定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 平成28年6月9日(木)

午前10時00分 〜 午前11時20分

 

 

第2 出席者 河野委員長、長谷川、奥野、川本、北島、木村各委員

金長官、坂口次長、栗生官房長、種谷生活安全局長、

三浦刑事局長、井上交通局長、沖田警備局長

塚原技術審議官

 

 

第3 議事の概要

 

1 議題事項

(1)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

2 報告事項

(1)沖縄県における犯罪抑止に関する対策について

官房長から、政府の「沖縄県における犯罪抑止対策推進チーム」においてとりまとめられた、沖縄県における犯罪抑止に関する対策について報告があった。

奥野委員より、「元々、沖縄県警察では、警察官1人当たりの人口負担率を考えると、米軍基地対策として多めに配置されているものではないのか」旨の発言があり、官房長から、「沖縄県警察の人口負担率は540人台である。時々の治安課題に応じ増員されているが、他県に比べて多く配置されているというわけではない」旨の説明があり、奥野委員より、「尖閣諸島の警備では全国から応援を得ていたが、今回の犯罪抑止では、恒常的な警戒等が必要ということで警察官を増員するのか」旨の発言があり、長官から、「そのとおりである。ただし、100人増員したときに、一度に採用を100人増加させることは困難なことから、暫定措置として他の都道府県警察から出向させ、徐々に沖縄県警察の採用を多くしていくというプロセスもあり得る」旨の説明があった。

北島委員より、「今回とりまとめられた対策は非常によいものだと思うが、米軍関係者による死体遺棄事件の後も飲酒事故を起こすなどしており、米国側にもしっかりと対応してもらわなければならない問題である」旨の発言があった。

長谷川委員より、「今回の対策は、米軍関係者による犯罪を抑止することなのか。その場合には、米軍関係の犯罪の特徴を考えなければならないと思うが、米軍関係者は性犯罪関係が多いようだがどうか」旨の発言があり、官房長から、「今回の対策は、契機は米軍関係者の犯罪であるが、ターゲットは沖縄県における全体的な犯罪の抑止である」旨、刑事局長から、「米軍関係者による犯罪の発生状況は年によって変動が大きく、その特徴を一概に申し上げるのは困難であるが、被疑者率で見ると一般的に強盗については高い傾向にあり、その他窃盗等については低い傾向にあると言えるかと思う」旨の説明があった。

 

(2)監察の取扱い事案について

官房長から、5月11日、宮城県警察の警部補が飲酒運転の上、交通事故を起こした事案に関し、6月10日、同警察は、同警部補を免職処分とする予定である旨の報告があった。

 

(3)北海道における行方不明男児の発見について

生活安全局長から、5月28日、北海道の山中に置き去りにされた男児が行方不明になり、捜索の結果、6月3日、同児が発見された旨の報告があった。

奥野委員より、「警察の捜索活動において反省点はあるのか。警察犬が全く機能しなかったとの話もあるが、警察犬が機能していればもう少し早く発見できたのではないか」旨の発言があり、生活安全局長から、「捜索活動にあたっては、各機関の連携や情報交換が重要であるが、今回、特に大きな問題があったとは聞いていない。また、初日に警察犬を出動させたが、森林の中で様々な現場条件により、その能力を発揮することが難しかったようである」旨の説明があった。

 

(4)指定暴力団六代目山口組三代目弘道会傘下組織組員による殺人事件の検挙について

刑事局長から、5月31日、岡山県岡山市において発生した、指定暴力団神戸山口組池田組幹部に対する銃器使用殺人事件について、6月5日、岡山県警察は、指定暴力団六代目山口組三代目弘道会傘下組織組員を殺人罪等で通常逮捕した旨の報告があった。

 

(5)皇太子殿下の第27回全国「みどりの愛護」のつどい御臨席等に伴う警衛警備について

警備局長から、6月12日、第27回全国「みどりの愛護」のつどい御臨席等のため、皇太子殿下が千葉県へ行啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛警備を実施する旨の報告があった。

 

3 その他

(1)委員長から、6月2日から3日までの間、世界経済フォーラムASEANに出席するためにマレーシア・クアラルンプールに出張した結果について報告があった。

 

(2)交通局長から、長野県軽井沢町における大型貸切バス転落事故の発生を受けた長野県警察、国土交通省及び消費者庁の取組について報告があった。

木村委員より、「国土交通省と連携して様々な対策を検討しているが、法律の改正は時間がかかることから、次の事故が発生する前に、実行できることから速やかに着手していただきたい」旨の発言があった。

川本委員より、「本件の対策については、規制の影響を考慮してどのような市場設計をするのかが問題となるが、これをマーケットとの関係が少ない国土交通省や警察庁の職員が担当していることから、どの部分の規制やチェックを念入りにすると効果があるのか知見が少ないのではないかと懸念している。広い視野を持って、しっかりと検討していただきたい。また、以前報告いただいた、交通事故死者数を2,500人以下とする目標についてどのような対策をもって達成しようと考えているのかについても、近々報告していただきたい」旨、委員長より、「政府のIT戦略本部の関係閣僚会議においても、目標を達成するために、自動走行の実現期待時期を前倒ししてもらったりしている。前回は3,000人以下とする目標を掲げていたものの達成できなかったが、当初はどのような対策を考えていたのか、達成できなかったのはなぜかなどについてレビューすることと、今回も目標に対して何をどのようにするのかということを議論した上で、今回の目標達成のための戦略をしっかりと作っていただきたい」旨、木村委員より、「規制を緩和して業者の参入障壁を低くすると、コスト競争、品質競争によりよいものが作られるが、一方で安全面などにおいて様々な問題点が生じることから、国土交通省と連携して、それらをうまく解消するよう検討していただきたい。また、そのようなことを地道に積み重ねることで2,500人以下という目標が達成されるものと思うが、まずは目標達成のための対策のたたき台を示していただき、委員会で議論していきたい」旨の発言があった。

 

(3)警備局長から、6月5日に予定されていた川崎市内等におけるデモの結果について報告があった。

委員長より、「ヘイトスピーチ法が公布・施行された直後の5日、川崎市でヘイトスピーチのデモが予定されていた。同法の成立を踏まえて、川崎市は事前に会場として予定された公園の使用を許可しなかった。また、これとは別に、横浜地裁川崎支部は、一定地区でのヘイトスピーチを禁止する仮処分を出した。このような中で、警察が道路使用許可や公安条例をどのように取り扱うか注目されている。今回のデモは出発直後に中止されたが、これからもこのような許可申請は出てくると思う。ヘイトスピーチを許さないと言っておきながら道路使用許可を出すのは如何なものかとの意見もある。委員各位の御意見を伺いたい。」旨の発言があった。

北島委員より、「先週末に開催されたデモは、いわゆるヘイトスピーチ対策法の施行後、初めての開催であったが、デモの状況を見ると法施行の効果はあったのではないかと思われる。今後もデモは開催されるだろうが、警察庁からこの種のデモに対する厳正な対応等を通達しているように、従来どおりの対応で十分ではないか」旨の発言があった。

川本委員より、「ヘイトスピーチ対策法と道路使用許可は観点を異にするが、道路使用許可は事前規制になるので慎重に対応すべきである。また、そもそも、デモの内容が差別的表現か否かの判断は国家ではできないという意見もある。この問題は、ヘイトスピーチで被害を受ける人の人権の保護と警察権との兼ね合いになる。一方で、差別的表現の判断を行うことなく、不許可によって侵害される自由がないのであれば不許可にしてもよいという立場の意見もある」旨の発言があり、警備局長から、「公安条例は、公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合の外は許可しなければならないとしており、表現しようとしている主張の内容そのものによって不許可とすることはできないと解されている」旨の説明があった。

木村委員より、「ヘイトスピーチの問題の観点からすると、いずれは公安条例のあり方の議論にも影響してくる話であろう。一方、今回の川崎市の判断と神奈川県公安委員会の判断とが矛盾しているように思われるが、事前に調整の余地はなかったのであろうか」旨、奥野委員より、「神奈川県公安委員会の判断は妥当だと思う。現行法では今の対応しかできないので、今後の世論の方向性によっては、公安条例の在り方にも議論が及ぶのではないか。また、公園使用の不許可と公安条例の許可の違いが判りにくいことから、一般市民に警察の対応が理解されていないものと思われる」旨、川本委員より、「ヘイトスピーチを行うデモの申請を不許可とし、行政事件訴訟に発展した場合、司法判断はどのようなものとなるのか」旨の発言があり、警備局長から、「公安条例について、過去、最高裁が、その合憲性を認めるに当たって、許可が義務付けられており、不許可の場合が厳格に制限されているので、この許可制は実質において届出制と異なるところがないなどと判示していることを踏まえれば、表現しようとしている主張の内容によって不許可とすることはできないと解される。また、川崎市都市公園条例に基づく川崎市長による判断と、県の公安条例に基づく県公安委員会の判断は直接関係しないと考えられる」旨の説明があり、委員長より、「仮に現行の公安条例で不許可として、訴訟が提起された場合、不許可要件に当てはまらないのに不許可としたことで敗訴となる可能性もあり、ヘイトスピーチの内容を司法の場で判断するまでに至らないのではないか」旨の発言があった。

川本委員より、「条例でヘイトスピーチ規制を導入し、それに基づいてデモ申請を不許可とすることは、憲法との関係で問題があるだろうか」旨、長谷川委員より、「条例でヘイトスピーチ規制を導入する場合にも、ヘイトスピーチ法を踏まえる必要があるのか。また、裁判所の仮処分決定に反してヘイトスピーチを行うとどうなるのか」旨の発言があり、警備局長から、「条例の在り方については、各地方公共団体が判断すべき事柄であるが、一般論として申し上げると、条例は国の法令に違反することはできないこととされており、ヘイトスピーチ法がヘイトスピーチ自体に直接のサンクションを科さない仕組みとなっていることをどのように評価するかが一つの論点になると思われる」旨、官房長から、「命令に違反した場合に制裁金を支払う旨の裁判所の仮処分決定に違反した場合には制裁金を課されるが、ヘイトスピーチを止めさせるなどの直接強制はできないものと考える」旨の説明があった。

木村委員より、「現行の公安条例でも、暴徒化するおそれがある場合には不許可事由になるのではないか」旨の発言があり、警備局長から、「かつての極左暴力集団による取組にみられたような、デモを実施する側の参加者が暴徒化する場合には「直接危険を及ぼすと明らかに認められる」場合に該当し得るため公安条例で規制し得るが、デモ・集会を実施する側ではなく、その目的や主催者の表現内容に反対する側が、これを実力で阻止しようとして暴徒化する場合にまで不許可とすることは、現行の公安条例では困難と考えられる」旨の説明があり、木村委員より、「条例に規制を委ねるのではなく、法律で直接規制をすることは困難なのか」旨の発言があり、警備局長から、「国会で議論されるべき事柄であるが、ヘイトスピーチ自体の禁止規定については、今回のヘイトスピーチ法に係る国会審議の過程で様々な議論を経た上で結果的に設けられなかったという経緯があり、そのことを踏まえる必要があるのではないか」旨の説明があった。