定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 平成29年1月19日(木)

午前10時00分 ~ 午前11時30分

 

 

第2 出席者 松本委員長、長谷川、奥野、川本、北島各委員

坂口長官、栗生次長、三浦官房長、種谷生活安全局長、

吉田刑事局長、井上交通局長、松本警備局長、川邉情報通信局長

 

 

第3 議事の概要

 

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、2月6日付け地方警務官3名の人事案件について説明があり、原案どおり決定した。

 

(2)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

2 報告事項

(1)監察の取扱い事案について

官房長から、28年12月12日、福岡県警察の巡査部長が酒気帯び運転等を行った事案に関し、本年1月19日、同県警察は同巡査部長を免職処分とする予定である旨の報告があった。

 

(2)平成28年における刑法犯認知・検挙状況について【暫定値】

生活安全局長及び刑事局長から、平成28年における刑法犯認知・検挙状況について報告があった。

北島委員より、「刑法犯認知件数が戦後初めて100万件を下回り、人口千人当たりで見ても昨年に続き戦後最少を更新したことは評価したい。警察内部でも、非常に大きな感慨を抱いた方も多いのではないかと思う。また、各都道府県別では格差が見られるところではあるが、検挙率が上昇傾向にあることも結構なことである」旨の発言があった。

長谷川委員より、「統計資料のうち、「主たる被疑者の特定の端緒」では、防犯カメラの役割が大きいことが分かるが、防犯カメラは、端緒以外でも様々な場面で役立っているのではないか」旨の発言があり、生活安全局長から、「防犯カメラは、設置すること自体による防犯効果も、数字には表れないが大きいのではないかと考えている」旨の説明があり、長谷川委員より、「防犯効果については、同じような状況にある様々な地域を比較すれば分かるのではないか」旨の発言があり、官房長から、「この「主たる被疑者の特定の端緒」では、実際の事件では様々なものが複合的に端緒となっている中で特定に一番役立ったものを一つ選ぶことになっていることから、防犯カメラが被疑者の特定に役立っている事件はこの数値よりも多いと思われる。また、防犯カメラは、特定に至らないまでも、車両番号や車種等様々な角度から被疑者を絞り込むことができる点でも効果的である」旨の説明があり、長谷川委員より、「つまり、数字で表れているよりも、ずっと効果があると言えるということか」旨の発言があり、官房長から、「そのとおりである」旨の説明があった。

川本委員より、「統計の分析は、非常にレベルが上がっている。対前年比ではなく3年間での移動平均を取ることで、長期的に見ることもできる。防犯カメラの効果を数値化した点もよい。今後は、例えば、窃盗犯の手口分類の「その他」のうち新しい傾向が無いかどうか確認していただきたい」旨の発言があった。

奥野委員より、「刑法犯全体の認知件数の減少傾向が続いている要因には社会的状況も反映しているが、同時に防犯カメラの設置等防犯対策が効果を上げている結果でもあり、警察はこの数字を誇ってよい。その中で、重要犯罪認知件数にある略取誘拐・人身売買が昨年は突出して増加している。これは、コミュニティサイトやSNSを利用した少女連れ去り事案が急激に増えたからとのことだが、数字以上にこの種事案には相当の暗数があるのではないか」旨の発言があり、生活安全局長から、「感覚としては、これまでは、SNSで知り合ってどこかに行ってしまうというのを、略取誘拐という形であまりとらえてきていなかったのではないかと思う。SNSの利用者の低年齢化に伴って、少年の保護の観点から、被害届を出してもらって刑事事件化して行こうという方向性もあって、認知件数が増えてきているということがあるのではないかと思う」旨、官房長から、「増加の背景としては、現場の感覚としても、人身安全関連事案への感覚がかなり鋭くなっていることがある。子どもがいなくなったという届出が端緒としてあり、家出の可能性も認められるが誘拐されたという可能性もあるので、警察側が大きく構えて捜査した結果、事案によっては家出をして出会い系サイト等で知り合った男の家で発見されることも少なくない。このように、都道府県警察としても、この種事案の届出があった場合には、相当の体制を組んで捜査に当たっているという実態がある」旨の説明があり、奥野委員より、「新たな犯罪動向として注目すべき点でもあり、今後、重点施策の一つとして取締りを強化してほしい」旨の発言があった。

長谷川委員より、「検挙率が上昇傾向にあることは非常に重要である。これを見ると、要は刑法犯では10人中3人は捕まり、重要犯罪では10人中7人から8人は捕まっている。したがって、犯罪は割に合わないという感覚が広まっていけば、犯罪をしようという考えも変わると思うので、この傾向は維持、向上させていく必要がある」旨、川本委員より、「単に認知や検挙の数値を示しても、一般的にはあまり伝わらないので、重要犯罪は10人中7人から8人は捕まるのだという広報をするのがよいのではないか」旨の発言があった。

 

(3)SNSを用いたメッセージ送信等によるストーカー規制法違反事件の検挙について

生活安全局長から、1月3日に施行された改正ストーカー規制法を全国で初めて適用し、1月13日、北海道警察がSNSを用いたメッセージ送信等によるストーカー規制法違反事件を検挙した旨の報告があった。

北島委員より、「施行後、速やかに改正ストーカー規制法を適用した検挙があり、更にその後も適用した検挙が相次いでいることから、非常に結構である」旨の発言があった。

 

(4)六代目山口組と神戸山口組の対立抗争の現状について

刑事局長から、六代目山口組と神戸山口組の対立抗争の現状について報告があった。

北島委員より、「特定抗争指定暴力団として指定する可能性はないのか」旨の発言があり、刑事局長から、「最近も、対立抗争に起因するとみられる不法行為が発生しており、特定抗争指定暴力団等としての指定を行う場合には速やかに対応できるよう、引き続き事件取締り等のあらゆる警察活動を通じた関連資料等の収集・整備を進めてまいりたい」旨の説明があった。

川本委員より、「説明内容がやや専門的なものに感じられたので、もう少し骨太な説明をしていただきたい」旨の発言があった。

 

3 その他

(1)刑事局長から、22年11月に福岡県北九州市において発生した建設会社会長に対する拳銃使用殺人事件の捜査状況について報告があった。

 

(2)生活安全局長から、児童虐待対策における中長期的課題について報告があった。

北島委員より、「児童虐待対策については、政府としては、関係機関との間で連携した上で、情報共有を図り、虐待の早期把握、児童の早期保護・救出を行うのが一つの大きな考えだと認識しているが、同時に、児童相談所の体制が十分なのかという議論があり、このたび、児童福祉法、児童虐待防止法が改正されて、児童相談所の体制、権限が強化されたことで、警察との間でどのように連携していくのかという点が重要なポイントだと思う。警察庁としては、連携強化のために情報共有の在り方、効果的連携事例の紹介等を行っているとのことだが、この方向で進めていただきたい」旨の発言があった。

川本委員より、「警察と児童相談所の交流が2,200人、児童相談所全体の体制を4千人から5千人に強化するとのことだが、リソースとしてはこれで十分なのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「この児相の計画というのも、実現可能性も考えての数字だと思う」旨の説明があり、川本委員より、「それなりに対応はできている状況にあると理解した。また、警察と児童相談所とで情報交換するための覚書を結ぶことには期限を設けたりしないのか。さらに、各都道府県間での取り組みに格差が生じるのはなぜか」旨の発言があり、生活安全局長から、「県ごとに県警と児相を所管している県の部局と話し合って文書にしていくことになるが、県の部局で危機感の感じ方にも差があって、進んでいない県もあるのは事実である」旨の説明があり、川本委員より、「今回のように、中長期的な課題を公安委員会の場で議論することはとてもよいことである。当初と比べて説明の用語も現代化しており、うれしいことである」旨の発言があった。

長谷川委員より、「児童がどのような状況にあればどの程度危険かということが分かる判断基準となるアセスメントツールがあるべきである。児童相談所側では、どのようなリスクがあるのかあまり知らないのではないか。一方、警察は全国で何百件もの事案を捜査しており、その調書を分析すると、児童を取り巻く環境から主要なリスクが検出できるはずである。産婦人科学会の関係者からの事例提供を受けているが、児童の定期検診の未受診は、かなり確率の高いリスクとなるとのデータもある」旨の発言があり、次長から、「確かに、死亡事例等は警察が先に把握、捜査することが多いため、児童相談所では対応した知見があまり無いのかもしれない」旨の説明があった。

奥野委員より、「児童虐待から子どもを守るためには、児童相談所、警察ともに親との対立を恐れず、一時保護をちゅうちょしないで積極的に行うことが必要である。当初は、強硬的措置を取らない傾向にあった児童相談所も体制、権限が強化され、かなり状況は改善されてきたが、臨検、捜索の手続きをとるにも、やはり警察の協力が必要だと思うので、今後とも警察の積極的関与を期待する」旨の発言があり、生活安全局長から、「児相職員は、令状請求実務に慣れておらず、警察は逮捕状とか捜索差押許可状とか裁判所に令状請求するのは日常的にやっているので、OBとか現職が出向したり、ロールプレイングの訓練をしたりしている」旨の説明があり、奥野委員より、「また、児童虐待の危険度の判断基準については各地域の事情に合わせて作成するようだが、地域により実情が大きく異なっているのか」旨の発言があり、生活安全局長から、「モデル案というのを作って、こういう兆表に注目すべきであるというのを作った。これを基に、各都道府県や児相に、ノウハウがあると思うので、そういった情報とかノウハウも加味して、より緻密なものを作ってもらおうという趣旨である」旨の説明があった。

川本委員より、「「親は絶対に子どもを可愛がるはずだ」などという前提が依然としてあると思うが、そのような情緒的な話ではないということをしっかりと認識することが重要である。警察はそれができると思うので、フローチャートのようなものを示して、しっかりと判断できるようにしていただきたい」旨の発言があった。