定例委員会の開催状況


第1 日 時 平成26年7月24日(木)

午前10時00分 午前11時35分


第2 出席者 古屋委員長、長谷川、髙木、山本、前田、奥野各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、
警備局長、情報通信局長
首席監察官


第3 議事の概要

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、「8月1日付けを始めとする地方警務官47名の人事
案件について発令していただきたい」旨の説明があり、原案どおり
決定した。

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官から、「大阪府警察において、不適正な犯罪統計業務
が行われていた事案について、同府警察は、国家公安委員会の了承
が得られれば、監督責任として、地方警務官4名を本部長注意の措
置とする予定である」旨、関連して、刑事局長から、本事案を受け
た今後の再発防止対策について説明があった。
 前田委員より、「今回の事案は、大阪府内の全警察署で誤った統
計処理が行われたもので、関係者が多数に上る一方、組織的に統計
を操作するよう指示したような事実はないということである。今回
のような事案は、統計業務に関してシステムサポートがなされてい
れば起こらないはずのものであるが、システムサポートが既になさ
れている警察署と、なされていない警察署との間で、関係者の処分
に差はあるか」旨の発言があり、刑事局長から、「大阪府警察にお
いては、今回の事案を踏まえ、本年3月から統計業務にシステムサ
ポートを導入したところであり、今回の措置案の対象となる行為は、
システムサポート導入以前のものである」旨、首席監察官から、「し
たがって、システムサポートの有無での差はない」旨の説明があり、
前田委員より、「この種の不適正事案における問題の所在について
は、以前、大阪府警察において証拠物件の管理に関する不適正事案
が発生した際に指摘したことと共通する。当時、私は、非常に多く
の事件を処理しなければならない警察署では、処理すべき事件が
次々と発生し、恒常的に未処理事件を抱えた状態になるものである
が、そういう忙しい現場に証拠物件の保管を任せきりにしておいて、
監察が時々証拠物件の保管状況をチェックするという管理の在り方
が、むしろ不適正事案の原因であり、長期保管しなければならない
証拠物件は本部が一括保管した方がはるかに合理的である、という
ことを指摘し、実際に大阪府警察は証拠物件の管理に関しては本部
が一括保管をするようになった。統計業務についても同じようなこ
とが言え、警察官にとっては、ただでさえ士気の上がらない付随的
な業務であるのに、運用面においてややこしいルールを設けている
わけである。このような業務について、何で決められたとおりやら
ないかと叱り飛ばすのは簡単ではあるが、警察庁としては、むしろ、
今回の事案を踏まえて大阪府警察がシステムサポートを導入したと
いうのであれば、それが全国で導入されるよう指導することの方が
重要である。システムサポートがあれば、警察署長は各捜査員が抱
えている事件の処理状況を一目で把握することができ、不正が組織
的に行われない限り、統計の不適正事案が発生するということはな
い。ただ、ここで注意しなければならないのは、小規模の県警察に
まで大規模の県警察と同様のシステムを導入しても合理化効果は出
ず、逆効果になりかねないので、そのあたりは警察庁が導入すべき
県とそうでない県との線引きをする必要がある。いずれにしても、
統計の精度を維持するために必要なのは、システムサポートである。
人はミスをするものであるし、あまりモラルだけの問題にすべきで
はない」旨の発言があった。
 奥野委員より、「今回の事案は、統計担当者の不正確な理解、運
用が原因だというが、本当にそれだけなのか、という気がする。検
挙率の母数である認知件数を過少に記録することによって、見かけ
の検挙率を上げようという発想が無意識のうちに作用していたとい
うことはなかったのか。犯罪認知件数自体は社会的実態であるから、
認知件数を正直に記録しても警察が困ることは全くないはずなのだ
が」旨の発言があり、次長から、「大阪府は、犯罪認知件数が非常
に多く、重要窃盗犯などの重要犯罪は東京都より多いくらいであり、
罪種別で全国ワーストワンというものが多い。今回の事案が起こっ
たのは、そのような情勢の中、大阪府警察では、何とか犯罪を減ら
していかなければならないという意識を共有していた時期であり、
御指摘のような意識が無意識の中にも全くなかったかと言われれば、
そこは分からない」旨の説明があり、前田委員より、「組織的に統
計を操作したというのであればともかく、そうでないとすれば、む
しろ、不適正な取扱いを誘発しないようにシステムサポートするこ
との方が大切である。精神論だけでやってもモラルは持たない」旨
の発言があった。
 これらの議論を経て、首席監察官から説明のあった措置案につい
て、原案どおり了承した。
 また、本件に関連して、刑事局長から、「6月19日の定例会議
で御決裁を頂いた警察白書のうち、犯罪統計に関する記述について、
今回の事案を踏まえた所要の修正を行いたい」旨の説明があり、そ
の旨を了承した。

(3)「客にダンスをさせる営業に関する風営法の規制の見直しに当たっ
て考えられる論点」に対する意見の募集について

生活安全局長から、「6月24日に閣議決定された規制改革実施計
画において、『客にダンスをさせる営業等に対する規制の在り方につ
いて検討を行い、結論を得ること』とされたことなどを踏まえ、検
討の一環として、見直しに当たって論点として考えられる事項につ
いて、7月25日から8月7日までの間、広く国民から意見を募集
することとしたい」旨の説明があり、原案どおり決定した。

(4)国家公安委員会・警察庁新型インフルエンザ等対応業務継続計画
(案)の策定について

警備局長から、国家公安委員会・警察庁新型インフルエンザ等対
応業務継続計画の案について説明があり、原案どおり決定した。

(5)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答
を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、そ
の内容を了承した。

2 報告事項

(1)「子ども霞が関見学デー」の実施について

官房長から、8月6日に実施予定の「子ども霞が関見学デー」の
概要等について報告があった。

(2)警察庁長官に対する開示請求の決定について(行政機関情報公開
法関係)

官房長から、警察庁長官に対してなされた行政機関情報公開法関
係の開示請求に係る決定について報告があった。

(3)平成26年上半期の懲戒処分者数について

首席監察官から、「平成26年上半期の全国警察職員の懲戒処分
者数は、前年同期と比べ、54人減少の合計139人で、その内訳
は、懲戒免職17人、停職30人、減給62人、戒告30人である」
旨の報告があった。

(4)平成26年度第1四半期監察の実施状況について

首席監察官から、警察庁が都道府県警察に対して行った平成26
年度第1四半期における監察の実施状況について報告があった。

(5)平成27年度警察庁予算概算要求重点項目(案)について

官房長から、平成27年度警察庁予算概算要求重点項目(案)に
ついて報告があった。

(6)監察の取扱い事案について

首席監察官から、1(2)で報告のあった、大阪府警察において
不適正な犯罪統計業務が行われていた事案に関し、「大阪府警察は、
7月30日、警察本部の警視らを警務部長注意等の措置とする予定
である」旨の報告があった。

(7)不正競争防止法違反事件被疑者の検挙について

生活安全局長から、「警視庁は、通信教育等を事業とする大手企
業から同社のデータベースシステムへのアクセス権限を付与された
委託業者の従業員が、不正の利益を得る目的で、その営業秘密の管
理に係る任務に背いて同社のコンピューターシステムにアクセスし、
営業秘密として管理されていた同社の顧客情報を領得したとして、
7月17日、同人を不正競争防止法違反(営業秘密の領得)の罪で
逮捕した」旨の報告があった。
 奥野委員より、「一義的には、情報を盗み出した被疑者と情報を
適正に管理すべき被害企業の問題だが、いわゆる名簿業者の介在も
見過ごせないと思う。名簿業者の背後には、名簿を欲しがる企業が
あり、入手した情報をこうした企業に転売して利益を得られるから
名簿業者というものが存在するが、現行法上、ほとんど規制の網が
掛かっていないのが実態のようである。オプトアウト制度により、
本人の求めに応じて情報提供を停止することができるとされている
が、普通の人にとって、業者が自分の個人情報を保有しているかど
うかは分からないから、この制度はほとんど意味がない。このよう
な課題を踏まえ、個人情報保護法の改正が検討されているようだが、
罰則を設けることも含め、是非本格的に名簿業者の規制を検討して
いただきたい」旨の発言があり、生活安全局長から、「御指摘の点
については、政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部に
設置された『パーソナルデータに関する検討会』が本年6月24日
に決定した『パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱』に
おいて指摘されている。個人情報の第三者提供を行う事業者は、オ
プトアウト制度により、申し出があれば当該申出人に関する情報の
第三者提供を停止することとされてはいるものの、個人にとっては
どの業者が自分の情報を持っているか分からないことが多く、当該
申し出を行うのは事実上困難である、という問題意識の下、オプト
アウト制度を有効に機能させるための仕組づくりが検討されている。
具体的には、個人情報の第三者提供を行う事業者に対して、新たに
設ける第三者機関に対して一定の事項を届け出ることを義務付けて、
公表することは示されているが、個人がオプトアウトしやすくする
ための環境整備の方策についてはさらに検討とされている。検討に
当たって、警察庁にも協力を要請されており、必要な協力をしてい
る」旨の説明があった。
 髙木委員より、「名簿業者は、入手した情報をかなりの数の企業
に転売したと言われており、被疑者に報酬を支払ったとしても、か
なり利益を得たのではないか」旨の発言があり、生活安全局長から、
「事案の全体像については今後の捜査の中で解明することとなるが、
個人情報保護法の影響もあって、名簿が入手しにくくなり、事業者
間で名簿の価値が上がっているという背景はあると思う」旨の説明
があり、奥野委員より、「盗み出した情報を売って利益を得た被疑
者は逮捕されたが、情報を転売してそれ以上に利益を得た者は処罰
されないのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「情報を盗み
出した被疑者から情報提供を受けた者が、その情報が盗み出された
秘密の情報であることを認識していれば、当該情報提供を受けた者
にも不正競争防止法の罰則が適用されるが、出所を明らかにされな
いで情報の提供を受けたに留まる場合には、秘密の情報だという認
識がないので、罰則は適用されないこととなる」旨の説明があった。

(8)警察における取調べの録音・録画の試行の実施状況について

刑事局長から、平成25年度の警察における取調べの録音・録画
の試行の実施状況について報告があった。

(9)危険ドラッグの乱用根絶のための政府の緊急対策について

刑事局長から、いわゆる「脱法ドラッグ」対策に関し、7月18
日に開催された薬物乱用対策推進会議において策定された緊急対策
の概要、今後の警察の取組及び「脱法ドラッグ」に代わる新たな呼
称として「危険ドラッグ」が選定されたことについて報告があった。

(10)女子児童被害に係る監禁事件の検挙について

刑事局長から、「岡山県警察は、7月14日、倉敷市における女子
児童の行方不明事案を認知し、公開手配するとともに、所要の捜査
を推進した結果、19日、岡山市北区内において被害者を発見、保
護するとともに、被疑者を監禁罪で現行犯逮捕した」旨の報告があ
った。
 奥野委員より、「本件は、被疑車両のナンバープレート等の捜査か
ら事件解決につながった。また、今回は、被害者がGPS機能付き
の携帯電話を持っていたことから、行方を追跡できたということだ
が、警察は電気通信事業者から位置情報の提供を受けることはでき
るのか」旨の発言があり、刑事局長から、「電気通信事業者に対して
は、協力依頼を行っている」旨の説明があり、奥野委員より、「認知
症に係る行方不明者の追跡にも活用できるのではないか」旨の発言
があった。

(11)「第49回交通安全子供自転車全国大会」の開催について

交通局長から、8月6日に東京都内において開催される「第49
回交通安全子供自転車全国大会」の概要、及び関連して、小学生の
自転車乗車中の交通事故の発生状況等について報告があった。

(12)皇太子御一家の神宮御参拝に伴う警衛警備について

警備局長から、「皇太子御一家は、7月28日から7月29日ま
での間、神宮御参拝のため、三重県へ行啓になる予定であり、これ
に伴い、所要の警衛警備を実施する」旨の報告があった。

(13)皇太子同妃両殿下の平成26年度全国高等学校総合体育大会御臨
場に伴う警衛警備について

警備局長から、「皇太子同妃両殿下は、8月1日、3日及び8日
の3日間、平成26年度全国高等学校総合体育大会御臨場のため、
東京都内に行啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛警備を
実施する」旨の報告があった。

(14)安倍内閣総理大臣のメキシコ合衆国、トリニダード・トバゴ共和
国、コロンビア共和国、チリ共和国及びブラジル連邦共和国歴訪に
伴う警護警備について

警備局長から、「安倍内閣総理大臣は、7月25日から8月4日ま
での間、各国首脳との会談等のため、メキシコ合衆国、トリニダー
ド・トバゴ共和国、コロンビア共和国、チリ共和国及びブラジル連
邦共和国を歴訪予定であり、これに伴い、所要の警護警備を実施す
る」旨の報告があった。

3 その他

(1)生活安全局長から、ストーカー行為等の規制等の在り方に関し、
昨年11月以降、有識者や被害者関係者等から成る「ストーカー行
為等の規制等の在り方に関する有識者検討会」において検討され、
この度取りまとめられることとなった報告書の案の概要等について
報告があった。
 山本委員より、「被害者が再被害に遭わないようにすることが大事
な課題であり、そのためには警察による保護対策の充実が必要では
あるが、今後、更に多くの被害者が出てくる可能性を踏まえると、
警察の力の及ぶ範囲は当然限られたものになろう。そうすると、被
害者には自分の身は自分で守るという意識を強く持ってもらうこと
が大切になるが、そのためには、加害者の動向について、ある程度
被害者に伝えてあげることが必要である。今回の報告書案には、そ
うした観点からの記述があまりないようなので、加害者に関する情
報収集の在り方、被害者への伝え方について、もう少し検討を加え
ていただきたい」旨の発言があり、生活安全局長から、「報告書案中、
『加害者対策の在り方』の項において、委員御指摘の問題意識につ
いて触れられている。プライバシーへの配慮等、様々な制約を考慮
して一般的な記載ぶりになっているものであるが、御指摘の趣旨を
踏まえ、関係省庁とよく連携して検討してまいりたい」旨の説明が
あった。
 髙木委員より、「報告にあった、『常習累犯規定については、刑法
の再犯加重規定との関係、ストーカー行為自体が行為の反復を予定
していること等を踏まえれば、慎重な議論が必要である』というこ
とについて、もう少し詳しく説明してほしい」旨の発言があり、生
活安全局長から、「ストーカー行為というものが、反復継続してつ
きまとうという、そもそも内在的に反復継続性があるということ、
刑法には、同じ行為を同じ対象に再度行った場合の再犯加重規定が
元々あって、実質的にはこれにより対応できることなどから、改め
て常習累犯規定を置くことになじまない、あるいは必要ない、とい
う議論に収斂したものである」旨の説明があった。