定例委員会の開催状況

 

 

第1 日 時 令和7年1月9日(木)

午前1000分 〜 午前11時50分

 

場 所 国家公安委員会室

 

第2 出席者 坂井委員長、宮崎、竹部、野村、横畠、秋吉各委員

露木長官、楠次長、太刀川官房長、檜垣生活安全局長、谷刑事局長、早川交通局長、迫田警備局長、逢阪サイバー警察局長、堀内技術総括審議官

片倉首席監察官

 

第3  議 事

1 議題事項

(1)人事案件について

官房長から、人事案件について説明があり、原案どおり決定した。

 

(2)国家公安委員会への意見・要望文書等の措置について

国家公安委員会宛ての電子メール、書簡等について閲覧し、回答を要するか否かの判断を行った。回答を要するものについては、その内容を了承した。

 

2 報告事項

(1)監察の取扱い事案について

   首席監察官から、駐在所に勤務する神奈川県巡査長らによる有印私文書偽造・同行使、詐欺等事案に関し、同県警察は、同巡査長らを免職処分等とする予定である旨の報告があった。

   宮崎委員より、「駐在所には幹部の目が届かない部分もある。また、社会構造が大きく変化する中で、警視庁の「ふれあいポリス」のような地域住民と濃密な人間関係を作りながら治安を守る役割を果たす取組もあり、時代の変化に伴い駐在所の在り方を検討すべきではないか」旨の発言があり、首席監察官から、「幹部による駐在所に対する実効的な巡視、督励活動を指導するとともに、人口動態や地域住民の意見も考慮しながら駐在所の在り方を検討してまいりたい」旨の説明があった。

   

(2)「金属盗対策に関する検討会」の報告書について

   生活安全局長から、「金属盗対策に関する検討会」の報告書について報告があった。

   横畠委員より、「金属盗については、昨年4月25日のこの委員会で法整備を含めた国としての対応をお願いしたところであるが、しっかりと検討を頂き、今般報告書が取りまとめられたので、迅速に法制化を進めていただきたい」旨、竹部委員より、「迅速に法制化する必要がある。日本は銅や鉄などの原料を輸入に頼っているが、輸入して製造した金属が国内で盗まれて外国に流出するという矛盾した流れは経済安全保障の観点からも放置できない。まずは買受け業者の届出制を導入し、業界を整備する必要があると思う」旨、宮崎委員より、「金属盗については、条例の有無など自治体による対応が統一されていないので、国全体の方向性を示す法律を早急に制定し、各自治体の努力を尊重しながら、包括的な対応を進めてほしい」旨、秋吉委員より、「規制することにより届出をせず、闇金融のように水面下で活動する悪質業者が現れる可能性があるので、そうした業者の対策も講じる必要がある」旨の発言があり、生活安全局長から、「買受け業者に届出制を導入することで、窃取された金属の持込み先をなくして金属盗を防ぐことを目的としており、さらには、こうした対策を通じて被害に遭っている業界も含めて防犯力が向上することも期待している」旨の説明があった。

   委員長より、「各委員の意見を踏まえ、法案成立に向けて努力していただきたい。また、規制の在り方についても広く周知し、関係者に安心感を与えてもらいたい」旨の発言があった。

 

(3)令和6年中の交通事故死者数について

   交通局長から、令和6年中の交通事故死者数について報告があった。

   横畠委員より、「説明資料で単純に都道府県別の死者数の多寡の順位を示すことに意味があるのか。人口の多い都道府県で死者数が多いのは当然で、東京は死者数第1位とあるが、人口10万人当たりの死者数は1.04人で全国最少である。そこで人口10万人当たりの死者数で見ると、徳島が、令和4年3.23人、5年3.98人、6年4.75人と急増を伴って全国最多となっているが、その原因が何なのか」旨、宮崎委員より、「統計の公表の仕方を工夫し、単に増加・減少という数字だけではなく、分析結果もあわせて発表することによって発信する情報の価値が高まり、今後の抑止にもつながると思う」旨、委員長より、「事故の要因の分析や、これまでの取組で得られた成果などアピールすべき内容を踏まえ、戦略的に統計を公表する必要がある」旨の発言があり、交通局長から、「徳島県を含め四国の人口当たりの死者数等は全国的にも高い状況にあり、地域的な特性等の要因を分析することとしたい。車両の安全性能の向上や道路環境の整備による交通事故の減少効果はみられるものの、更なる減少のためには別の視点からの取組も必要ではないかと考えている。今後、年間での死者の年齢層や事故の形態などをまとめ、改めて報告したい」旨の説明があった。

 

(4)天皇皇后両陛下の兵庫県行幸啓(1.17のつどい−阪神・淡路大震災30年追悼式典−御臨席等)に伴う警衛について

   警備局長から、「1月16日から17日までの間、1.17のつどい−阪神・淡路大震災30年追悼式典−御臨席等のため、天皇皇后両陛下が兵庫県へ行幸啓になる予定であり、これに伴い、所要の警衛を実施する」旨の報告があった。

 

(5)石破内閣総理大臣のマレーシア及びインドネシア共和国訪問に伴う警護について

   警備局長から、「石破内閣総理大臣は、1月9日から1月12日までの間、首脳会談等のため、マレーシア及びインドネシア共和国を訪問することから、所要の警護を実施する」旨の報告があった。

 

(6)北朝鮮を背景とするサイバー攻撃に関するパブリック・アトリビューション等について

   サイバー警察局長から、北朝鮮を背景とするサイバー攻撃に関するパブリック・アトリビューション等について報告があった。

   野村委員より、「パブリック・アトリビューションと注意喚起の運用の違いについて教えていただきたい」旨、宮崎委員より、「サイバー攻撃を受ける事業者側も自らの責務として安全対策を強化することが急務であり、政府はそのための指導とサポートを行う必要がある」旨、横畠委員より、「国内事業者が甚大な被害を受けており、日本警察として看過できない事案だが、外国当局とも連携して対応しているのか」旨の発言があり、サイバー警察局長から、「国家を背景とする攻撃者を特定した場合に、その対象を非難するのがパブリック・アトリビューションで、攻撃者の厳密な特定に至らずとも必要な対策を促すために実施するのが注意喚起である。サイバー攻撃の手口や背景を分析しつつ、引き続き、事業者への指導等を行ってまいりたい。また、今回説明した事案では、関係する外国当局とも連携して情報を共有し、分析等を行った」旨の説明があった。

  

3 その他

(1)重要電子計算機被害防止法案(仮称)等の検討状況について

   官房長から、重要電子計算機被害防止法案(仮称)等の検討状況について報告があった。

   横畠委員より、「この問題についてはこれまで何度か議論をさせていただいたが、本日の説明によれば、危害防止措置については、@個々の警察官の判断によるのではなく、警察庁長官等の指揮の下で警察が組織として実施すること、A警察の独善を排し手続の適正を担保するため、原則、独立した委員会の事前承認を得ること、B対外措置については、外務大臣と事前に協議した上で警察庁が行うことを法律に明記するということであり、いずれも適当だと思う。個々の警察官の権限を規定している現行の警職法の規定とはかなり異なったものになるが、警職法の中に置けないということはなく、また、同法では第1条第2項の必要最小限度の原則も適用があるということでよいのではないか。他方、実際の運用を考えると、攻撃の「兆候」を得たという段階では、直ちに緊急性の判断までは難しく、また、事件捜査で得られた情報や他国から提供された情報などによって、攻撃者の意図・目的や具体的な措置対象が分からなければ、実際に危害防止措置を実施することは難しいと思われる。しかし、そのような場合でも、要件の充足を待つのではなく、迅速に任意の措置をとること、例えば、攻撃対象となりそうな事業者等に対して具体的な防御・対抗措置を要請することはもとより、ウイルスが仕込まれていることが判明したIT機器のベンダーに対してパッチの配信を求めるといったことは当然必要であり、さらに、外国所在のサーバー等に対する措置については、外国の警察当局に対する通報や措置の要請などが円滑にできるよう、平素からの協力関係を構築、強化しておくことが重要であると思われる。危害防止措置を最終手段として持つことにより、任意の措置の実効性が高まることを期待したい」旨、野村委員より、「アクティブ・サイバー・ディフェンスとはいうものの、受動的な仕組みとなっているのではないか。第三者機関の事前承認は必要な措置かもしれないが、外交交渉が成立しない非友好国からのサイバー攻撃が想定され、その場合は平時の刑事訴訟手続で対応できるものではないので、事前ではなく、むしろ事後の監査を重視して、事後的に手続の適正を担保するといった、実効力のある法整備をすべきだと思う」旨、宮崎委員より、「警職法における警察活動の場にサイバー空間を含めることは、法制定以来の大きなパラダイムシフトであり、活動の次元が変わることを踏まえ、措置を担当する職員の採用や教養、権限の範囲などをよく検討していただきたい。また、サイバー空間の発展に係るスピード感に鑑み、早急に法制化を進めていただきたい」旨、竹部委員より、「仮にこの法案が施行されていたら最近のDDoS攻撃は止められたのか。また、法律が施行されてもサイバー攻撃が食い止められない場合には対外的な説明が求められるが、その際、法制度の不備や限界を指摘されることを想定しておくべきで、緊急性のある重大な攻撃を止めるための運用上の特例を柔軟に想定した法律をあらかじめ準備しておくことが望ましい」旨の発言があり、サイバー警察局長から、「DDoS攻撃の事前察知は難しいだろうが、続く攻撃を防ぐことは可能と考えている。また、マルウェアについては潜伏している段階で防ぐことはあり得ると思う」旨、官房長から、「必要最小限度の権限行使が警職法の原則なので、外国からのサイバー攻撃の場合に、外国政府において十分に有効な措置が講じられるのであれば、それを優先するのが当然だと考える。他方、現実的に協力を得ることができないと考えられる国からの攻撃の場合は、日本国内の犯罪捜査等によって得られた情報をもとに、有効かつ被害の少ない手段を選択することとなる。また、警職法の権限行使に当たっては、いわゆる三条委員会である監理委員会がしっかりとその機能を発揮していくのではないかと考えている。即時強制の措置や命令の権限であるという点では、現行の警職法の規定によるものと変わらないが、無害化措置をとるに当たっては、技術的に高度な判断を要するので、特定の能力を有する職員を選抜することとしている。法施行後、サイバー攻撃を防げない場合に説明責任を負うことは当然のことであり、個別の事案に応じ、政府全体として説明責任を負うことになろうかと考えている」旨の説明があった。

   秋吉委員より、「対策の必要性は良く理解できるが、実際の運用では様々な場面で困難が予想され、特にサイバー攻撃を高い確度で予知するとともに、正常な通信を対象から除外できる知見が必要となると思う。この仕組みがうまく機能するよう、執行担当官たるにふさわしい警察官を選任し、合わせて外国の知見を取り入れるなどして必要な能力を育成してゆくことが大切と思う」旨の発言があり、官房長から、「人材育成は重要な点であり、有識者会議でも議論されてきた。基本的にはサイバー特別捜査部の要員から選んでいくこととなるが、御指摘を踏まえ、適正な能力を持つ職員を選ぶことができるよう、その能力の評価の方法を含めて検討してまいりたい」旨の説明があった。

 

(2)米国プラットフォーム事業者のSNSファクトチェック中止について

宮崎委員より、「日本でもフェイク情報等が社会を混乱させている中、米国プラットフォーム事業者がSNSのファクトチェックを中止すると発表したことは世界に大きな衝撃を与えており、民主主義の根底を揺るがしかねないのではないかと懸念している」旨、横畠委員より、「事業者は、自らのサービスの品質を保つため、約款を整備した上で、フェイクニュースや犯罪関連の違法・有害情報をチェックして排除する必要があるのではないか。フェイクか否かの判定には相当のコストとリスクが伴うということかもしれない。他方、犯罪関連の違法・有害情報については、必要な対応がなされなければ事業者も共犯になり得るということもあるので、しっかりとした対応を求めたい」旨、委員長より、「警察として遅滞なく対応するため、関係省庁や事業者との窓口をしっかりと決めておくべきである」旨の発言があり、刑事局長から、「どのような影響が生じるか関心を払いつつ、冷静に状況を把握し、講じるべき措置があれば検討してまいりたい」旨、サイバー警察局長から、「たとえば、SNS等におけるいわゆる「闇バイト」募集については、総務省が大規模事業者に対応を要請するなどしており、それを踏まえて、サイバー警察局が違法・有害情報への対応を進めている」旨の説明があった。