警察もあると聞く。システム化しないとどこまで処理
されているのか『見える化』ができず、処理状況の把握漏れから対
応の漏れが生じるということになれば以前と変わらない、というこ
とにもなりかねない。予算の問題もあるだろうし、小規模県警察で
はそれでも機能するのかもしれないが、膨大な相談を抱えているは
ずの大規模県警察の中に未だに手作業で管理しているところがある
というのはいかがなものかと思う。監察では、是非そういう観点で
見て、強力に指導していただきたい」旨の発言があり、官房長から、
「業務の合理化の観点も含め、相談受理窓口から業務主管部門への
相談処理の流れがスムーズに行われるかという点についても見てま
いりたい」旨、首席監察官から、「システム化されていないのは9県
警であり、御指摘の観点を踏まえ、業務主管部門と連携してフォロ
ーアップしてまいりたい」の説明があり、前田委員より、「相談件数
自体が減るということはないのであり、如何に相談処理の流れをス
ムーズに行うかということがポイントになる」旨の発言があった。

(3)平成25年度「総合セキュリティ対策会議」報告書について

生活安全局長から、「総合セキュリティ対策会議においては、平成
25年度中、『サイバー空間の脅威に対処するための産学官連携の在
り方~日本版NCFTAの創設に向けて~』について検討を行い、
この度、報告書を取りまとめた」旨の報告があった。

(4)平成25年中のインターネットバンキングに係る不正送金事犯の
発生状況等について

生活安全局長から、「平成25年中のインターネットバンキングに
係る不正送金事犯は特に6月以降急増し、1,315件、約14億
600万円と過去最大の被害となっている。警察では、今後も、取
締りの徹底や関係事業者等と連携した施策の推進による防止対策を
図っていくこととしている」旨の報告があった。
 長谷川委員より、「インターネットバンキングによる不正送金事犯
の件数が急増しているとのことであるが、これらは刑法犯認知件数
に含まれるのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「刑法犯に該
当するような犯罪形態であれば刑法犯認知件数の中に含まれるとい
うことになるが、これらの事犯はインターネットバンキングに不正
にアクセスをしているもので、不正アクセス禁止法違反などの特別
法犯として捉えられることが多く、その場合には刑法犯認知件数の
中には含まれない」旨の説明があり、長谷川委員より、「刑法犯認知
件数が減少し続けているので、治安は良くなっているとの印象を受
けるが、実は世の中では、このように刑法犯としては取り上げられ
ないところで良くないことが起こっているわけで、刑法犯認知件数
が減少したということだけを捉えて世の中は平和になったとは言え
ない現実があるというのが実際のところだと思う」旨の発言があり、
生活安全局長から、「治安状況については、刑法犯認知件数が言及さ
れることが多いが、特別法犯についても統計を取り、分析を行って
いる」旨の説明があり、長谷川委員より、「ただ、それだと刑法犯と
の関係、治安全体への影響というのは見えにくいと思う」旨の発言
があり、生活安全局長から、「特別法犯の統計においては、覚醒剤、
不正アクセス、児童ポルノなど、それぞれの事犯ごとに検挙件数の
増減について分析をし、お知らせをしているところである」旨、次
長から、「特別法犯については、検挙件数のみの統計となるが、それ
は減っている」旨、刑事局長から、「昨年の警察白書においては、従
来、刑法犯認知件数で犯罪情勢を述べていたのを、サイバー空間の
脅威、女性、子供、高齢者に対する犯罪などをも合わせて犯罪情勢
に触れるように工夫した。今後はそのような観点でも分析していく
ことになると思う」旨、長官から、「刑法犯認知件数というのは、全
体の4分の3を占める窃盗犯の動向に左右されるところがある」旨
の説明があり、長谷川委員より、「世の中が、窃盗のような伝統的な
犯罪だけでは捉えきれなくなってきているということなのだと思う」
旨の発言があった。

(5)平成25年における通信傍受に関する国会への報告について

刑事局長から、「通信傍受法第29条の規定に基づき、平成25
年中の通信傍受の実施状況について国会へ報告する」旨の報告があ
った。

(6)冷凍食品への農薬混入事件被疑者の逮捕について

刑事局長から、「群馬県警察は、群馬県内所在の冷凍食品製造工場
において発生した冷凍食品に対する農薬混入事件について、1月2
5日、被疑者を偽計業務妨害罪で通常逮捕した」旨の報告があった。

(7)市役所に対する偽計業務妨害事件の検挙について

刑事局長から、「愛知県警察・神奈川県警察合同捜査本部は、平成
24年11月、神奈川県逗子市役所から特定個人に係る住民登録情
報を取得しようと企て、親族になりすまして神奈川県逗子市役所に
電話を架け、当該特定個人の個人情報を取得した者について、1月
24日、偽計業務妨害罪で通常逮捕した」旨の報告があった。
 奥野委員より、「この事件は、ストーカー殺人事件に絡み、探偵業
者等により個人情報が売買されたという一連の事件の中の一つであ
る。今回関わった探偵業者は全部摘発されたが、これらの業者は、
携帯電話会社や警察・市役所を含めた行政機関から情報を収集して
おり、探偵業者間の全国ネットワークのようなものがあるのではな
いか。今回の事件を踏まえ、探偵業者の実態解明や取締りを強化す
るという考えはあるか」旨の発言があり、生活安全局長から、「いわ
ゆる探偵業あるいは探偵業法は警察が所管しているので、当然業者
に対しては、法に則り、また、違法行為は行わないように、という
指導を折りに触れて行ってきたところであるが、今回の事件などを
踏まえ、昨年12月には探偵業者への指導を強化するように各都道
府県警察に通達するとともに、業界団体に対して指導を行ったとこ
ろである。ただ、今回の犯行に用いられた電話による情報収集は、
探偵業法上の探偵業務として位置付けられていないため、このよう
な方法により調査を行う業者を探偵業として規制対象とするかどう
かについては様々な議論のあるところだと思う。いずれにしても、
探偵業法の規制が及ぶかどうかにかかわらず、違法行為はあっては
ならないことであり、各探偵業者に対する指導は強化してまいりた
い」旨の説明があり、奥野委員より、「今回の逮捕罪名は偽計業務妨
害であるが、被疑者自身が認識していたかどうかは別としても、被
疑者が不正に入手した情報が最終的に殺人につながったということ
は重大な問題である」旨の発言があり、生活安全局長から、「不正の
方法により市役所から個人情報を入手するということは、違法行為
であり、もちろんやってはいけないことであるから今回摘発をした
ということになるが、他方で、個人情報を持っている企業や行政機
関に対して照会があった場合の応じ方も重要であると考える。今回
は市役所の保有する住民登録情報が対象となったが、総務省は、市
町村に対し、今は指導とか指揮とかいうことができないので技術的
助言ということになるが、電話での照会には応じないなど、第三者
からの照会への対応について示しているところである。警察庁とし
ても、都道府県警察がストーカーやDV事案を取り扱う中で、市区
町村が保有する個人情報を第三者に提供された、あるいは提供され
そうになったという事案を把握しており、総務省に対し、こういっ
た事例を取りまとめて情報提供し、対応策を考えてもらうようにし
ているところである」旨の説明があった。
 山本委員より、「オレオレ詐欺などについても言えることであるが、
かなりの個人情報が収集できていないとこの種の犯行には及べない
と思われるのに、数多くの被害が出ていることを踏まえれば、犯人
らがそれなりに情報収集に成功しているというふうに考えなければ
ならない。その意味では、個人情報を保有している携帯電話会社、
市区町村その他の企業や行政機関などの危機意識が非常に鈍いので
はないかという感じがする。総務省の指揮権限にも限界があるとの
ことであるが、であれば、不注意や不適切な対応により本来秘匿さ
れるべき個人情報が漏洩した、という事案については、警察が積極
的に注意喚起していく必要があるのではないかと思う。警察が注意
喚起することにより、個人情報を保有する各企業や行政機関は気を
付けるだろうし、そのような注意喚起がなされているにも係わらず
改善されなければ責任者の責任が問われるということにもなると思
うので、是非警察においてそのあたりの工夫をしていただきたい」
旨の発言があり、生活安全局長から、「現在、市区町村長は、不当な
目的による請求や相当の理由がない申し出による場合には、住民基
本台帳の閲覧や住民票の交付を拒むことができるとされており、ど
のような場合がそれに当たるのかということについては、ストーカ
ーやDV事案など割と明確な場合であればはっきり断れると思うが、
第三者の場合、事業や職務上正当な照会というのもあり得るところ
であり、そのような照会があった場合の対応の在り方というのが課
題としてあると思う」旨の説明があり、山本委員より、「例えば特定
の個人の戸籍情報を第三者に提供する場合には、対象となった本人
に通知するようにしたらよいと思う」旨の発言があり、生活安全局
長から、「そのような対応が可能かどうかは分からないが、いずれに
しても、総務省に対し、警察で把握している事例については情報提
供するようにしているので、それを踏まえて総務省において検討し
ていただきたいとは思っている」旨の説明があった。
 髙木委員より、「探偵業者数はどのくらいあるのか」旨の発言があ
り、生活安全局長から、「探偵業法に基づく届出を受けたものとして
は、平成24年末現在で5,546営業所である。年間に概ね90
0件の新規届出がある一方、年間700件ほどの廃止届が提出され
ており、その意味では、年間200営業所ずつ増加しているという
ことになる」旨の説明があった。
 奥野委員より、「警察OBが探偵業者に就職しているケースは多い
のか」旨の発言があり、生活安全局長から、「把握はしていない」旨、
長官から、「都道府県警察を辞めた元警察官の中には、このようなと
ころに就職する人もいるようである」旨の説明があった。

(8)ソチ五輪をめぐる国際テロ情勢と日本警察の対応について

警備局長から、ソチ五輪をめぐる国際テロ情勢と日本警察の対応
について報告があった。

3 その他

(1)髙木委員より、「『自殺』という言葉について、御遺族の方の意向
などもあって『自死』という言葉に言い換えようといういくつかの
自治体の動きがあり、これに対しては賛否両論がある旨の新聞記事
があったが、警察としてはどのように考えるか」旨の発言があり、
生活安全局長から、「警察庁では、自殺統計という形で発表しており、
また、政府に設置された会議の名称が自殺総合対策会議であること
などを踏まえ、公式な用語としては『自殺』という言葉を使ってい
る。ただ、御遺族の中には、『自死』という言葉の方がふさわしいと
お考えの方もおられ、そういった御意向を尊重して『自死』という
言葉を使う自治体があるということは承知している。都道府県警察
においては、基本的には公式の用語である『自殺』が使われている
が、場面によっては、自治体の表記法に合わせて『自死』という言
葉を使うところもあるようである」旨の説明があった。