定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 平成28年12月1日(木)

午前10時00分 ~ 午前11時10分

 

 

第2 出席者 松本委員長、長谷川、奥野、川本、北島、木村各委員

坂口長官、栗生次長、三浦官房長、種谷生活安全局長、

吉田刑事局長、井上交通局長、松本警備局長、川邉情報通信局長

中村組織犯罪対策部長

 

 

第3 議事の概要

 

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、1月1日付け国家公安委員会犯罪被害給付専門委員2名の任命について説明があり、原案どおり決定した。

 

(2)犯罪被害者等給付金の裁定(京都府・愛知県2事案)に対する審査請求事案の審理状況及び裁決について

官房長から、犯罪被害者等給付金の裁定に対する審査請求事案の審理状況及び裁決について説明があり、原案どおり決定した

 

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。

 

2 報告事項

(1)国会の状況について

官房長から、最近の国会の状況について報告があった。

 

(2)日韓警察協議(第5回)及び日中韓警察局長級会議(第2回)の開催結果について

官房長から、11月22日及び23日に韓国・仁川においてそれぞれ開催された日韓警察協議(第5回)及び日中韓警察局長級会議(第2回)の結果について報告があった。

北島委員より、「日韓警察協議は、個別のテーマについて議論が行われるようになっているが、日中韓警察局長級会議の方は、まだ議論が総論的だという印象である。非常に大事な枠組だと思うので、掘り下げた議論が行われるように進めてもらいたい」旨の発言があり、官房長から、「日中韓警察局長協議は、まだ2回目なので手探り状態ではある。しかし、顔を合わせて共通の認識を持っていくことは必要だと思うので、今後、サイバー犯罪対策、薬物対策等を中心にしながら相互理解を深めていきたいと思っている」旨の説明があった。

 

(3)監察の取扱い事案について

官房長から、11月15日、栃木県警察の巡査部長が酒気帯び運転等で通常逮捕された事案に関し、12月5日、同県警察は同巡査部長を免職処分とする予定である旨の報告があった。

 

(4)鳥インフルエンザへの対応状況について

生活安全局長から、11月28日以降、青森県等において発生が確認された鳥インフルエンザへの対応状況について報告があった。

 

3 その他

(1)組織犯罪対策部長から、水際対策の現状と今後の課題について報告があった。

川本委員より、「PNR(Passenger Name Record)を提供する協定について、米国やカナダはEUとの間で締結できているが、日本が締結できていない理由は何か」旨の発言があり、組織犯罪対策部長から、「本件は、財務省、法務省、外務省において取り組んでいるところと承知しているが、EUは、個人情報保護の観点から、協定未締結の国に対するPNRの提供を止めているということなので、我が国としては、PNRを法目的の中で適正に活用しているということをしっかりと訴えて、協定締結に向けてEUの理解を得ていく努力をしていくことが必要であると認識している」旨の説明があった。

木村委員より、「10月17日から運用を開始している顔画像認証システムは、全国の国際空港等に整備されているものか。また、今後、訪日外国人の更なる増加が見込まれるが、入国管理に係る人員を増加させていくのか、あるいはオーストラリアで導入されているような自動入国管理システムを日本でも導入し、人員の合理化を図る方向なのか」旨の発言があり、組織犯罪対策部長から、「顔認証システムについては、少なくとも国際空港では全部できるようになっていると承知している。一方で、自動化については、入管行政に関することなので伝聞ではあるが、入管では、自動化ゲートというものを設けて、あらかじめ指紋、画像を登録しておけば、対面審査を省略し、再入国時にパスポートをかざせば、自動的に通過できる形のものが導入されており、4大空港については整備しつつある。そのような形で、入管では、人的資源の有効活用に向けた努力をされていると理解している」旨の説明があり、木村委員より、「顔画像認証システムは、機能的には問題ないのか」旨の発言があり、組織犯罪対策部長から、「入管では、機能的に問題を生じないよう重ねて実験をしてきたと承知。平成19年の自動化ゲート導入以来、検討と実験を重ね、当初低調であった識別率も、現在では格段に高まったことから、この度のシステム導入に踏み切ったと聞いている」旨の説明があった。

奥野委員より、「空港の警備は、税関、入管、警察、航空会社がそれぞれ担当を分けて担っているが、特にテロ対策には関係機関の情報共有が不可欠であり、今後は、緊迫感を持って組織間の連携強化を図ってほしい」旨、長谷川委員より、「8月にオーストラリアに視察に行ったとき、警察や入国管理部門が連携して設立された機関が空港内で疑わしい者を確保する訓練を見たが、そのように各部門が緊密に連携した体制を構築していたのは参考になると思う。元々異なる組織が一つになって情報共有をし、意思決定をすることについて、オーストラリア内でも様々な議論が出て、結局、法律を改正することまでしている。しかし、そこまでしないと十分なテロ対策ができなかったとのことである」旨、木村委員より、「警察、入管、税関が搭乗者の個人情報を統一的に把握できていない点に懸念を覚える。それぞれの行政機関の設立の目的があり、その中で活動しなければならないために、情報共有が制約されるということは分かるが、最近のテロ情勢を考えると、その壁を超えた連携が必要であり、それを改めるために誰かが強く号令を発しなければならないと思う」旨の発言があった。

北島委員より、「水際対策を強化するためには、予算的にはどの部分が大きいか」旨の発言があり、組織犯罪対策部長から、「カメラの設置・運用等のためのシステムには、相当の予算が必要。他方、その整備により、いろいろな利便性も高まり、見逃しも無くなるというのであれば、予算獲得に努力する必要があると認識。ただ、各省庁が予算枠の中で要求をするという現在の予算システムの中では限界もある。したがって、こうした共通に必要なものをもう少し統合的な形で整備していくことを模索していくべきと考える。少なくとも、今後の予算の概算要求に何か反映できないか努力したい」旨の説明があった。

川本委員より、「日本は島国で、他の国と比べれば安全な国であったが、厳しい国際テロ情勢の下で訪日外国人4000万人の受け入れを目標に掲げている状況にあって、現在のような水際対策では非常に不安である。クルーズ船入港時の審査でも、顔写真撮影を省略するなどの特例を認めているが、そのような運用は現在の情勢には合わないので、米国のESTA(Electric System for Travelers Authorization)のようなシステムを構築する必要があるのではないか。空港の保安員も、もっと厳しく対応すべき。また、入国審査の待ち時間を短縮しようという動きがあるが、他の国でも待つのは当たり前であり、時間短縮に殊更に労力をかける傾向があることに疑問を感じる。外国では、子どものころからテロ対応マニュアルのビデオで教養を受けたり、テロによる銃撃戦等を想定して空港内の構造を複雑にしたりしているが、日本ではそのような対応はしていない。他国と比べて見劣りする点について誰かが先頭に立って早く見直していかないと、重大な被害が生じてしまう」旨、長谷川委員より、「人間は、1日24時間という限られた中で何かをするので、その中で何に時間を使うかの選択はトレードオフの関係にある。人間の認知資源も同様で、おもてなしの感覚で利便性を重視して審査すると、テロ対策のために緊張感を持った審査に関する認知はその分減少するので、両立させることはできず、どちらが重要か決定しなければならない。これまで、日本は比較的平和であったが、この10年で世界が大きく変化してしまったので、警備の在り方、認知資源の配分の仕方を見直す必要があるのではないか」旨の発言があった。