定例委員会の開催状況

第1 日 時 平成26年12月18日(木)

午前10時00分午前11時10分

第2 出席者 山谷委員長、長谷川、山本、前田、奥野各委員

長官、次長、官房長、生活安全局長、刑事局長、交通局長、警備局長、情報通信局長

首席監察官

国家公安委員会会務官

第3 議事の概要

1 議題事項

(1)国家公安委員会委員長に対する開示請求の決定について(行政機関情報公開法関係)(決裁事項)

国家公安委員会会務官から、国家公安委員会委員長に対してなされた行政機関情報公開法関係の開示請求に係る決定の案について説明があり、原案どおり決定した。

(2)監察の取扱い事案について(了承事項)

首席監察官から、「大阪府警察の警部補が、女性職員に対して強制わいせつをしたとして、11月29日に通常逮捕された事案に関する監督責任として、同府警察は、国家公安委員会の了承が得られれば、地方警務官の警視正を本部長注意の措置とする予定である」旨の説明があり、原案どおり了承した。

山本委員より、「セクハラ被害を受けた職員は、然るべきところに申告することが義務であるという意識を組織に浸透させるとともに、申告を受けた組織の側は、目に見える形できちんと対応するということ以外に、セクハラを根絶する手段はないのではないか。今はまだそのような意識が足りず、被害を受けても仕返しなどを恐れてなかなか申告できないという実情があるのだと思う。セクハラ被害を受けた人は自分だけの問題と考えて泣き寝入りしないで、みんなのためにも申告しなければならないという意識が広がるよう、是非努めていただきたい」旨の発言があった。

(3)「銃砲刀剣類所持等取締法施行令の一部を改正する政令案」について(決裁事項)

生活安全局長から、本邦に上陸しようとする者の所持する銃砲又は刀剣類を仮領置しないでも危険がないと認められる場合として、入管法の改正により新設された船舶観光上陸を加えることを内容とする「銃砲刀剣類所持等取締法施行令の一部を改正する政令」の案及び11月14日から12月13日までの間に実施した意見公募手続の結果について説明があり、原案どおり決定した。

 (4)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について(了承事項)

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

2 報告事項

(1)警察庁長官に対する開示請求の決定について(行政機関情報公開法関係)

官房長から、警察庁長官に対してなされた行政機関情報公開法関係の開示請求に係る決定について報告があった。

 (2)「警察庁における女性職員の活躍と全職員のワークライフバランス推進のための取組計画」の策定について

官房長から、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」において、各府省庁が本年末を目途に取組計画を策定することとされたことを踏まえ、この度策定した「警察庁における女性職員の活躍と全職員のワークライフバランス推進のための取組計画」について報告があった。

山本委員より、「これまでも現場の意見が然るべきところにきちんと上がるような仕組みづくりをお願いしてきたが、この女性活躍の施策に関しても、女性が意見を言うのが難しい現実もまだまだあるのではないかと思うので、この施策の決定権のあるところには女性を配置するなど、女性職員が意見を言いやすい環境を整えるよう工夫しながら効果的に進めていただきたい」旨の発言があり、官房長から、「御指摘のような視点が必要だと考えており、この計画の取りまとめに当たっては、女性職員をメンバーに加え、意見を吸い上げてきたところである。また、総務課の警察行政運営企画室長には、現在女性が就いており、女性・男性問わず現場の声を吸い上げられるネットワークづくりをしている。やはり現場の職員が変化を実感できなければ、この施策を進める意味がないと思うので、今後とも実のある対策を行ってまいりたい」旨の説明があった。

長谷川委員より、「これまでは全員がフルに残業もして、馬車馬のように働くことによって仕事のレベルを保っていたが、これからは、いかに仕事のレベルは落とさずに、100%仕事人間ではない、ワークライフバランスのとれた働き方を組み合わせていくかを考えていかなければならない。子育ての苦労をしながら仕事をしている現場の人たちが本当はどう考えているのかをくみ取りつつ、今まで当たり前と思われてきたことが当たり前でなくなるように、これまでにはなかった柔軟な発想を持って取り組んでいくことが大切である」旨の発言があった。

奥野委員より、「女性活躍とワークライフバランスは政府全体の取組みであるから進めていかなければならないが、警察の業務は、他の省庁とは異なる特殊性があり、特殊だからこそ女性が必要な分野もあるけれども、必ずしも他省庁と同じような比率で女性を配置できない部分もあると思う。数値目標の達成にこだわるあまり、人員配置に無理が出て業務に支障を及ぼすようなことがあってはならず、そこはある程度弾力的に考えた方がいいと思う」旨の発言があった。

委員長より、「先日、有村女性活躍担当大臣とともに、警視庁の女性警察官と懇談をする機会があった。事件事故に対応しなければならない警察という職場の中で、皆さん、覚悟の上で入っているという基本的な姿勢を持ちつつ、育児休業制度や転勤などではずいぶん配慮していただいているというお話しであり、意欲的に仕事に取り組んでいるという印象を持った。転勤や育児など、考えなければならないことが非常に多く、大変だとは思うが、更に多様で柔軟な職場環境づくりを進め、女性を伸ばしていただきたい」旨の発言があった。

長官から、「働き方を多様にするというのは、職員みんなが家庭のことは専業主婦の奥さんに任せきりにして24時間対応でフルに働いていた日本の組織が経験したことのないパターンである。そうすると、評価等の面で、これまではなかった職員間の不公平感や不満などが出てくることもあろうかと思う。これをどうやって出さないように組織を運営していくかというのはなかなか難しいことではあるが、この方向で進めていくことにしたからには、それを覚悟してやっていかなければならない」旨の説明があった。

(3)第2回日越治安当局次官級協議の開催結果について

官房長及び次長から、12月12日に警察庁において実施した第2回日越治安当局次官級協議の開催結果について報告があった。

(4)監察の取扱い事案について

首席監察官から、1(2)で報告のあった、大阪府警察の警部補による強制わいせつ事案に関し、「同府警察は、12月19日、同警部補を懲戒免職処分とするとともに、監督責任として上司の警視らを本部長注意の措置とする予定である旨、「福岡県警察の巡査部長が、強制わいせつをしたとして、10月15日、通常逮捕された事案等に関し、同県警察は、12月18日、同巡査部長を懲戒免職処分とする予定である」旨及び「京都府警察の巡査部長が、11月5日、窃盗で通常逮捕された事案に関し、同府警察は、12月18日、同巡査部長を懲戒免職処分とする予定である」旨の報告があった。

(5)金融機関の防犯基準の改正について

生活安全局長から、特殊詐欺やインターネットバンキングに係る不正送金事犯の被害防止対策の更なる推進を図るための「金融機関の防犯基準」の改正について報告があった。

(6)鳥インフルエンザへの対応状況について

生活安全局長から、12月15日に宮崎県内において確認された鳥インフルエンザへの対応状況について報告があった。

(7)指名手配被疑者捜査強化月間の実施結果について

刑事局長から、11月に実施した指名手配被疑者捜査強化月間における検挙状況等について報告があった。

(8)犯罪による収益の移転の危険性の程度に関する評価書について

刑事局長から、金融庁等関係省庁と協力してこの度取りまとめた「犯罪による収益の移転の危険性の程度に関する評価書」について報告があった。

 (9)天皇誕生日一般参賀及び新年一般参賀に伴う警備について

警備局長から、「12月23日に天皇誕生日一般参賀が、平成27年1月2日に新年一般参賀が、それぞれ皇居において行われる予定であり、皇宮警察及び警視庁において所要の警備を実施する」旨の報告があった。

 3 その他

 (1)山本委員より、「最近の新聞で、客観証拠の偽造に関する報道が2件立て続けになされていた。ひとつは、長野県の警察署で昨年発生した飲酒運転取締りの証拠となる飲酒検知管の偽造事案に関し、当時の交通課長らに有罪判決が言い渡されたという件、もうひとつは、埼玉県警察の捜査員が窃盗事件の証拠となる足跡資料を変造したという件である。刑事司法手続は、客観証拠が偽造されたり変造されたりすることはあり得ないということが前提に成り立っており、仮にそういうことがあったとしても極めてまれなことであるという意識を持っていたが、こう短期間に立て続けに出てくると、そうも言っていられないのではないかと思えてくる。警察庁としても、当然そのようなことはあってはならないという認識でおられると思うが、現に起きており、しかも、長野県警察の事案では、裁判所が偽造された飲酒検知管を証拠として認定して有罪にしたことでもあるので、是非原因を究明し、再発を防ぐために強く対応していただきたい」旨の発言があり、刑事局長から、「我々も同じ認識でいる。本当に信頼に関わることであり、そのような事案をなくすための取組を強化してまいりたい」旨の説明があった。

奥野委員より、「司法制度改革により供述証拠に頼れなくなってくると客観証拠がますます重要になってくるが、その客観証拠も弱いとなったときに、手を加えようという誘惑にかられる捜査官が出てくるおそれは十分にあるのではないか。警察から証拠が提出されれば、検察はそれを信用するしかないし、裁判所も同様だとすると、警察内部のチェック機能をしっかり働かせなければならない。特に重要なのは警部補や警部クラスの中間管理職によるチェックであり、しっかり再教育をすることよりほかにないのではないかと思う」旨の発言があり、刑事局長から、「チェック機能も重要であるが、限界があるので、そもそも、現場で証拠を収集して、証拠化する捜査員の意識が重要であり、チェックする幹部と現場の捜査員と、二段構えでの教育をやっていかなければならないと考える。また、かねて推進している、ミスをした場合のリカバリーの教養も重要であり、これらを合わせて推進してまいりたい」旨の説明があった。

長谷川委員より、「同じようなことは科学研究でもあり、研究者ひとりひとりは善意で研究を行っており、不正はあり得ないということが大前提でこの世界は成り立っているから、論文を査読する人が何人いても不正を見抜けないということが起こり得る。ただ、科学研究の世界では、研究の内容がすぐにオープンになり、全世界の研究者が再現実験をしたりしてチェックをするから、すぐに不正は発覚する。警察の場合は、証拠を全部オープンにして第三者がチェックをするというわけにはいかないから、やはり内部でのチェック機能が重要であろう。ただ、チェックをしても見抜けないこともあるので、やはり不正をさせないような教育が必要であるし、誘発しないような職場の雰囲気づくりが大切である」旨の発言があった。

奥野委員より、「警察官は、証拠を偽造するほどまでに上司のプレッシャーに追い詰められているのか。それとも、警察官としての倫理観が低下しているという背景があるのか」旨の発言があり、次長から、「この種の事案の大半は、何とか有罪を勝ち取ろうとして追い詰められて、という次元のものではなく、何でそんなつまらないことで、と皆が思うようなものである。今回の埼玉県警察の事案でも、当該職員は、足跡痕が薄かったので、濃くしなければならないと思ったという。証拠の前には絶対にひれ伏さなければならないという教育がまだまだ必要だと感じている」旨、長官から、「書類の改ざんも含めて、この種の事案が多く、実質的に何かを改ざんしてやろうというよりも、ちょっと文字や指印を書き忘れたりもらい忘れたりしたということで、書類を整えるためにするようなものが多い」旨の説明があった。

前田委員より、「それは警察に完璧主義が横行し、人間はミスをするものだということを認めたくない土壌があるからである。この種の事案の大半は、ミスをしたことを上司にとがめられたくなかったということが動機となっている。そこをどう考えるかが大切であり、管理を強化したから良くなるというものではないし、屋上屋を重ねるだけのことになったらそれこそ最悪である。年間100万件もの窃盗事件が起こっている中で、管理を徹底するというのも現実的ではない。そこはむしろ、現場の警察官ひとりひとりを如何に強く育成するかを徹底させた方がよい。何のためにその事務があるのかという基本の部分を壊してしまってはどうしようもなく、自分できちんと判断できるよう、警察官を育成しなければならない」旨の発言があった。