定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 平成28年8月25日(木)

午前10時00分 〜 午前11時30分

 

 

第2 出席者 松本委員長、長谷川、奥野、川本、北島、木村各委員

坂口長官、栗生次長、種谷生活安全局長、吉田刑事局長、井上交通局長、沖田警備局長、川邉情報通信局長

斉藤総括審議官、徳永審議官(国際・調整担当)、古谷首席監察官、藤本人事課長

 

 

第3 議事の概要

 

1 議題事項

(1)人事案件について

人事課長から、8月29日付けを始めとする地方警務官24名の人事案件について説明があり、原案どおり決定した。

 

(2)児童の性的搾取等に係る対策の基本計画の骨子(案)等について

生活安全局長から、警察庁がとりまとめた「児童の性的搾取等に係る対策の基本計画」の骨子(案)及びオンラインの児童の性的搾取対策を推進する国際的枠組みである「オンラインの児童性的搾取撲滅のためのWePROTECT世界連携」への参画について説明があり、原案どおり決定した。

北島委員より、「本年度から、警察庁が政府全体の総合調整をしていることから、立派な基本計画が策定されるよう頑張っていただきたい」旨の発言があった。

奥野委員より、「基本計画の骨子案は結構な内容だと思う。「本骨子事項に対する考え方」の中に、被害児童が低年齢だったり、加害者との関係性等を知られたくないという意識が働いたりして、「被害が潜在化する蓋然性が高い」とあるように、この種の事案は、被害児童が相談、申告することが難しい性質のものであるため、相談等をしやすい環境を整備することが第一である。本計画は警察庁が主体となって進めるが、他省庁とも緊密に連携しながら、速やかに相談窓口の体制整備を進めていただきたい」旨の発言があり、生活安全局長から、「警察に相談に行くのは敷居が高いということで、法務省の人権関係の機関、市町村、ボランティア団体等にも窓口を作ってほしいという声もあるので、そのような意見も反映させていきたいと思う」旨の説明があった。

 

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

2 報告事項

(1)リオデジャネイロ・オリンピック競技大会の結果について

総括審議官から、リオデジャネイロ・オリンピック競技大会における警察関係参加選手の競技結果について報告があった。

 

(2)平成29年度警察庁予算概算要求(案)の概要について

総括審議官から、平成29年度警察庁予算概算要求(案)の概要について報告があった。

 

(3)国家公安委員会委員のオーストラリア連邦・ニュージーランド視察について

総括審議官から、長谷川国会公安委員会委員のオーストラリア連邦・ニュージーランド視察について報告があった。

長谷川委員より、「国際テロ対策、地震を始めとする災害への取組のほか、私の希望で、政策的な決定、エビデンスに基づいてどう評価しているかなどの説明を受けてきた。とても興味深く、勉強になったので、詳細については、折々報告したいと思う」旨の発言があった。

川本委員より、「今回の視察結果については、改めて機会を設けて、公安委員会の場で長谷川委員から聞かせていただくのがよいのではないか」旨の発言があり、次長から、「長谷川委員と相談の上、対応することとしたい」旨の説明があった。

 

(4)「警察庁サイバー人材確保・育成計画」の策定について

審議官(国際・調整担当)から、政府の「サイバーセキュリティ人材育成総合強化方針」に基づき警察庁が策定する「警察庁サイバー人材確保・育成計画」について報告があった。

奥野委員より、「本計画で警察の取組方針が示されているが、警察がサイバー対策に求める人材は、サイバーセキュリティ、サイバー犯罪捜査等における極めて高度な技術を要する上、システムを内製化する部分も多く、他省庁と比べても特にレベルが高い人材を確保しなければならないと考える。このためには、情報通信部門の職員の採用、人事配置、運用等にこれまで以上の工夫が必要ではないか。民間企業からの中途採用も含めて、従来の管区単位を主体とする採用形態の見直し、大学、高等専門学校等教育機関等人材供給側への積極的な働きかけを考えてもらいたい」旨の発言があり、情報通信局長から、「非常に高いテクニックや高いスキルを持つ者はなかなか素質というのが見抜けない面もあるため、全国的に幅広く、積極的な取組をしてまいりたい。その中で我々が重視しているのは、ハッカー的な人を作るためには、人生のある時期に、非常に没頭することが必要であるという点であるが、これはスポーツにおけるゴールデンエイジと同じようなことがサイバー分野にもあるということです。そのため、若い層に対しても、警察にもサイバー人材の需要があるのだということを浸透させたい具体的には、ちょうどゴールデンエイジの時代に当たる高等専門学校生を中心として、出張講演を始めとした活動に力をいれているところであり、今後とも、努力してまいりたい」旨の説明があった。

北島委員より、「警察は、サイバー空間における国民の安全と安心を確保するという観点から、この種の人材確保は非常に大事である。策定する計画は立派なものだと思うので、本計画の実現に対して期待感を表明しておきたい」旨の発言があった。

 

(5)監察の取扱い事案

首席監察官から、8月9日、神奈川県警察の巡査部長が証拠偽造・偽造証拠使用及び地方公務員法違反で書類送致された事案に関し、8月25日、同県警察は、同巡査部長を免職処分とする予定である旨、並びに大分県警察の警視らが承諾を受けずに他人の敷地内に侵入した事案に関し、8月26日、同県警察は、同警視らを減給処分等とする予定である旨の報告があった。

木村委員より、「本日の事案はいずれも業務上のものであるが、依然として、私行上の事案が続いている。警察と似ている行政機関の公務員の実態を調べ、比較した上で問題点や対策を考えてはどうか。警察官は国民の信頼を得なければならない立場にあり、また、内部のモチベーションにも影響することから、非違事案を限りなくゼロに近づける努力をしてほしい」旨の発言があり、首席監察官から、「他の種類の公務員との比較において、必ずしも警察職員の懲戒処分者率が高いというわけではない。詳細に発表されていないところもあるが、他省庁の状況も参考にしてまいりたい」旨の説明があった。

奥野委員より、「今回、大分県警察の事案が発覚した後、県警は直ちに非を認め、県民に謝罪した判断は適切だったと思う。ただし、この謝罪は、私有地に立ち入った「建造物侵入」に対するものなのか、カメラを設置した「不適切な捜査」に対するものか、どちらか」旨の発言があり、刑事局長から、「この謝罪は、発覚直後に行われたものであり、その時点で外形的に明らかであった警察官が私有地に立ち入ったという事実についての謝罪である認識している。もっとも、その後の警察本部による調査・捜査の過程で、事実関係についてしっかり調査をしたところ、撮影の必要性及び相当性の認められない不適正な捜査であるとの結論となったと認識している。もちろん、一般論としては、カメラを設置して捜査をするということについては、設置する場所等の管理者の承諾を得るのは当然のこととして、必要かつ相当な範囲内であれば、判例でも認められているところであり、実務においても、個別具体的に判断し、犯罪の現場を客観的に押さえるなどの捜査は行っているところである。しかしながら、今回の件について不適正な捜査であるとの判断がなされたことを踏まえ、刑事部門としても、再発防止を全国に対して改めて指導をしてまいりたいと考えている」旨の説明があり、奥野委員より、「警察の捜査活動の中で、特定の事件でカメラを使用する捜査が必要なのは承知しているが、一般の事件、中でも慎重に捜査を進める必要がある選挙違反のような事件でも、カメラを設置する捜査手法が日常化しているのではないか。あるいは、今回の事件は極めて例外的で、特異なケースと見ていいのか。この事件が発覚して、警察が日常的にカメラを使って市民生活を監視しているのではないかとの不安の声も一部出ている」旨の発言があり、刑事局長から、「選挙違反の取締りについては、選挙運動や政治活動の自由に十分配意し、決して人権侵害があってはならない。そのような批判を受けないよう、適切な捜査をする必要があり、その観点から、今回の事案においては、カメラを特定の場所に設置したことは不適正であったと認識をしている」旨の説明があり、奥野委員より、「カメラの設置だけではなく、設置後も捜査員が私有地内に何度も入り込むなど、捜査員は警察活動の基本を全く心得ていないとしか思えない。しかも、幹部である警視の指示に基づいての行動であり、どのような幹部教育をしているのかと疑問に思う。個人の問題か、県警全体の問題なのかは分からないが、いずれにせよ、幹部も含めた教育の徹底を求めたい」旨の発言があった。

川本委員より、「大分県警察の事案に対して、たまたま発生した特異な事案だと警察庁でも過信していないかということが心配である。一般論として、任意捜査の基本原理がどれだけ徹底しているのか、このような捜査で24時間ずっとカメラ撮影することは全国的にも特異ではないのかどうか、よく確認していただきたい。更に、今回は野党関係の国策捜査と批判されかねない重大な事案であるにもかかわらず、所属長レベルでも自分の所掌の範囲でしか問題を捉えていない。考え方がサイロ化されてしまっており、そのような問題意識の持ち方に対して懸念を表明しておきたい」旨の発言があり、木村委員より、「問題に対し、何が原因で、それをどう分析してどのように対応すべきかをみんなで共有しながら対応していくことが重要である」旨の発言があった。

北島委員より、「大分県警察の事案について、マスコミでは、「今の警察はここまでしているのか」と批判しているが、建造物侵入の部分以外もしっかりと説明して、国民の懸念を払拭した方がよい」旨の発言があり、刑事局長から、「警察庁としても、今御指摘のあったカメラを使用した捜査についての必要性、相当性の判断や、奥野委員から御指摘のあった幹部の問題等について、全国に指示を徹底したい」旨の説明があり、川本委員より、「警察庁が発出する通達は分かりにくいものがあるので、わかりやすい通達としてもらいたい」旨の発言があり、長官から、「秋に全国捜査関係課長等会議があるので、その場でもしっかりと指示することとしたい」旨の説明があった。

 

(6)第24回参議院議員通常選挙の違反取締りについて

刑事局長から、第24回参議院議員通常選挙の違反取締りについて報告があった。

 

(7)平成28年度総合防災訓練の実施について

警備局長から、9月1日の「防災の日」を中心とした「防災週間」に、国家公安委員会及び警察庁並びに都道府県警察が各種防災訓練を実施する旨の報告があった。

木村委員より、「首都直下型地震が発生する可能性も高いため、発生時にどう行動するかなどを確認する必要があるが、そのためには実際の訓練が一番大事である。ただし、その訓練が単に定例的なものにならないよう、訓練ごとに具体的なテーマを設定するなどしてメリハリのある実効的なものにしてもらいたい」旨の発言があり、警備局長から、「全体としては、委員が御指摘のとおり、政府全体の流れの中で警察として訓練を実施しており、それとは別に各都道府県警察においても、この防災訓練の時期に訓練を当然実施している。先般は近畿管区警察局に訓練施設を設け、恒常的に各都道府県警察の部隊が国内の災害特性を踏まえた実戦的な訓練を行っているところ。ただ、もう少しそれぞれきちんとテーマを決めて取り組めばよいという御指摘は、もっともであると思う。参考だが、警視庁では首都直下型地震を想定して、都民の御協力もいただき、都心部の交通量を削減するため、環状七号線から都心方向への車両の通行を禁止する車両流入規制訓練も実施している」旨の説明があった。

長谷川委員より、「先日のニュージーランド視察で、クライスト・チャーチでは、大規模地震を発生後の対応を分析し、次の発生に向けて何をすべきか検証していた。発生直後の現場の対応だけではなく、被災地の回復力をどう強めるか、どうやったら早く立ち上がれるかなどまで幅広く研究していた点は参考になると思う」旨の発言があった。

 

(8)安倍内閣総理大臣のロシア連邦訪問に伴う警護警備について

警備局長から、9月2日から3日までの間、首脳会談等のため、安倍内閣総理大臣がロシア連邦を訪問する予定であり、これに伴い、所要の警護警備を実施する旨の報告があった。

 

(9)安倍内閣総理大臣の中華人民共和国及びラオス人民民主共和国歴訪に伴う警護警備について

警備局長から、9月4日から8日までの間、G20サミット及びASEAN関連首脳会議出席等のため、安倍内閣総理大臣が中華人民共和国及びラオス人民民主共和国を歴訪する予定であり、これに伴い、所要の警護警備を実施する旨の報告があった。

 

3 その他

(1)刑事局長から、新たな刑事司法制度に対応した警察捜査について報告があった。

木村委員より、「先日の定例会議での議論では、供述証拠が重要であり、客観的証拠だけでは公判を維持することが難しいという話も出ていたが、本日紹介されたある殺人・死体遺棄事件では、供述証拠がないままに起訴されていた。その事件では、供述証拠がなくても十分に公判を維持できると考えたのか」旨の発言があり、刑事局長から、「起訴は、検察当局において、「有罪判決が得られる高度の見込み」に基づいて行われるものと承知しているが、警察としても、本件において、十分な客観証拠を入手できたと考えている」旨の発言があった。

川本委員より、「サイバー分野での捜査や防犯カメラの活用が主な新たな捜査手法のようであるが、それ以外で今後開発していくものはあるのか。例えば、警察のCIS−CATSは高度な技術を備えているが、どの程度研究が進んでいるのか。調査費等は確保できているのか」旨の発言があり、刑事局長から、「CIS−CATSに関し、システムを構築すること自体にはそれほどの費用はかからないが、先日、私も実際にデモを見学してみて、システムに習熟した捜査員だけではなく、全ての捜査員が普通に使えるようなシステムにしていく必要があると感じた。ユーザーの意見を聞きつつ、不断のシステムの見直しを行い、必要に応じて予算も獲得してまいりたい」旨の説明があり、川本委員より、「従来は、捜査員は取調べで自供をいかに得るかを学んできたが、今後は、このような技術も修得していくことはよいことと思う」旨の発言があり、刑事局長から、「今、警察全体としても、デジタルの世界に抵抗感の少ない若手捜査員が増加しているため、そういった面では、新たな展開を迎えているともいえる」旨の説明があった。

北島委員より、「新しい刑事司法制度に対応して警察捜査を進めるために一番大事なことは、科学技術の活用、利用ではないかという印象である」旨の発言があった。

川本委員より、「ネットカフェやインターネットプロバイダ等アクセス地点となる事業者は、必ずしも警察に協力的ではないというイメージがあるがどうか」旨の発言があり、刑事局長から、「必ずしもそうではない。犯罪者がネットカフェ等に止宿するケースは多くあるが、例えば東京では、条例によって、利用する際には身分確認をしっかり行うこととなっており、通報体制の確立等、関連の協会とも良好な協力関係が構築できている」旨、生活安全局長から「フリーWi−Fiがこれから普及していく過程で、トレーサビリティをどうしていくかという問題は、総務省と協議をし、ある程度の方向性はできて、市町村等のフリーWi−Fiを運営するところには、総務省からガイドラインを示している」旨の説明があった。

長谷川委員より、「客観的証拠の中でDNA鑑定等が重要であるが、先日読んだある科学雑誌には、それらの科学的な鑑定について注意すべき点、すなわちフォレンジックの科学捜査の不確かさについての特集記事が掲載されていた。同記事では、公判で扱われる「科学的」な鑑定結果には、一般的な科学者の考え方とは異なった結論となる例がたくさん紹介されており、フォレンジックの「科学者」と一般的な「科学者」との違いをよく理解した上で「科学的」と言うべきであるとのことであった。日本でも、その点に留意しながら研究を続けていくべきである」旨の発言があった。