定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 平成28年9月1日(木)

午前10時00分 〜 午前11時30分

 

 

第2 出席者 長谷川、奥野、北島、木村各委員

坂口長官、栗生次長、三浦官房長、種谷生活安全局長、

吉田刑事局長、井上交通局長、沖田警備局長、川邉情報通信局長

古谷首席監察官

 

 

第3 議事の概要

 

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、9月20日付け警視総監の人事案件及び警視総監の任免に伴う承認依頼等の手続について説明があり、原案どおり決定した。

 

(2)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

2 報告事項

(1)平成28年度全国警察柔道選手権大会及び全国警察剣道選手権大会の開催について

官房長から、9月6日、平成28年度全国警察柔道選手権大会及び全国警察剣道選手権大会が開催される旨の報告があった。

 

(2)監察の取扱い事案

首席監察官から、7月17日、青森県警察の巡査長が強盗未遂等で通常逮捕された事案に関し、9月6日、同県警察は、同巡査長を免職処分とする予定である旨の報告があった。

奥野委員より、「免職処分は当然と考える。2件とも被害者は負傷しておらず、実害は無かったが、いずれも住民の警察に対する強い信頼感を裏切ったものであり、悪質な事案である。特に、処分された警察官は、住民との接点となって地域の安全を守るべき駐在所勤務であり、強盗未遂事件では、被害者夫婦が警察官を説得し、更に犯行を警察に届けないという温かい思いやりもあったにもかかわらず、それを踏みにじった形になった。公務員職権乱用事件でも、捜査目的とする警察官の訪問に対し、被害者が素直に協力しており、この地域における警察官に対する信頼の高さがうかがえ、ここでも信用を失墜させた。このような警察官を駐在所に配置した県警察は、この事件を深刻に受け止めてほしい。また、今回は、年齢の若い警察官の犯行だったが、駐在所の年齢構成が若年化している傾向はないのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「駐在所の年齢構成は、55から59という大きな山が一つあり、中堅どころが少なく、30から34歳というのがまた一つの大きな山になっている。全体としては、警察官全体と同じ配置になっている。青森県だけ見ると、ベテランが非常に多く、55から59というのが一番多くて、若手は少ない。駐在は、家族とともに地域に溶け込んでもらって、地域の実情を踏まえた適切な活動をしてもらう必要があるので、全国的には7割が家族帯同で赴任している。青森県では家族帯同が比較的少なく、5割強となっている。可能な限り、家族そろって赴任して地元に溶け込んでもらうのが望ましいと考えている」旨の説明があり、奥野委員より、「普段はあまり目立ってはいないが、駐在所の存在は、地方の警察活動においては非常に大事な位置を占めていることから、駐在所の管理についてもしっかりとお願いしたい」旨の発言があった。

 

(3)平成28年上半期における暴力団情勢について

刑事局長から、平成28年上半期における暴力団情勢について報告があった。

長谷川委員より、「最近、構成員等の数が減少しているが、新たに加入する者が減少しているということか」旨の発言があり、刑事局長から、「辞める人間が増えていることと、暴力団排除条例などのいろいろな法制度が整備されて、暴力団への加入に魅力が無くなったことの両方ではないかと考えられる。また、暴力団には親子関係、兄弟関係等の非常に厳しい規律がある一方、関東連合OBグループやチャイニーズドラゴン等の準暴力団は暴力団のような明確な組織性を有しないことから、こちらに流れていることも考えられる」旨の説明があり、長谷川委員より、「70年代ころまでの暴力団のように、みかじめ料等の資金源を確保するために事業者への襲撃や対立抗争を繰り返すような状況ではなく、資金源を特殊詐欺等に移行させるなど組織の性質を大きく変えている。警察も、この変化に対応して取締りを進めないと、幹部クラスの検挙等は難しいのではないかと思う」旨の発言があり、刑事局長から、「暴力団が振り込め詐欺等の背後に見え隠れしており、今回、通信傍受の対象犯罪に組織的な詐欺が追加されたこと等を踏まえ、こうした手段も活用しながら、組織の上位者まで追及してまいりたい」旨の説明があった。

奥野委員より、「統計を見る際には、準構成員の中に、いわゆる反グレ集団のような周辺グループは含まれているのか。含まれていないとすると、構成員等の検挙件数、検挙人員が減少しても、一方でそれらの周辺グループの犯罪が増えていれば、暴力団情勢の統計や分析には表れず、全体を把握できないこととなる。今後は、こうした周辺グループの実態把握を更に強化する必要があると思う」旨の発言があり、刑事局長から、「そうした周辺グループは、準構成員の中に必ずしも含まれていない。準暴力団については、離合集散を繰り返し、把握しづらい面もあるが、暴力団と共存関係にある状況も見られることから、引き続き、徹底した実態解明を推進してまいりたい」旨の説明があった。

奥野委員より、「山口組分裂後、1年が経過したが、抗争事件は増えたものの全面抗争には至らず、まだ一般市民への被害も無い。全国警察の集中取締りの結果だと見ている。現在の状況が続くのか、突然、大規模な抗争事件に発展するのか予断を許さない状態にあると思うので、引き続き、取締りの徹底をお願いしたい」旨の発言があった。

 

(4)和歌山市塩屋における拳銃使用殺人等事件について

刑事局長から、8月29日に和歌山市において発生した拳銃使用殺人等事件及び8月31に同市において発生した同事件の被疑者による立てこもり事件について報告があった。

木村委員より、「立てこもり事件については、結果的には大きな被害が無かったのでよいが、拳銃を持っている被疑者に17時間も説得を続けていた点について、早期解決を図るために他の方法もあり得たのではないかとも思われるがどうか」旨の発言があり、刑事局長から、「17時間、特に昨日、膠着状態が続いたので、そういった御指摘はあろうかと思うが、ポイントは、人質がとられているかどうかである。一般人が人質にとられてたてこもっているという状況であれば、人質に対する生命、身体への危害のおそれがあるが、今回の場合には、被疑者が一人で、両手に拳銃を把持して、集合住宅の外階段の1階と2階を行ったり来たりしていたという状況であり、例えば突入という観点から大阪府警察の部隊も直近で待機して、いつでも突入できる状態にはしてはいたが、それによって、例えば、逆に不測の事態が起きるということもあり得る。警察官の受傷事故ということも重要な要素であり、今回の作戦としては、人質がおらず、周辺の住民の方が避難しているので安全確保はできているという前提で、本人が疲れて投降することによって、安全に犯人を確保しようという考え方で捜査を進めたということである」旨の説明があり、木村委員より、「説得を続けても投降せず、警察官に拳銃を発砲したりした場合には、どう対応しようと考えていたのか」旨の発言があり、刑事局長から、「もちろん、拳銃を乱射して、説得している警察官の生命などに危害が及ぶような状況であれば、その段階で、強制的に実力行使して確保するということは当然あり得たが、被疑者も徹夜で起きていたので、いずれ疲れてくるだろうということで、説得交渉官も拳銃を捨てて投降してくるように繰り返し説得を続けていた」旨の説明があり、木村委員より、「被疑者の手を狙撃するなどすれば、スピーディーに解決する可能性があったのではないか」旨の発言があり、官房長から、「負傷させてしまうと、不測の事態を生じうることから、一般人に被害が及ぶ状況が無ければ持久戦に持ち込むというのが基本的な方針である。本年2月に発生した千葉県佐倉市における教会での刃物使用の立てこもり事件では、人質に危害が及ぶ状況が生じたため、急きょ突入している。このようにケース・バイ・ケースではあるが、特に人質の安全の確保を第一に考え、状況に応じて判断している」旨の説明があった。

奥野委員より、「拳銃を所持していた被疑者が異常行動をする危険性もあり、慎重に対応する必要はあったのかもしれないが、立てこもる前の段階で身柄を確保してもらいたかった。途中で、大阪府警察からの特殊部隊の応援を要請したが、応援は必要だったのか」旨の発言があり、刑事局長から、「拳銃を持っているので、通常の犯人と違う点もあり、大阪府警察の特殊班派遣部隊も派遣された。もちろん、和歌山県警察にも訓練をしている特殊班があり、和歌山県警察が責任を持って対応する立場である。警察庁としても、早期の公開手配と、犯人の早期確保を図るよう指導していたところである。この種事件が起こった後、捜査第一課の特殊事件捜査室の幹部を派遣し、捜査の状況等について事件後に聴取するなどしているので、今後の教訓事項等があれば、それを抽出していきたいと考えている」旨の説明があった。

 

(5)自転車運転者講習制度施行1年の実施状況について

交通局長から、自転車運転者講習制度施行1年の実施状況について報告があった。

木村委員より、「自転車運転者講習は24件だけだが、最近の健康意識の高まりもあり自転車の数が増えているようであり、また、実際に非常に危ない自転車の運転も少なくない。講習を受ければ、いろいろなことが分かるので、もっと講習を受けてもらうようにできないのか」旨の発言があり、交通局長から、「法律の仕組みとしては、3年以内に2回以上危険行為を繰り返した者に対して受講命令を出して、講習を受講させるとともに、受講命令に違反した者には罰則を科すこととしている。危険行為登録件数が約1万5千件に対し、講習受講件数が24件というのは少ないという印象をお持ちかもしれないが、これは、一度取締りを受けて危険行為として登録されることにより、講習を受講することとならないように、気をつけて運転するようになるという、いわゆる特別予防効果が発揮できているのではないかと考えられる。また、自転車の違反行為に対しては、検挙のほか、指導警告を行っており、昨年1年間の全国における指導警告票交付件数は185万件となっている。自転車関連事故発生件数及び死者数は減少傾向にあるものの、更なる減少に向け、本制度を適切に運用するとともに、自転車利用者に対する安全教育、指導取締り等各種対策を推進してまいりたい」旨の説明があった。

 

(6)台風10号の被害状況と警察措置について

警備局長から、台風10号の被害状況と警察措置について報告があった。

奥野委員より、「被害の大きかった岩手県岩泉町においては、警察電話までも不通になる中、警察無線だけは通じていたとのことであり、警察無線の役割は大きいと改めて感じた」旨の発言があった。

 

3 その他

(1)警備局長から、台風10号の影響のため、本日予定されていた平成28年度総合防災訓練の一部を中止した旨の報告があった。

 

(2)長谷川委員より、オーストラリア連邦・ニュージーランド視察におけるオーストラリア連邦での視察結果について報告があった。

木村委員より、「オーストラリアは、グローバルな人材の受け入れを非常にオープンにしている。留学生の受け入れも、日本の3倍くらいあるようで、それが一つの産業となっている。しかも、優秀な者はオーストラリアに残って働いてもらい、帰国しても、オーストラリアに共感を持ちながら産業の中枢で働いている。それらを考えると、グローバルに海外と対応するためには、オープンにした方がいいという判断であろう」旨の発言があり、長谷川委員から、「基本的にオープンに移民を受け入れて、よい仕事ができるようになったら、要職に就くこともできるようにするなど、海外の者にもよい職場環境を作ろうというのが基本となっている。国際テロ対策を強化するためにコストをかけるのではなく、寛容性や多様性を備えた受け入れによる経済効果の方を選択したものである。もちろん、テロリストを阻止する、生まないようにする、テロ対策に貢献するということも行っている」旨の説明があり、木村委員より、「いずれ、日本でも人材をグローバルに確保しなければならない時代が来るのではないかと思う。そのときに、どういうシステムでテロや犯罪につながらないようにするか、しっかりと選択しなければならない」旨の発言があり、長谷川委員から、「ヨーロッパでは、移民政策に寛容性、多様性を備えることに失敗しているので、そのために社会の作り替えをしなければならないという意見もあった」旨の説明があった。

北島委員より、「オーストラリア警察は1万6千人いるとのことだが、少ないのではないか」旨の発言があり、長谷川委員から、「州ごとに警察があるために、連邦警察はそのくらいになっている」旨の説明があった。

奥野委員より、「オーストラリア・ボーダー・フォースは、国境警備隊のようであるが、警察の中の組織なのか」旨の発言があり、長谷川委員から、「国際テロ対策の強化のために、警察、入国管理部門や税関部門等が一緒になって創設されたチームである。トップの人は、警察出身である」旨の説明があり、刑事局長から、「我が国も、入管や税関からの情報が現場の警察に通知されるシステムにより、水際対策をしっかりと行っている」旨の説明があった。