定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 令和6年12月5日(木)

午前1000分 〜 午前11時00分

 

場 所 国家公安委員会室

 

第2 出席者 宮崎、竹部、野村、櫻井、横畠各委員

露木長官、楠次長、太刀川官房長、檜垣生活安全局長、谷刑事局長、早川交通局長、迫田警備局長、逢阪サイバー警察局長、堀内技術総括審議官

大濱審議官(生活安全局担当)、阿波生活安全企画課長

 

第3  議 事

1 議題事項

(1)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

2 報告事項

(1)国会の状況について

   官房長から、国会の状況について報告があった。

   

(2)監察の取扱い事案について

   新潟県巡査部長による不同意わいせつ事案に関し、同県警察は、同巡査部長を免職処分とする予定である旨、岐阜県巡査による不同意性交等事案に関し、同県警察は、同巡査を免職処分とする予定である旨の報告があった。

 

(3)サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議(第4回)の結果について

   サイバー警察局長から、サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議(第4回)の結果について報告があった。

   野村委員より、「今の国際情勢を考慮すると、提言の内容は支持できる。アクセス・無害化措置で、最初から自衛隊が対応することは考え難く、まずは警察の対応となるだろうが、こうした対応の参考とされる警察官職務執行法の運用変更や法改正の可能性はあるのか」旨、宮崎委員より、「警察官職務執行法は、昭和23年にできた法律であるところ、今の時代には応用の限界もあり、改正も含め、法の運用にはタイムリーな対応や検討が必要だと思う」旨の発言があり、サイバー警察局長から、「提言では、災害時の避難措置や危険物への対処などで機能してきた警察官職務執行法を参考にするとしており、現行のままか、サイバー版の改正が必要か、または新法が必要か、様々な可能性を検討することとなる。危険な事態に対する警察官の措置という意味で、警察官職務執行法を応用することは可能だろうが、サイバー空間の場合は、どういう場合に何をすべきかを明確にしておくべきという議論はあり得ると考えている」旨の説明があった。

   竹部委員より、「アクティブ・サイバー・ディフェンス法が成立・施行されるまでの間を準備期間として、警察としての実力を練成し、施行と同時に最大限の実力を発揮できるようにしていただきたい。市民の自由権との関係でいえば、アクティブ・サイバー・ディフェンスは防犯カメラの普及と同様、政策の成果が時間をかけて社会に認知されていくことで制度の市民権獲得が期待できる。また、巧妙化するサイバー攻撃に対する警察の活動が法律によって過度に制約されないよう、喫緊かつ重大な脅威の無害化を優先し、国を守るケースがあることを法制度上予定しておくべきだと思う」旨の発言があった。

櫻井委員より、「提言において、刑事法的な意味で犯罪事実に必ずしも拘泥せずにサイバー攻撃に対応する必要性がある点を明確にしている点などを評価したい。現行法の中で、即時強制に関して警察官職務執行法を参考とするのは理由のあることであるが、その運用を見ながら行政的な対応を可能とする仕組みを作ることが有意義である」旨の発言があった。

横畠委員より、「この有識者会議の中間的な整理については、8月22日の委員会で少し議論をしたところ、本日は、その最終的な提言についてご説明をいただいたので申し述べる。第1の「官民連携の強化」については、提言のように官民でそれぞれ責任意識を持ってしっかりと進めていただきたいと思う。第2の「通信情報の利用」については、先進主要国並みということで、「外外通信」に加えて「外内通信」と「内外通信」を対象とすることは必要だと思う。その上で、提言にあるメタデータを超える「コミュニケーションの本質的な内容ではないデータ」とは具体的には何なのか。それは「アクセス・無害化」の措置とどのようにつながることになるのか。通信途上で「攻撃者による通信」が特定できるのであれば、その中継を遮断する措置をとることもできるということか。また、「内内通信」を対象としない理由はどのように説明することになるのか。「内内通信」については、犯罪の嫌疑がある場合に捜査手続で対応するということなのか。それでも現行の通信傍受法による電話傍受のみで足りないことは明らかなので、別途検討をお願いしたい。第3の「アクセス・無害化」の措置は警察の活動に直接関係する部分であり、提言は、その法的根拠についてなおも警察官職務執行法に着目しているようであるが、それが相手方に対する事前の義務付けになじまないという点で、講学上の「即時強制」に分類される措置になるという意味では理解できるが、「アクセス・無害化」の措置は、現に行われている攻撃の阻止ではなく、その未然防止・拡大防止を目的とするものとされていることや、その実施には専門的で周到な調査解析等の準備が必要であることなどからして、警察官職務執行法による措置のように現場に所在する警察官が現認してその判断によりその場で直ちに行うことができるというものではないと思う。実際にどのような法律の規定になるのかはこれからのことだと思うが、その要件が一般的、抽象的、曖昧で、また、手続的にも裁判官なり専門的な第三者機関によるチェックを経ることなく、その実施や措置内容が警察官の判断に委ねられるというのでは、行政手続においても求められる適正手続の保障という憲法31条の要請を満たすことができないのではないか。「アクセス・無害化」の措置については、実際上、国内にあるサーバーが対象となるのではないかと思われるが、同じサーバーを対象とした令状を必要とする捜査手続との関係はどうなるのか。証拠の保全、収集に問題を生じることはないのか。他方、外国所在のサーバーを対象としようとする場合の問題は残されたままである。提言では、「国際法上許容される範囲内でアクセス・無害化が行われるような仕組みについて検討すべきである。」としているが、その国際法について我が国としての理解、考え方をきちんと整理しなければ「仕組み」にはならない。権限規定ができたとしても、その措置が国際法に適合するのか、他国の主権侵害に当たらないのかを実施段階で判断しなければならないとするならば、それは誰が行うことになるのか。実施機関としての警察官が責任を負いきれるものとは思えない。実際、我が国の法執行機関が同意のない他国領域でその権限を行使することについてのハードルは極めて高いと言わざるを得ない。警察がその判断で国際法の形成にチャレンジするなどということはいかがなものかと思う。この点で実際にチャレンジしようというのであれば、例えば、実施機関が組織として諸情報を総合してターゲットを特定した個別具体のオペレーション計画を作成し、国際関係についても責任を負える内閣レベルの然るべき機関の承認を得た上で実施に移るといった仕組みが必要となるのではないか。なお、「アクセス・無害化」の措置とは別に、外国所在のサーバーからの攻撃による被害の防止、拡大防止の措置で、国際法上の問題を生じないものとして、「外内通信」の水際で「攻撃者による通信」が特定できるというのであれば、その場でそのような通信を遮断する措置がとられるような仕組みを構築するのがよいのではないか」旨の発言があり、サイバー警察局長から、「「内内通信」が除外されるかは法制度の中で決定されるものと承知しているが、提言では、外国からの通信の分析が重要であるとされ、「内内通信」については通信の秘密との関係を慎重に検討する必要があると考えている。通信情報等の分析で危険が特定されたとして、それで通信を遮断しても、攻撃者の側が攻撃サーバーのアドレスを変更したり、マルウェアの設定を変更したりすることが可能なので、通信の遮断のみでは十分ではない。また、警察官が現場で判断する手続や要件、テイクダウンと国内法との関係や外国サーバーを対象とするケースも今後検討されるが、いずれにせよ、先進主要国で行われていることを参考に検討していく必要がある」旨の説明があった。

   櫻井委員から、「サイバー事象は、官民の区別がつかない、経路がわからない、有事と平時の区別ができないなど独特な特徴があり、何よりも国際社会の実態に対応する必要がある。これは政府の責任であり、根拠法を作る必要があるが、新しい仕組みというのであれば、サイバー分野では最初から制度の完璧な設計図作りに固執するような大陸法的アプローチではなく、創造的な余地を意識して残すべく、英米法のように組み立てながら適宜修正していくといったアプローチも有用である」旨の発言があった。

野村委員から、「サイバー攻撃の手口は高度化しているため、リアルの世界を前提にした制度設計では対応できないので、柔軟性を持たせる必要がある。某有名企業の社是「許可を求めるな、謝罪せよ」は、事前に合意を得るのではなく、実際に問題が起きた後に許しを請うべきという考え方であり、ネット企業のビジネスの土台にもなっているので、ネットを支配している論理を正面から見つめないと、議論が進まないと思う」旨の発言があった。

横畠委員から、「そもそも、「アクセス・無害化」の措置を民間事業者が担うという仕組みにするのであれば、外国所在のサーバーを対象とする場合であっても柔軟な対応ができるようになるとも思われるが、提言は、それを我が国の法執行機関が自ら直接実施するということなので、他国の主権との関係の問題を避けることはできないのではないか」旨の発言があった。

 

2 その他

(1)議事終了後、12月6日をもって任期満了となる櫻井委員より、「5年間の任期を全うすることができ、感謝している。コロナ禍だった前半に比べ、後半は大きな出来事もあり、それなりに大変だったが、実務を理解するにつれ、警察庁の方とのやり取りも深化し、一定の評価ができる成果を得ることも多かったと自認している。警察庁の皆さんには、よい仕事をしていただくよう希う」旨の挨拶があり、委員長(宮崎委員代読)より、送辞があった。