定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 令和4年8月25日(木)

午前10時00分 〜 午前12時00分

 

場 所 国家公安委員会室

 

第2 出席者 谷委員長、小田、櫻井、横畠、宮崎、竹部各委員

中村長官、露木次長、小島官房長緒方生活安全局長、大賀刑事局長、楠交通局長、櫻澤警備局長、河原サイバー警察局長、増山技術総括審議官

谷首席監察官、原長官官房付

 

第3  議 事

 

1 警護警備に関する事項

(1)警護警備に関する検証・見直しについて

警備局長から、警護警備に関する検証・見直しについて報告があった。

横畠委員より、「今回の報告書については、突然に、何が起こったのかも分からないまま亡くなった安倍元総理に対して報告するとするならばどのようなものかと考え、要求水準は高く設定し、意見を申し上げてきた。虫の目で現場を観察し、人の目で計画を観察し、鳥の目で全体を見渡すような形でしっかりとした検証・見直しができたと思う」旨、小田委員より、「本日は安倍元総理の四十九日に当たる。霊前に報告する形の報告書になっていると感じている」旨、櫻井委員より、「2000年の警察改革以降、公安委員会の「管理」機能が強化されたが、今回の検証・見直しに当たっては、その真価が問われたところであり、警察庁に対し厳しい要求をした。公安委員間の異なる意見の調整も大変であったと思うが、警察庁が行政組織として成果を生み出したものと評価できる。行政機関の中でも警察庁は独立性の高い機関である。独立性が高いと閉鎖的になり、自らに対して甘くなり、自己検証の機会を失ってしまう可能性がある。特に警備警察は警察庁にとって重要・枢要な業務を担っているが、他局と比べると閉鎖性が強いと感じている。国家公安委員会と向き合って議論することは、持続可能な組織を存続させるためには必要不可欠である」旨、宮崎委員より、「1ヶ月半の間、相当のエネルギーを費やし、その成果物として検証・見直し報告に至った、その御苦労を多とするとともに、次の段階として、都道府県警察においても実効性をもって遂行され、絵に描いた餅にならぬよう、警察庁として関与に意を用いていただきたい。同時多発的に警護対象者の警護を行う必要が生じたときに、警察庁が機能するかどうかといった点も将来的な課題である。検証・見直しの理念が現場に浸透するために、警察庁として何を行うべきか対応策を考えるとともに、現場に対して助言し、支援することにより、検証・見直し報告書を生かしてほしい」旨、竹部委員より、「今回の議論を経て、ある登山家が、「登山とは山に登ることだけではなく、入念に準備をして、生きて帰ってくることまでがその本旨である。頂上到達時が最終地点ではなく、下山して初めて、どこが頂上であったか認識できる」と著書で記していた内容を思い出していた。警護においては、これまで、警護現場が終了した時点がゴールであったようだが、PDCAサイクルで言えば、現場での気付きをそれぞれが持ち帰り、検討して記録すること、これが「下山」に相当する。警察庁の関与は重要ではあるが、各都道府県警察が能力的に自立自走できる体制に至ることが目標となるはずであり、よい登山家になったと言われるようになってもらいたい」旨の発言があった。

 

(2)警護要則の制定について

警備局長から、警護要則の制定について説明があり、原案どおり決定した。

横畠委員より、「検証・見直しの結果を受け、考えられる措置を新たな警護要則に全て盛り込んでおり、内容としてはこれでよいと思う。実際の運用に公安委員会が関与することは難しいが、警察庁として、新たな警護要則に基づき各都道府県警察でしっかりと運用がなされるよう、万全を期していただきたい。今回の警護要則の制定においては、極めて大きな犠牲が払われていることを忘れず、二度と同様の事態を生じさせることがないよう求める。警護要則上、危険について「危険度」と表現しているが、これは「危険」の評価結果であり、「危険度」評価の前提となる具体的な「危険」の認識・予測・想定が実務上重要になる。また、防護の視点には限界があることから、攻撃者の視点からも「危険」をチェックすることが有益と思われる。今回の事案は、手製銃器やローンウルフの問題以前の、投石程度の原始的な攻撃にすら対応できないような警護態勢であったと考えている。情報収集も重要であるが、特に、今回のような事前情報を得ることが難しい事案では現場で対処することこそが重要であるので、現場での対処能力を磨き、警護に万全を期していただきたい」旨、宮崎委員より、「決意を込めた警護要則を制定することとなり、非常に意義深い。しかしながら、現時点最善であると考えたとしても、想定していない新たなぜい弱性が生じることもあるので、警護について不断の見直しを行うことが重要である」旨、小田委員より、「危険度の評価を行うだけで果たして万全なのか、という点で不満があったが、下位通達等で対応するとのことであり、本件警護要則案を了承する。警護要則の文言の意味合いについては、記者会見等でも説明し、警護の現場にも解釈を伝えていただきたい。また、警察として、被疑者側がどのように警護・警戒を突破しようとするのかをよく押さえていただきたい」旨、櫻井委員より、「警護要則を制定することとなるが、公布・施行の段階から、既に見直しを行うタイミングは始まっている。不断の見直しのほか、公安委員会への運用状況の定期報告をお願いしたい」旨、竹部委員より、「今回の見直しを通して感じたことは、その時点で最も完璧な要則を作り上げても、常に新しい変化には弱いのだということである。現場に完全無欠の防御はないことを肝に銘じ、何かが起こるということを常に頭に入れ、臨機応変に動ける人材を育てていってほしい」旨の発言があった。

長官から、「最後に、委員会での議論を踏まえ、警察庁としての受け止めを述べたい。本事案発生以降、11回の委員会を開催していただき、厳しい御意見をいただきながら検討を尽くし、この日を迎えるに至ったことを御礼申し上げる。委員会では様々な課題を指摘いただき、私自身としても、正にそのとおりであると感じている。新たな警護要則の下で、新しい警護が始まることとなる。二度とこのような事案を発生させない決意をここに述べさせていただく」旨の説明があった。

 

2 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、人事案件について説明があり、原案どおり決定した。

 

(2)監察の取扱い事案について

首席監察官より、元内閣総理大臣の警護実施不適切事案について、警察庁懲戒審査会の審査結果が報告されるとともに、奈良県警察本部長を減給3月、同警備部長を減給1月とする処分案の説明があった。各委員より、事案の発生は組織的な問題であり個々の職員に対する処分としては過去の処分例との均衡からも相当である旨の発言、社会的影響等事案の重大性等を踏まえれば過去の処分例より重い処分が適切である旨の発言等があり、量定の是非について審議を行った上、処分案のとおり決定した。

また、首席監察官より、同事案について、奈良県警察の地方警察職員に対する処分案の報告があったほか、警察庁及び警視庁の関係職員については処分の要件に該当しないと判断した旨の報告があった。

 

(3)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

3 報告事項

(1)令和5年度警察庁予算概算要求(案)の概要について

官房長から、令和5年度警察庁予算概算要求(案)の概要について報告があった。

宮崎委員より、「全体がつつましい予算となっているが、今まさに警護警備の見直しを行い、安全を中心に据えた政策を行うにあたり、必要な手当てはできているのか、もう少しダイナミックに大きな構想で要求してもよいのではないか。世の中の流れをうまく捉え、いい形で動けるよう、予算を獲得していただきたい」旨、竹部委員より、「今回は安倍元総理銃撃事件を背景として、人的、あるいは機械的な警護能力をいかに社会情勢に合わせて刷新していくのか、ということが問われる中での予算要求である。今後、中長期的にどういう能力に仕上げていくのかを描き、来たるべき交渉に備えていただきたい。一方で、警察全般を見渡し、不要なものはやめていくことで捻出される予算もあるはずであり、漫然と前例踏襲をしているようなものはしっかり見極めていただきたい」旨、宮崎委員より、「集団的自衛権を標榜する日本としては、自衛隊の基地まで含めて攻撃目標となった場合に、周辺の治安の維持をどうするのかということは、昨今の国際情勢の中では緊急性の高い事案ではないかと思う。有事の際は、地域を守るという点で警察の出番もたくさん出てくるはずであり、その辺も見極めていただきたい」旨、横畠委員より、「竹部委員の発言にもあったが、財政状況が極めて厳しい状況にもあり、目玉的な予算を要求するにしても、どこかを削減するメリハリが必要。削れる部分は多くはないだろうが、従前の既得権的な予算というものは批判覚悟で見直し、柔軟に予算の割り付けができるような工夫が必要である。今回の案は工夫がされていると思うが、今後も柔軟性の獲得に配意していただきたい」旨の発言があった。

小田委員より「沖縄の国境警備隊の増員はどうなっているのか。現在の態勢では足りないから他の県警の応援を受けている。情勢からは、今後、現場が疲弊していくのは目に見えており、長期的な計画を立てて増員すべきである」旨の発言があり、警備局長から、「国境離島警備隊は、海上保安庁と協力しながら色々な対処の準備をしているが、その時の情勢に応じて、必要であれば部隊を増強派遣するなど柔軟に対処しており、今の状況では、来年度に向けて国境離島警備隊を増員する考えはない」旨、長官から、「警察では、離島に不法に上陸・占拠されるような事態に対処するため、2年前に国境離島警備隊を創設したところ。こうした態勢をもって、突発的な事案の対応に備えている」旨の説明があった。

 

(2)令和4年度警察庁総合防災訓練の実施について

警備局長から、令和4年度警察庁総合防災訓練の実施について報告があった。