定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 平成28年9月15日(木)

午前10時00分 〜 午前10時50分

 

 

第2 出席者 松本委員長、長谷川、奥野、川本、北島、木村各委員

坂口長官、栗生次長、三浦官房長、種谷生活安全局長、

吉田刑事局長、井上交通局長、沖田警備局長、川邉情報通信局長

徳永審議官(国際・調整担当)

 

 

第3 議事の概要

 

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、10月1日付け暴力団対策法審査専門委員1名の任命について説明があり、原案どおり決定した。

 

(2)犯罪被害者等給付金の裁定(京都府・兵庫県)に対する審査請求事案の審理状況及び裁決について

官房長から、犯罪被害者等給付金の裁定に対する審査請求事案の審理状況及び裁決について説明があり、原案どおり決定した。

 

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

2 報告事項

(1)「全国犯罪被害者支援フォーラム2016」の開催について

官房長から、9月30日、「全国犯罪被害者支援フォーラム2016」が開催される旨の報告があった。

 

(2)平成28年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

審議官(国際・調整担当)から、平成28年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について報告があった。

 

(3)平成28年上半期における児童虐待及び児童ポルノ事犯の検挙状況等について

生活安全局長から、平成28年上半期における児童虐待及び児童ポルノ事犯の検挙状況等について報告があった。

木村委員より、「通告児童数が5年間で約5倍、検挙件数も大幅に増加している状況について、どのように考えているか」旨の発言があり、生活安全局長から、「通告数の増加については、いろいろ原因はあると思うが、一つは、国民の認識が高まって、例えば隣で赤ちゃんが泣き放しだとか、近所でそういう声がするとかということで通報を警察や児童相談所にする数が増えているということではないかと思う。児童相談所も特別の電話番号「189」で通報を求めている。また、警察も認識を高めており、特に、現場に行ってみたら、夫婦げんかが激しく行われていて子供が泣いていたといった場合に、積極的に心理的虐待として、児童相談所に情報提供や通告しているのも増加の要因ではないかと思う。また、心理的な虐待についても、暴力行為等処罰に関する法律違反、監禁、強要等で、積極的に検挙するようになってきている。さらに、保護の件数も非常に増えている。全体で1,551件であるが、これまでは警察官職務執行法の保護と児童福祉法の保護が半々くらいだったが、今年の上半期は、警察官職務執行法の保護が1,063件、児童福祉法が488件ということで、警察官職務執行法の保護が増えている。これは、警察官が現場へ行って、まず警察官職務執行法で保護するという形で積極的な対応をしているということだと思う」旨の説明があり、木村委員より、「短期的な警察の対策は掲げられているが、中長期的には、もっと抜本的な対策を考える必要があると思う。警察だけでは限界があるので、警察からの積極的な支援も含めて関係省庁と連携した取組を進めてもらいたい」旨の発言があり、生活安全局長から、「厚生労働省を中心とした関係省庁会議で、施策をとりまとめてやっている」旨の説明があった。

奥野委員より、「児童相談所への通告児童数だけではなく、警察に対する通報件数も増加しているのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「警察に対する通報も増えている」旨の説明があり、奥野委員より、「警察庁は、児童相談所への通告の指針について、現場に駆けつけたときに虐待の事実が無いと判断しても、自治体と連携の上、相談所に通告するように通達を発出しているが、今回、通告児童数が大幅に増加したのは、こうした警察の積極的な対応の反映とみている。しかし、依然として悲惨な児童虐待死が後を絶たず、その多くは見逃し事案のようである。児童福祉法が改正され、虐待防止策が強化されたが、警察と児童相談所等関係機関との連携には、まだ限界があるように思える。児童の強制保護も効果的だと思うが、強制保護は親権にかかわる問題もあり執行が難しいのではないか」旨の発言があり、生活安全局長から、「本年4月1日に出した通達は、警察が児童虐待無しと判断したものについても、過去に児童相談所や市役所で取扱いがなかったかどうか必ず照会をすることとしたもの。それにより、関係機関で情報共有していこうという仕組みである。これによって、4月以降、情報共有した数というのは大幅に増えている」旨の説明があった。

川本委員より、「これまでの児童虐待の検挙統計では、本当は児童虐待に含まれている無理心中や出産直後の殺人が外数で計上されるなど分かりづらいものであったが、次回からはこれらの表記の仕方を改めるとのことであり評価したい。表記を改めることで、無理心中等に対する国民の意識も変わってくるのではないかと思う」旨の発言があった。

北島委員より、「児童虐待や児童ポルノ事犯の状況が深刻化する中、児童ポルノ事犯における児童の性的搾取の問題について本年度から警察庁が総合調整官庁になったことから、今回の報告を機に、改めて警察の取組について期待感を表明しておきたい」旨の発言があった。

長谷川委員より、「児童虐待の発生が実際に増加しているのかどうか把握することは難しいとのことだが、虐待死は確実に把握できるので、虐待死の推移に注目することで実際の児童虐待が増加しているかどうかを判断することができると考える。虐待の中の一定の割合のものが虐待死に至るのだとすれば、虐待死の数はおおむね横ばいなので、実際の児童虐待が増えているのではなく、国民の意識が高まったことなどから通報が増えているのだと思う。さらに、通報により虐待死に至る前に保護されるようになったとすれば、虐待死が起きる割合そのものが抑えられているという可能性もある。いずれにせよ、虐待死の防止のためには、関係機関と連携して情報共有をしっかりとすることが大事だと思う」旨の発言があった。

 

(4)取調べの録音・録画の試行指針の制定について

刑事局長から、刑事訴訟法の改正により導入される取調べの録音・録画制度に備えるため、現在の取調べの録音・録画の試行内容を見直し、新たに制定する「取調べの録音・録画の試行指針」について報告があった。

奥野委員より、「新たな試行指針が示されたが、これまで8年間に及ぶ試行の結果も踏まえ、運用及び資機材の確保等において制度の完成度を高めていただきたい。当初懸念された、十分な供述が得られなくなるなどの録音・録画のマイナス面についても、更に研究を重ね、取調べ方法を工夫するなどして克服するよう期待している。この制度の導入は、不当な取調べを無くし、冤罪を防止しようというのが出発点であった。制度を定着させて捜査員の意識を変えることで、録音・録画の対象となる事案以外にも不当な取調べが無いように努めてほしい」旨の発言があった。

 

(5)平成28年上半期における交通死亡事故の特徴等について

交通局長から、平成28年上半期における交通死亡事故の特徴等について報告があった。

川本委員より、「交通事故の分析を着実に重ねたことで、高齢者の歩行の特性等に注目した効果的な対策を講じており、交通事故の更なる減少が期待できる。今後も分析に基づく対策を講じていくことを徹底していただきたい」旨の発言があり、交通局長から、「今回の分析は、昨年以来、委員からの御指摘いただいた分析の在り方を踏まえて行ったものである。分析によりクローズアップされた高齢者、横断歩行者の法令違反が多いということも含めて、秋の全国交通安全運動の要綱にも新たに項目を盛り込んだところである。今後も、交通事故の分析と対策をリンクさせるとともに、更なる分析の高度化に努め、より一層効果的な対策を講じていきたい」旨の説明があった。

 

(6)平成28年秋の全国交通安全運動等の実施について

交通局長から、平成28年秋の全国交通安全運動等の実施について報告があった。

 

(7)安倍内閣総理大臣のアメリカ合衆国及びキューバ共和国歴訪に伴う警護警備について

警備局長から、9月18日から24日までの間、第71回国連総会出席、キューバ首脳との会談等のため、安倍内閣総理大臣がアメリカ合衆国及びキューバ共和国を歴訪予定であり、これに伴い、所要の警護警備を実施する旨の報告があった。

 

(8)G7長野県・軽井沢交通大臣会合に係る警備について

警備局長から、9月24日から25日までの間、G7長野県・軽井沢交通大臣会合が長野県軽井沢町において開催される予定であり、これに伴い、所用の警備を実施する旨の報告があった。

 

(9)天皇皇后両陛下の第71回国民体育大会御臨場等に伴う警衛警備について

警備局長から、9月28日から10月2日までの間、第71回国民体育大会御臨場等のため、天皇皇后両陛下が岩手県へ行幸啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛警備を実施する旨の報告があった。

 

3 その他

(1)生活安全局長から、「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」中間とりまとめについて報告があった。

北島委員より、「基本的には、精神医療関係の問題ではあるが、新聞でも、警察の対応に問題は無かったのかどうか、しっかりと検証する必要があるのではないかとの指摘がされていた。この点についてはどうか」旨の発言があり、生活安全局長から、「今回、検証結果の中間とりまとめを行った厚生労働省のチームには、関係省庁として警察庁も参加し、警察における当初からの取扱状況も含めて情報提供するなどしておきており、最初の取扱いの段階から、警察官職務執行法第3条に基づく保護、精神保健福祉法第23条に基づく相模原市への通報、施設に対する防犯指導等の一連の警察の対応状況も検証の対象となったものである」旨の説明があった。

川本委員より、「警察の対応に問題は無かったのか検証すべきという意見は多いと思うが、検証に当たっては精神障害の有無にとらわれすぎず、今回の事件の発生前にあった、衆議院議長の公邸に犯行を予告するような手紙を持参するなどの行動を把握した段階でどのように対応するべきだったのかという視点で考えるべきではないかと思う」旨、奥野委員より、「衆議院議長の公邸に持参した手紙の内容を把握した段階で、被疑者に注意すべきという認識が警察にあったのかという視点からの検証はしているのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「本件については、手紙を入手した警視庁から素早く神奈川県警察に情報提供がなされ、神奈川県警察においても、重大な案件であるという認識を持ち、施設への防犯指導等を行い、また、被疑者については、警察官職務執行法第3条に基づく保護、精神保健福祉法第23条に基づく通報、その後、緊急措置入院、措置入院という手続が迅速に執られており、その認識に誤りはなかったと思う」旨の説明があり、奥野委員より、「衆議院議長への手紙の内容を把握した段階で、警察は被疑者を要注意人物としてリストに掲載し、行動を監視するようなことはできなかったのか。今回の被疑者の危険性を事前に判断するのは難しい状況だったのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「この種の情報を事前に警察が把握しておくということは、たいへん難しいと思う」旨、官房長から、「そのような状況にあるだけで常時監視することはどうかという問題もあり、現在の制度の下で犯罪を防ぐためにどこまでできるのかとなると、なかなか難しいのではないかと思われる」旨の説明があった。

木村委員より、「今回の被疑者は、犯行すること自体に満足しているようで、通常の事件の被疑者とは異なり新たな犯人像がうかがえる。警察としても、見方を変える必要があるのではないかと思う」旨の発言があった。