定例委員会の開催状況
第１ 日 時 令和６年３月２１日（木）
午前１０時００分 ～ 午前１１時４０分
場 所 国家公安委員会室
第２ 出席者 横畠、宮崎、竹部、野村、櫻井各委員
露木長官、楠次長、太刀川官房長、檜垣生活安全局長、渡邊刑事局長、早川交通局長、迫田警備局長、大橋サイバー警察局長、島﨑技術総括審議官
第３ 議 事
１ 議題事項
（１）特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について
刑事局長から、特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について説明があり、原案どおり決定するとともに、仮に、この決定の後に、治安に関する部分における形式的な修正や、治安に関する以外の部分における修正がなされた場合については、国家公安委員会の判断を実質的に変更するものではないことから、国家公安委員会申合せに基づき、委員長専決により処理し、委員にその旨通知することを決定した。
野村委員より、「日本に居住する外国人の増加に伴って、警察業務の全てを多言語で対応するには限界があるので、予算措置や民間への業務委託、ボランティアの活用等について、必要に応じて中期的な計画を立てることも検討していただきたい」旨、竹部委員より、「日本経済が大きな転換点を迎える中、金利や賃金の上昇をはじめ、様々なコスト負担に耐えられない企業が出てくることも想定され、日本で働く外国人に負担のしわ寄せが生じることを懸念している。技能実習で来日した方々が特定技能１号、２号を目指し、自律的に適合していけるような魅力的な市場となるよう関係省庁間で連携していただきたい」旨の発言があり、刑事局長から、「先を見越した上で対応が後手に回ることのないよう、警察として必要な対応を検討してまいりたい。警察としては治安の観点がメインとなるが、関係省庁と引き続き必要な連携を図ってまいりたい」旨の説明があった。
櫻井委員より、「特定技能２号については、各分野において求められる要件設定が非常に高いという印象を受ける」旨の発言があり、刑事局長から、「共生を図りながら、日本社会に馴染んでもらうような政策を講じていくことが重要だと考えている」旨の説明があった。
宮崎委員より、「バス、タクシー等の運転手への外国人の活用については、自動運転やライドシェアなどの政策との整合性を構造的に考え、主要な政策を進める中で補わなければならない部分を明確にすべきだと思う。また、十分な意思疎通を図るためには、日本語能力の基準をもう少し厳格にすべきと感じている」旨の発言があり、刑事局長から、「治安への影響等を生じさせないよう前広に状況を把握し、必要な措置を講じてまいりたい」旨、交通局長から、「現在の自動運転等の状況を踏まえ、運転手不足に対応するための必要な措置として特定技能の対象分野に追加することとなったものと理解している。国によって交通ルールが様々なので、国土交通省とも連携し、我が国の交通ルールを周知することが必要だと考えている」旨の説明があった。
横畠委員より、「業所管省庁の責任において国内労働市場の状況も考慮しつつ各分野で必要とされる外国人労働者の人数を算出して受入れ見込み数を設定していると承知しているが、国際的な労働力不足の中で我が国の労働力として受け入れるには、適切な処遇や環境を整備しなければ優秀な人材は集まらない。新たな制度のもとで外国人が日本人と同等の扱いでともに働く場面が増えれば、国民の外国人に対する理解も進み、警戒感も相当変化するのではないか」旨の発言があった。
（２）令和６年度国家公安委員会・警察庁交通安全業務計画（案）について
交通局長から、令和６年度国家公安委員会・警察庁交通安全業務計画（案）について説明があり、原案どおり決定した。
櫻井委員より、「オンライン講習には課題があると思うが、まずは全国展開を進めて、申請する側と申請を受ける側の双方が手続に慣れることが大切である」旨の発言があり、交通局長から、「御指摘を踏まえて準備を進めてまいりたい」旨の説明があった。
（３）国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について
国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。
２ 報告事項
（１）国会の状況について
官房長から、国会の状況について報告があった。
（２）令和５年における組織犯罪の情勢について
刑事局長から、令和５年における組織犯罪の情勢について報告があった。
櫻井委員より、「一般市民にとって、匿名・流動型犯罪グループは暴力団よりも近い存在であることを意識し、こうしたグループの実態や関与している特殊詐欺等の具体的な事案も踏まえて記載すると、匿名・流動型犯罪グループが組織犯罪の外縁部分ではあるものの暴力団と繋がっていることを描き出せると思う。また、違法カジノやＳＮＳ型投資詐欺、ロマンス詐欺等については刑事局のみならず、サイバー警察局も関心を持って対応していただきたい」旨、横畠委員より、「匿名・流動型犯罪グループという新たなカテゴリーについては、部門横断的な対処が必要なので、それぞれの部局がしっかりと所管業務を遂行しつつ、刑事局がこれを取りまとめていくという方針でよいと思う。組織的な犯罪の実態把握を更に精緻に推進していただきたい」旨、竹部委員より「暴力団構成員等の数と異なり、匿名・流動型犯罪グループはメンバー数等が明確ではないので脅威の程度が判然としないのではないか。匿名・流動型犯罪グループの輪郭をつかむことは脅威の軽減に繋がるので、グループやリーダーの数等を数字で示すことも検討していただきたい」旨、宮崎委員より、「国籍別や技能実習、特定技能の区分ごとに、来日している外国人のうちのどの程度が犯罪に走ってしまうのかがわかるようなデータがあれば、様々な政策の下敷きとして活用できるのではないか」旨の発言があり、刑事局長から、「御指摘を踏まえ、組織犯罪の分析の在り方等を検討してまいりたい」旨の説明があった。
（３）キャッシュレス社会の安全・安心の確保に関する検討会報告書について
サイバー警察局長から、キャッシュレス社会の安全・安心の確保に関する検討会報告書について報告があった。
横畠委員より、「この報告書は、関係事業者の参加も得てしっかりと議論されたものであり、大変意義がある。今後とも関係事業者との連携を密にして各種対策を進めていただきたい」旨の発言があった。
３ その他
（１）永平寺町における自動運転車の事故原因と運行再開について
横畠委員より、「永平寺町の自動運転システムは、道路交通法で新たに設けられたいわゆるレベル４に該当する「特定自動運行」として公安委員会による許可がされた最初のものであり、広く注目を集めている。昨年１０月の事故については、１１月１６日のこの委員会において、人的被害がなかったという点では「軽微」なのかもしれないが、レベル４の自動運転の肝である自律的な安全走行という点では、進路前方の静止したありふれた障害物にそのまま衝突しており、ＡＩによる「学習」以前のレベルの初歩的な問題があるのではないかと申し上げたところである。本日の説明で、本件の自動運行装置に備えられている進路前方の障害物を検知して自動ブレーキをかける機能として、前方カメラの画像認識によるもの、ミリ波レーダーによるもの及びソナーセンサーによるものの３つがあったが、事故の際には、誤検知防止のため、前方カメラ以外の機能が働かないようにされていたということで、それを「仕様」と言われたが、理解できない。自動運行装置は、「自動車を運行する者の操縦に係る認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能」を有しなければならず、本件の自動運行装置は、３重の自動ブレーキ機能を備えるもので、自動運行の際にはこれらが全て働くということで、道路運送車両法による保安基準に適合すると認められたものではないのか。進路上に障害物があっても、事前に「学習」した特定品目の物体であると「認識」ができなければ止まれないという、いかにも不十分な１つの機能しか働かない状態であれば、そもそも自動運行装置としての保安基準を満たさないのではないか。道路運送車両法上、自動運行装置が保安基準に適合するというのは、所要の機能を「備えて」いれば、それが運行の際に「機能しない」状態とされていてもよいのか。国土交通省は、自動運行装置が保安基準に適合することを認定した上で走行環境条件を付与するとのことであり、これは、付与された走行環境条件を満たす場合の運行の全体について、当該自動運行装置によって人による運転の場合と同等の安全が確保されることを確認しているということではないのか。また、一般論として、許可を受けた運行事業者が、自己の判断で、自動運行装置の機能の一部を解除したり、制限することは許されるのか。運行事業者による自動運行装置のチューニングの基準やその適正確保の手続はあるのか。更に、「特定自動運行」中の自動運行装置において安全上必要な機能が十分に働かない状態にある場合、なお、道路運送車両法にいう「保安基準に適合する自動運行装置」であり、道路交通法にいう「自動運行装置を使用して」いるということになるのか。事業者は、特定自動運転計画を遵守していないことになるのか。また、道路運送車両法上の保安基準不適合車の運行供用、道路交通法上の整備不良車の運転に当たるのか。自動運行装置については、国土交通省の所管であるが、道路交通法において、「特定自動運行」の許可は、「特定自動運行用自動車が特定自動運行を行うことができるものであること」、「特定自動運行が当該特定自動運行用自動車の自動運行装置に係る使用条件を満たすものであること」などがその基準とされ、都道府県公安委員会は、これらについて、国土交通大臣等の意見を聴いて判断するものとされ、その上で、公安委員会には、運行事業者に対する報告徴求・検査を始め、違反がある場合の指示、基準不適合の場合の許可の取消などの権限、警察署長には、交通事故の場合の許可の仮停止といった権限が付与されている。警察は、自動運行装置を使用した運行の安全の確保について大きな責任を負っている。「特定自動運行」の許可は、今後増加が予想されるところであるので、本件を契機として、制度の運用における都道府県公安委員会、国土交通省等及び事業者の役割について考え方を整理し、今後、法の趣旨に沿って制度の運用がなされ、自動運行装置を使用した運行の安全が確保されるようにしていただきたい。そのための具体的な対応について、警察庁と国土交通省との間でしっかりと調整をしていただきたい」旨の発言があり、交通局長から、「自動ブレーキをかける３つの装置が機能することを前提とした審査が行われていたが、実際には初期設定の段階から一部が機能しないものとなっており、自動運行装置の運用中に事業者が設定を変更したものではないが、今後はこうしたリスクについての対応を含めて保安基準適合性の審査が行われるべきだと考えている。今後、様々なレベル４の自動運転が出てくるだろうが、本事案を踏まえ、国土交通省とも緊密に連携して対応してまいりたい」旨の説明があった。
野村委員より、「実証実験は、小さな失敗を繰り返すことで成熟度を高める性質があるので、むしろこの種の失敗を繰り返すことが重大な事故を防ぐための最大の防衛策に繋がると考えている。個別具体の案件の細部についてまで官側が議論することは過剰であり、今回の審査プロセスに問題があるとは考えていない」旨、横畠委員より、「「特定自動運行」の制度は、法律によって設けられたものであるが、そこでは安全の確保を基本的な価値としており、警察と国土交通省が、そのために与えられた権限を適切に行使して、その職責を果たすことは義務である」旨、櫻井委員より、「工学は経験科学のひとつであり、自動運行はそうした問題領域に属する。自動運行装置のような進行形の技術は、経験を積んで改善し、安全度を高めていくという流動的な要素がある。これを前提とした特定自動運行の許可は、通常の古典的な許可とは異なり形成的な側面があり、時間軸を視野に入れた判断が組み込まれている独特の制度だと理解される。いずれにしても、抽象的な規範論というより、関係当局の実務を踏まえた誠実な行政対応が求められる。都道府県公安委員会は安全性や地域の利便性を含む法所定の要素を総合的に勘案して、自動運行する自動車を社会で走らせるかどうかを最終判断し、許可処分を行うのであるから、処分庁として矢面に立つのは都道府県公安委員会である。その意味では応訴対応を含め、対外的な責任を免れることはできないというのが現行法のスキームである」旨の発言があり、長官から、「道路交通法上、特定自動運行の許可申請を受けた都道府県公安員会は、自動運行装置が保安基準を満たすという前提に立って判断する仕組みとなっているところ、国土交通省と問題意識を共有しながら今後の運用に当たりたい」旨の説明があった。
横畠委員より、「我が国における自動運転の実装は、世界的には出遅れているようにも見えるが、焦らず、安全を軽視することなく丁寧に進めることが、世界一安全で快適な自動運転システムの実現に繋がるのではないか」旨の発言があった。