定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成26年6月5日(木)

午前10時00分 午前11時15分


第2 出席者 古屋委員長、長谷川、髙木、山本、前田、奥野各委員

長官、次長、官房長、刑事局長、交通局長、警備局長、
情報通信局長
審議官(生活安全局担当)


第3 議事の概要

1 議題事項

(1)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答
を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、そ
の内容を了承した。

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。
 山本委員より、「改正児童ポルノ法は、今国会で成立する可能性が
高いということであり、これでようやく児童ポルノの単純所持が禁
止される目途が立ち、良かったと思う」旨の発言があった。

(2)平成25年中における行方不明者の状況について

審議官(生活安全局担当)から、平成25年中における行方不明
者の状況について報告があった。
 前田委員より、「認知症に係る行方不明者に関しては、ほぼ1週間
以内に98%の方の所在や身元が確認されており、大半の方につい
ては、今やっている対策で何らかの解決が図られているといえる。
しかし、逆に言えば、残り2%の方については、普通の対策をやっ
ていたのでは身元が分からないまま長期にわたって放置されている
ということになり、関係省庁・関係機関と連携した上で、よほど特
別な何らかの対策を考えないといけないのではないかと思う」旨の
発言があり、審議官(生活安全局担当)から、「厚生労働省等の関係
省庁や地方自治体との連携を図りつつ、検討してまいりたい」旨の
説明があった。
 奥野委員より、「身元が分からないまま施設で長期間保護されてい
る認知症の方は全国で13人ということで、最近この問題がかなり
大きく報道されていることからすると随分少ない印象を受けるが、
この人数であるならば、前田委員御指摘のように、集中的に対策を
行うことも可能ではないかという気がする。他方、身元が長期にわ
たって判明していないケースで、その方が保護された最初の段階で、
警察がデータベース上誤った情報で検索したために判明が遅れたと
いう話も聞く。是非、データの入力には細心の注意を払うよう、現
場を指導していただきたい」旨の発言があり、審議官(生活安全局
担当)から、「今回の事例を踏まえ、注意深く確認してデータ入力す
るよう、指導してまいりたい。特に、認知症の方については、遠方
の県に行かれ、複数の県警間で情報共有しなければならないことも
あるので、よく留意してまいりたい」旨の説明があった。
 山本委員より、「私は、自分の姓名・住所が言えず、身元が分から
ないという方に関しては、警察が、御本人や周囲の方の同意を得ら
れなくても顔写真などの手掛かりになる情報を公開してよいという
法律的な裏付けを与え、迅速簡便に家族と結びつける工夫をすべき
だと思う。現行の仕組みでは、御本人が意思表示できない場合には
後見人を付けろということになり、その手続に非常に手間が掛かっ
てしまう。警察がやらなければならないことがますます増える中で
は、簡単に、かつ高い効果が出るような対策を工夫する必要がある」
旨の発言があり、長官から、「本人が意思表示できない場合の承諾の
問題は、DNA型鑑定の活用に関しても言えることであるが、工夫
をしてまいりたい。報道で身元判明につながる情報を提供できたの
は、保護している施設関係者等が承諾して行ったのであろうが、そ
うした手法も考えられるであろう」旨の説明があった。
 委員長より、「認知症の患者は確実に増えており、身元判明につな
がる情報をトレースするためのシステムを如何に構築するかが重要
になってくる。特に、DNA型鑑定は、誰の同意を得て行うかとい
う課題はあるが、活用しなければならないと思う。今この位の人数
であるからといって安心してはならず、今後、踏み込んだ対応も必
要となってくるだろう」旨の発言があった。

(3)インターネットバンキングに係る不正送金事犯に関連する不正プ
ログラム等の感染端末の特定及びその駆除について

審議官(生活安全局担当)から、「インターネットバンキングに係
る不正送金事犯に使用されているとみられる不正プログラム『Game
Over Zeus』が世界的に蔓延していることから、米国連邦捜査局(F
BI)及び欧州刑事警察機構が中心となり、我が国警察を含む協力
国の法執行機関が連携し、当該不正プログラムのネットワークを崩
壊させる作戦を決行している」旨の報告があった。
 奥野委員より、「今回の場合、ヨーロッパやアメリカに被害が集中
したわけだが、日本だけに被害があった場合には、必ずしもFBI
は乗り出してこないのではないか。もし、日本の警察だけで対応し
なければならない場合は、同様の作戦を行うことは実際可能なのか」
旨の発言があり、審議官(生活安全局担当)から、「今回FBIが行
った作戦の中には、『Game Over Zeus』に感染した端末にアクセス
して指令を送るような内容が含まれており、果たして我が国の現行
の法制下で、そのような対応が可能なのかということには疑義があ
り、もし行おうとするのであれば、総務省も巻き込んで、法整備も
含めた大掛かりな検討をしなければならないことになると思う」旨
の説明があり、奥野委員より、「そのような課題はあるが、いずれに
しても、サイバー対策は、国際的な連携が必要であり、今回の作戦
は非常に良い事例だと思うので、今後も是非進めていただきたい」
旨の発言があり、審議官(生活安全局担当)から、「このような事例
を積み重ねていって、もっとこの種の対策の必要性が理解されるよ
うになれば、また対応も変わってくると思う」旨、情報通信局長か
ら、「我々は、様々な国際会議に出席するなど、情報収集に努めてお
り、そういった中で得られた情報から、新たな解析手法を開発して
いく必要があると感じている」旨の説明があった。

(4)「死因究明等推進計画」(案)について

刑事局長から、死因究明等の推進に関する法律の規定に基づき、
内閣府に設置された死因究明等推進会議においてこの度取りまとめ
られた「死因究明等推進計画」の案の概要について報告があった。

(5)栃木・茨城にまたがる女子児童殺人死体遺棄事件の検挙について

刑事局長から、「平成17年12月1日、栃木県今市市(現日光市)
において、下校途中の小学1年生の女子児童が行方不明となり、翌
2日、茨城県常陸大宮市内の山林において、同児が遺体で発見され
た事件につき、栃木県警察及び茨城県警察合同捜査本部は、6月3
日、被疑者を殺人罪で通常逮捕した」旨の報告があった。

(6)高齢運転者による交通事故防止に関するアンケートの実施につい

交通局長から、「高齢運転者による交通事故防止対策の重要性が
ますます高まる中、今後の高齢運転者対策の在り方を検討するため、
この度、全国の運転免許試験場等において高齢運転者を対象とした
アンケート調査を実施し、その結果を取りまとめた。今後は、アン
ケートの結果も踏まえ、有識者から成る調査研究委員会を開催する
など、高齢運転者対策の在り方について検討を実施することとして
いる」旨の報告があった。
 長谷川委員より、「今回のアンケート調査結果に限らず、様々な
調査研究の成果物があると思うが、どうもこれらの成果物はばらば
らに存在していて、全体像が把握されていないような印象がある。
以前、関東管区内公安委員会連絡会議において高齢運転者の意識に
関する調査研究結果の講演を聴き、大変興味深く感じたことがある
が、このような様々な研究成果は警察庁が何らかの形で集約すると
良いと思う」旨の発言があり、交通局長から、「道路交通に関する
調査研究は、所管の研究機関で行っているものも含め、数多く存在
している。これらの研究成果は、インターネット上で公表されてい
ることが多く、これまでも収集に努めてきたが、御指摘も踏まえ、
今後とも取り組んでまいりたい」旨の説明があった。
 委員長より、「私の地元も含め、地方では、移動手段がないから、
高齢になっても車を運転せざるを得ないという実態がある。高齢運
転者対策を推進するに当たっては、関係省庁、地方自治体その他の
関係団体、老人クラブなど地域とも連携し、代替手段の確保を始め
とする高齢者の移動手段の充実に関して、パッケージとしての施策
を考えることが大切である。地方でも核家族化は進み、高齢者だけ
の世帯が増えており、高齢化も進行している。是非関係機関と連携
し、議論していただきたい」旨の発言があった。

3 その他

(1)警備局長から、サイバー攻撃事件捜査の状況について報告があっ
た。

(2)前田委員より、「環状交差点については、これまでも委員長から、
その推進について繰り返し御発言があったが、地方視察の際に県の
公安委員と意見交換をしても、まだまだ知られていないと感じる。
環状交差点は、地方の、交通量がそれほど多くない交差点での交通
整理の方法としては悪くないアイデアであり、適した場所はいくら
でもあると思うのだが、お話を聞くと、『海外で経験したことがある
がこりごりだ』などとおっしゃる方もいて、これは本部長を始め各
都道府県警察がよっぽど本気になって地元にメリットを伝えていか
ないといつまで経っても普及しないな、と感じた。やはり、どうし
ても信号機の方が安心だという意識が強いのだろうが、ある県では、
信号無視による交通事故が全国平均の倍もあるとのことで、調べて
みると、ほとんど車の通らない信号交差点で、どうせ車は来ないだ
ろうと慢心して信号無視をして交差点に入り、それでかえって事故
が起こるということもあるそうである。そういった点も含め、研究
した方がよいのではないかと思う」旨の発言があり、交通局長から、
「環状交差点の整備については、知事等に対する戦略的な働き掛け
を行いながら推進するよう、全国警察本部長会議の場において指示
をしたところである。県警察によっては、公安委員にまだ十分な御
説明ができていないところがあるかもしれないが、整備することが
適切な交差点をよく選んで、浸透を図ってまいりたい。また、信号
機の設置を検討するに当たっては、交通量等様々な要素を考慮して
行わないと、かえって信号無視を誘発し、交通事故の危険が生じる
というのは御指摘のとおりである。信号機を設置する場合の考え方
に関しては一応基準を示しているのだが、地元からの設置要望は非
常に多く、各都道府県警察は大変苦労している。いずれにしても、
御指摘の点を踏まえつつ、適切に行われるよう、各都道府県警察を
指導してまいりたい」旨の説明があり、前田委員より、「ひとたび交
通事故が発生すると、大抵の場合、地元から信号機を設置してほし
いという要望が出てくるようなのだが、それに応じていてはきりが
ない。やはり、交通量等を踏まえ、本当に信号機が必要なのかを判
断し、環状交差点の方が事故防止を図れるというのであれば、むし
ろそちらの方に地元を誘導していかなければならない」旨の発言が
あった。
 委員長より、「以前にもお話ししたが、私は各都道府県知事と会う
機会が多く、最近では、重大事故が減少する、右直事故がなくなる、
災害に強い、景観の形成等、環状交差点のメリットを記載した一枚
物の資料を作成して、各知事にアピールをしている。中には、是非
推進したいとおっしゃった知事もいたが、まだまだ浸透していると
は言い難い。各知事には、信号機の設置要望があった場合や、信号
機の老朽化更新やLED化を検討するような場合には、信号機の代
わりに環状交差点を導入することも視野に入れて検討していただく
ようお願いしている。先般全国警察本部長会議で交通局長から指示
していただいたので、少しずつでも定着していくのではないかと期
待している」旨の発言があった。

(3)髙木委員より、「北朝鮮による日本人拉致事件に関して、先般スウ
ェーデンのストックホルムで日朝政府間の協議が行われ、北朝鮮側
が再調査を約束したとのことで、かなり大きな変化があったのだと
思う。取りあえず現段階において、今回の合意をどのように理解し
ておけばよいか」旨の発言があり、委員長より、「北朝鮮側の客観的
な環境が変わってきていること、総理御自身が強い決意を持って取
り組んでおられること、また、国連人権委員会がかなり厳しい報告
書を出したことなど、様々な要因が今回の成果に結びついたものと
思う。ただ、これからが正念場であり、厳しい交渉が行われていく
ので、私も担当大臣として、気を引き締めて、この問題の解決に向
けて取り組んでまいりたい。警察におかれても、つかさつかさでお
力添えをいただかなければならないことが多いと思うので、よろし
くお願いしたい」旨の発言があった。